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LNJ Logo 影書房の新刊『あるB・C級戦犯の戦後史 ―ほんとうの戦争責任とは何か』
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投稿者 : 影書房

小社新刊『あるB・C級戦犯の戦後史
――ほんとうの戦争責任とは何か』(富永正三著)
をご案内させていただきます。

本書の著者・富永正三さんは、戦時中の捕虜刺殺に関与した罪で
対中国戦犯となり、戦後、中国で6年間を過ごした元侵略兵士です。
富永さんは、1956年に不起訴となり復員し、以後、中国での日本の
侵略戦争の実相とは何か、とくに、ご自身の加害行為を証言してこ
られました。

そうした活動の原点には、「戦争なんだから残虐行為は仕方がない」
「上官の命令に従っただけで、自分には責任はない」という考えから、
「たとえ戦場においてのことであっても非人道的行為は許されない、
命令に従うか、従わないかは、本人の選択の問題であり、みずから
選択した行為に対しては当然責任をとるべきである」という考えへの
転換がありました。

本書は、「うむを言わさぬ国家権力によって、戦場という特殊の環境に
送り込まれ、罪なき人々を殺すことを強制される。はじめは抵抗を感じ
るが、やがては当たり前だと思うようになる。つまり『人間』ではなくな
った」、そうした著者が「踏みつぶされた人間的良心をよみがえらせる
ために必死の自己闘争を続け」(p4)た過程の記録です。

東京帝国大学農学部出身の、当時の日本社会のエリートだった富永
さんでさえも、戦争は避けられないものとの空気にのみこまれていき、
また、敗戦時に自らの責任を認識することは簡単ではありませんでした。

しかし、「民家を焼き」「奪い」「殺した」その先にある被害の実態を知っ
た時、自分の罪の重さを認識し、どうして、自分が「鬼」と憎まれるよう
な人間になってしまったのかと考え深めるようになります。

残念ながら現代であっても、同調圧力は強く、体制維持のために個人
の犠牲はやむ得しという風潮が根深くあります。雇用や教育の場では、
「命令」の名の下に、人間性をおしつぶす状況がいまだ続いています。

本書は、1977年に水曜社から刊行されたものの復刊ですが、富永さん
たちを「鬼」にした原因が、日本社会にいまだ根強く残っているからこそ、
富永さんたちの天皇制軍国主義から人間尊重への自己変革の営みを、
現代の状況に引きつけながら読んでいただきたい、とも思っております。

「……日本を亡国に導いた一連のA級戦犯の戦争指導を正しいと信じて
愚かにも受け入れ、あるいは、間違いだと思いながら不甲斐なくもそれ
に協力し」、「心ならずも権力に屈した不甲斐なさを克服すること」、「だま
されない人間になること」(p237)を、まずは一人一人が身につけなければ、
と富永さんは言われます。

そして、「その上に、自分にそのような過ちを犯させた戦犯の戦争責任
を追及する態度」を、と。

今回の復刊に際し、著者の帰国後の活動を紹介するため、同じく中国で
戦犯となり、帰国後「中帰連(中国帰還者連絡会)」の会員として、ともに
「反戦・平和」の活動を続けてこられた小山一郎さんと、やはり元・戦犯を
父にもつ矢崎光晴さんによる「解題」を収録させていたきました。

ぜひ、本書を多くの方に手にとっていただきたいと願っております。
ぜひともご協力いただきたく、よろしくお願いいたします。 

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◆書 名:『あるB・C級戦犯の戦後史――ほんとうの戦争責任とは何か』
      ※(解題として、小山一郎「中国から帰った戦犯の誓いと歩み」
                矢崎光晴「侵略兵士の体験と思いを語り継ぐ」を付す)
◆著者:富永正三
◆体裁:272頁、四六版上製
◆価格:2000円+税
◆発行:影書房

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以上。

2010年8月 影書房 吉田
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◆影書房◇
〒114-0015
東京都北区中里3-4-5 ヒルサイドハウス101
TEL03-5907-6755 FAX03-5907-6756
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