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先週、ユナイト労組の英国航空BA客室乗務員支部(BASSA)が第2波ストを打ち抜きました(4日間) 。再び国際運輸労連ITFの浦田誠さんの報告を転送させていただきます。(のぶ@英国)

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From: 浦田誠
Sent: Sunday, March 28, 2010

BAスト第二波突入−ピケットラインへ行く

やはり女性が多い。ここは、ヒースロー空港近くのスト本部。華やかな雰囲気はないが、ドレスやヘ アスタイル・化粧のセンスが良い。周囲の視線を意識して働いている人たちが集まっているのだと再 認識する。日焼けサロン通いと思しき人もいるし、「ハグ(抱擁)無料」なんてプラカードを持つ女性が気に なってしまう。一方の男性たちは、おしとやかな口調の人がいたりして、「ゲイの多い職場」という 俗説を私は思い出したりする。

会場のアマチュアサッカークラブに、スト参加者や支援者が集まる。ここで集会を開いたり、マイク ロバスで4箇所のピケに参加者を送迎する。建物の後方には組合・ユナイトが設置したテント会場も ある。待機の時間は、おしゃべりと飲食。ラウンジはごった返している。あるテレビキャスターは、 「パーティーのような雰囲気」と形容していたが、まんざら外れていない。ピケから戻ったバスが着 くと歓声が挙がる。

しかしこうした雰囲気とは裏腹に、ほとんどの組合員は顔を隠してマスコミ取材を受ける。会社の報 復を恐れているのだ。会員専用のサイトに悪口を書き込んだり、パイロットの密告で停職処分にされ た客室乗務員がいる。ストの諾否を組合員が投票することを拒絶したように、ブリティッシュエアウ ェイズは、職場に恐怖政治を敷こうとしている。今回の争議は、組合潰しが究極の目的だ。

とりわけ、CEOのウィリー・ウォルッシュは外部の人間で、血も涙もない。3月26日には、労使関 係論を専門とする学識者95人が連名で、このCEOの労務政策を非難する声明をガーディアン紙に投 稿している。またウォルッシュは今朝のテレビニュースで、交渉が決裂した経過につき、平然と嘘を 放っていた。瞬き一つせずに語るその顔付きを観ていて胸くそが悪くなった。顔写真にチョビ髭を付 けるとヒットラーそっくり。だがそれは偶然の一致ではなく、悪質なデマゴーグたちの顔付きとか表 情が似通ってくるものとも言えないか。

「Willie, Willie, Willie! Out, out, out!! ウォルッシュは出て行け」とスト参加者は、連呼する 。ウォルッシュの顔写真で作ったマスクは、身元を隠すために使う。一枚は、男子トイレの小便容器 の中にあった。この男、そうとう嫌われている。

ストライキは、第一波が3月20日から3日間。その後も交渉は再開せず、第二波が3月27日から4日 間の予定で始まった。ストの影響については、労使間で大きな隔たりがあり、情報合戦とも形容され ている。だが、主要なマスコミがなぜ独自の取材で判断を下さないのか。「労使ともいい加減にして 、交渉のテーブルに戻れ」という世論形成を目論んでいるのか。それは、総選挙を控えた労働党の意 向でもあろうから。

私たちも、この争議を積極的に支援している。例えば、ブエノスアイレス空港では、BA機到着に合 わせて組合員が抗議行動を起こし、乗客の降機が二時間遅れた。オーストラリアの組合は、スト破り が乗務するフライトの安全確認を指示し、フランクフルトとハンブルグではビラまきが行なわれた。 オランダでは、組合の要請にKLMがスト破りをしないことに同意。香港ベースのBA乗務員で作る 組合やレバノンの組合も、スト破りに参加しないと宣誓。また、公表されていないが、BA機の給油 や整備が拒否されている空港があるらしい。

私は<空>の担当ではないが「勝手連」ごとく、<陸>の組合に支援要請を流している。すでに書い ているが、この闘いにユナイト労組が敗北すると、そのドミノ効果が少なくとも英国で待ち受けてい ると思うからだ。とりわけ、保守党が政権に返り咲けば、その流れは加速するだろう。組合からメッ セージを出してもらう以外に何ができるか。少し考えて、「激励行動」を私は<空>の担当者に提起 した。

つまり、今回のストでは不参加者も出ている。会社は5割以上と豪語している。第一波ストが終われ ば、スト組はフライトで混乗するのだ。ならば、到着地で現地の組合に激励してもらえないか、「ス トライキ、ご苦労さん」と? 国際連帯とは、スト行為を側面的に支援するだけではなく、闘う仲間 同士としてその絆を確認しても良いではないか。

発案が遅かったから、あまり周知できなかったが、タイの仲間たちが実行してくれた。国鉄争議で支 援を受けてきた者たちも行動に加わった。このように、連帯の輪が広がってほしい。彼らは26日、厳 しいセキュリティをかい潜って横断幕を空港内に持ち込みBA便を待ち、客室乗務員たちにバラの花 を渡して喜ばれた。だが受け取るのを拒否したものもいたというから、職場の実態は厳しい。

私は、先週も今週も土曜日にスト本部を訪ね、ピケに参加した。カメラを向けると「誰だ」と聞かれ る。そこで身分を説明すると納得してくれるのだが、会社のスパイを気にしているようだ。でも、少 し時間が経つと、「パーティー気分」が出てくるのか、明るい雰囲気となる。女性たちは、カメラを 向けると、絶妙のタイミングでニコリとする。

行き来する車がクラクションを鳴らして、エールを送る。これが相当数あって、ピケ隊を元気付ける 。こういう光景に、この国では労働運動がまだ生息しているのだと実感する。翌週(今日)も、ピケ で「誰?」と聞かれたが、隣の見知らぬ人が「大丈夫。先週も来ている人」と答えていた。ヨソモノ はしっかり、観察されているのだ。

今日はまた、イベリア航空などを組織するスペイン労組・CC.OOが激励に来た。ラテンのノリで 陽気だ。イギリス人のピケとはまた違った元気を出していて、そのコントラストが興味深かった。サ ッカーの応援にも似ている。

さてスト状況だが、会社は前週よりも多くのフライトを出していると強調する。確かにそうかも知れ ないが、2100万ポンドをすでに費やしたことを認めており、組合側は実際は何倍にもなると主張する 。4日間のストを打ち抜いた後の日程は決まっていないが、とことんやる用意だとユナイトは言う。 例え、スト参加者が3割くらいまで落ち込んだとしても、この事態が毎週続けば会社の経営ダメージ は計り知れないのではないか。現在は、BAの株価が下がっていないのでウォルッシュなどは強気と も言われるが、「慢性スト」に市場はどう反応するだろうか。4月第2週には、4日間の全国鉄道ス トも控えている。

総選挙を5月に控えたブラウン首相は、グラスゴーで演説し、「英国民のためならどれだけ苦労して も構わない」と歯の浮くようなリップサービスをした。ならば、この争議を早急に解決させ、働くも のの権利を改めて保障せよと私は言いたい。

写真:3月20日と27日

2010年3月27日 記


Created by staff01. Last modified on 2010-04-06 00:14:43 Copyright: Default

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