評伝・葉山嘉樹(「セメント樽の中の手紙」作者) | |
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評伝・葉山嘉樹(「セメント樽の中の手紙」作者) ――名古屋ユニオン運動の大先輩・葉山嘉樹―― http://imadegawa.exblog.jp/11563901/ ■「社民系」だからダメ!? 今月の名古屋ふれあいユニオン機関紙・ 『NFUふれあい通信』(No.115)には、 プロレタリア文学の傑作短編・ 「セメント樽の中の手紙」(葉山嘉樹)の書評が 載っています。 書評を書いたのは 組合員の「マルさの女」さん。 実はこの書評、 さる左翼団体の機関紙に投稿したところ、 「葉山嘉樹は戦前いわゆる『社民系』の作家として 評価されてきました」として掲載を拒絶する手紙が 送られてきたという いわく付きの書評です。 その左翼団体からの手紙の最後は、 「小林多喜二は葉山らの社民派とは一線をかくして 作家活動つづけています。 その意味あいからも 『蟹工船』に挑戦してほしいと思います」と 締めくくられていたといいます。 しかし、 そのような態度はそもそも、 その左翼団体が奉る『蟹工船』で有名な小林多喜二の態度から 最も遠いものであるはずです。 もともと博愛主義的な「白樺派」という文学グループの 作家・志賀直哉の大ファンであった小林多喜二は、 葉山嘉樹の短編集・『淫売婦』を読んだことがきっかけで プロレタリア文学(労働者文学)へと 転身することになりました。 小林多喜二は1926(大正15)年9月14日の日記に、 友人から『淫売婦』を借りて読んだことは 「記念すべき出来事」であり、 「『淫売婦』の一巻はどんな意味に於ても、 自分にはグアン!と来た」、 「志賀直哉のばかりが 絶対な表現ではない」と記しているといいます (浦西和彦「解説 葉山嘉樹――人と作品」葉山嘉樹『セメント樽の中の手紙』170〜171ページ、角 川文庫)。 そして、 小林多喜二が「戦旗」派(共産主義系)、 葉山嘉樹が「文芸戦線」派(社会民主主義系)と 政治的立場が対立したときも、 小林多喜二は葉山嘉樹に宛てた手紙の中で、 「今、不幸にして、 お互に、政治上の立場を異にしていますが、 ――貴方がマキシム・ゴーリキーによって 洗礼を受けたのと同じように、 私は、 貴方の優れた作品によって、 『胸』から生き返ったと云っていゝのです。 …… 云うならば、 私を本当に育ててくれた作品は 『戦旗』の人達のどの作品でもなくて、 実に貴方の作品……でした」と 書いているのです (『小林多喜二全集』第7巻収録、1929年1月15日書簡)。 小林多喜二は冒頭の左翼団体のような、 『葉山嘉樹は社民系だからダメ』といった類の 単純な了見の狭さは 一切持ち合わせていませんでした。 むしろ、 自分の仲間である共産党系の「戦旗」派の作家の作品より、 社民系の葉山嘉樹の作品こそが、 自分を育ててくれたのだとまで言っているのです。 ■名古屋における個人加盟制労組の創設者 葉山嘉樹は1920(大正9)年、 名古屋のセメント会社で働き始めました。 この工場で翌年、 仲間が労災事故で死亡した際 (もちろん、 この出来事こそが『セメント樽の中の手紙』の モデルとなっています)、 遺族への見舞金増額を要求。 労働組合を結成しようとして解雇されてしまいます。 これをきっかけに葉山は、 一人から入れる地域の労働組合(今でいうユニオン)である 「名古屋労働者協会」を設立して 1922年(大正11年)、執行委員長に就任。 テレビタレント・みのもんたさんが 大株主を務めていることで知られる 愛知時計電機の労働争議を指導して、 名古屋刑務所にぶち込まれたりもしています。 この名古屋に、 コミュニティユニオンが戦前からあったと聞くと、 驚く人も多いかもしれません。 しかし実は、 企業別労働組合は戦後になって ようやく主流となったのであって、 元々日本の労働組合運動は、 地域別・産業別のユニオン運動が ずっと牽引してきたのです。 葉山嘉樹は、 私たち名古屋コミュニティユニオン運動の 大先輩にあたります。 葉山嘉樹の作品は、 忙しい労働者にも手軽に読めるよう、 非常に短くまとめられています。 中でも「セメント樽の中の手紙」は 文庫でわずか6ページ。 ぜひ一度、 あなたもチャレンジしてください。 ブログでは 『NFUふれあい通信』(No.115)に掲載された 「マルさの女」さんの「書評:『セメント樽の中の手紙』」を 転載しています↓。 http://imadegawa.exblog.jp/11563901/ 酒井徹 Created by staff01. Last modified on 2009-07-21 11:17:48 Copyright: Default |