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LNJ Logo 辻井バッジ勝利命令を読む : アリがあばいた巨象JR東日本の犯罪
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●アリがあばいた巨象JR東日本の犯罪
ー動かぬ証拠・松田常務発言「反対派はしゅん別し断固として排除する」

           松原 明(JRウォッチ)

1月26日、辻井義春さん(写真)の国労バッジ事件で、神奈川地労委は画期的勝利命令を出した。その「命令書」全文を読むことができた。以下、感想を交えて紹介したい。

命令の主文は、国労バッジ着用で処分したのは、辻井さんの組合活動に対する支配介入であり「労働組合法第7条違反」の不当労働行為にあたること。従って、処分によって減額した賃金・手当の差額分を支払うこと。またJR東日本は本人に、「今後、このような行為を繰り返さないようにいたします」という文書を、速やかに手交しなければならない、となっている。完全勝利である。しかも、再発防止の約束をした文書を手交せよ、という命令は異例で、地労委はJR東日本の不当労働行為に相当怒っていることがわかる。

国労(国鉄労働組合)は会社からの圧力に耐えられず、バッジ闘争を途中でやめたため、6万人のJR東日本の職場のなかで国労バッジをつけているのは辻井さんはただ一人になっていた。そんな彼にまわりは冷ややかで、「一人でたたかっても意味はない。組合活動といえない」などの声が多々あった。しかし、辻井さんは国鉄分割・民営化で仲間のクビを切ったJRが許せず、どうしてもバッジをはずすことができなかった。命令では、辻井さんのこの行動を「国労が会社との対決姿勢を変えた後は、国労とは一線を画しながら独自の組合活動を行う辻井及び都労委申立人らを“反対派”と捉えて嫌悪し、最後の一人となってもなお勤務時間中に国労バッジを着用する辻井を会社から排除しようと企図し、本件措置を行ったものと推認せざるを得ない」と述べている。労働委員会は、たった一人になろうと、辻井さんは行為は組合活動であり、それを嫌悪していじめることは、「労働組合法」違反の犯罪であると明確に認めている。

36ページにわたる命令書では、不当労働行為の実態を克明に記しているが、なかでも決定的な証拠となったのは、1987年5月25日のJR東日本・松田昌士常務の以下の発言である。

「会社にとって必要な社員、必要でない社員のしゅん別は絶対に必要なのだ。会社の方針派と反対派が存在する限り、とくに東日本は別格だが、おだやかな労務政策をとる考えはない。反対派はしゅん別し断固として排除する。等距離外交など考えてもいない。処分、注意、処分、注意をくりかえし、それでも直らない場合は解雇する。人間を正しい方向へ向ける会社の努力が必要だ」(昭和62年度経営計画の考え方等説明会)

松田常務はその後、JR東日本のトップに上りつめた人物である。つまり、トップ自らが、「反対派を断固として排除する」とまで言い切っていたわけで、JRの異常の労務管理の根っこはここにあったのだ。また命令書では、バッジに対する攻撃が国労つぶしであったことを以下のように明確に認めている。

「会社は、設立当初から警告文の掲示までの間は、東労組を一企業一組合のパートナーとして両者間で極めて友好的な関係を築く一方、国労を労使関係における“反対派”と捉えて嫌悪し、組合バッジ着用者がほぼ国労組合員であることを把握した上で取外し指導を行い、国労バッジ着用が国労に長期的かつ致命的な打撃を与えることとなる仕組みを作出し、これを実行して国労の弱体化を図ってきた」

ここで言われていることは、労使協調のJR東労組だけを育成し、国労を排除する。そのために会社は、「国労に長期的かつ致命的な打撃を与える仕組みをつくった」と言っているわけだ。組合活動に支配介入する会社ぐるみの「犯罪行為」(不当労働行為)そのものである。実際、このバッジ攻撃は成果を上げ、JR発足当時5600人の国労組合員がバッジを付けていたが、結局最後は辻井さん一人になってしまった。その間、国労は弱体化の道をたどる。会社の狙いは見事に果たされたのだ。

しかし、辻井さんのたった一人のたたかいは、こうしたJR東日本の犯罪を再び白日のもとにさらけだした。アリが巨象の悪を突いたのだ。その意味でも、今回の地労委勝利命令は大きい。JR東日本はこの命令を受け止め、労務政策を転換すべきである。JALの「沈まぬ太陽」ではないが、異常な労務管理がもたらすものは、安全軽視の大事故である。ひたすら利益追求に走るJR東日本にストップをかけるためにも、この命令を大いに活かしたいものだ。

なお、2月26日午後6時半より、東京・飯田橋SKプラザ地下ホールでJRウォッチ主催の「辻井バッジ闘争・勝利報告会」が行われる。ぜひ多くの参加を呼びかけたい。

また、この文章では触れることができなかったが、最初は認識が浅かった労働委員会をここまで動かした弁護団・申し立て人の2年にわたる努力も大変なものだった、という。

*写真は勝利命令を喜ぶ辻井義春さん(撮影=湯本雅典)

勝利コメント・動画(UnionTube)


Created by staff01. Last modified on 2010-02-01 11:29:43 Copyright: Default

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