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三重:トヨタ下請・光精工での闘い
――外国人労働者36人、「雇止め」無効と提訴――
http://imadegawa.exblog.jp/11219799/

■労働局に是正申告も
三重県桑名市に本社を置く
トヨタ自動車下請けメーカー・光精工で働く
ブラジル・ボリビア国籍などの
ユニオンみえ「グルーポ光」に所属する36人(24歳〜49歳)が
4月7日、
津地方裁判所四日市支部に
「雇い止め」無効の仮処分申し立てを行なった。

「就労期間は長期に及び、基幹作業に従事してきた
 原告らに対する『雇い止め』は解雇に他ならない。
 外国人労働者のみを狙い打ちにした更新拒絶であり、
 団結権保障にも反する不当労働行為だ」と
主張している。

「グルーポ光」は同日、
雇用の継続を求めてストライキ突入を宣言。
また、
現在の雇用形態は労働者供給なのに
出向契約を装う「偽装出向」であるとして、
雇用の安定を指導するよう
三重労働局に是正申告を行なった。

■長年の違法雇用の末の使い捨て
筆者は愛知県の個人加盟制労働組合・
名古屋ふれあいユニオンの運営委員長であるが、
職業としては、
ユニオンみえと名古屋ふれあいユニオンでつくる
「派遣ユニオン東海」の専従職員である。
ユニオンみえは正式名称を三重一般労働組合といい、
「連合」単位産別・全国ユニオンに加盟する
力のある組織だ。

現在この地域で首切りを受けている
外国人労働者には
偽装請負の期間も含め、
これまで長い間違法派遣状態で
働かされてきた者が多い。

原告らも過去、
長年にわたって光精工において
偽装請負の形態で働かされてきた
労働者である。
光精工における就業は
長い者では1998年からと10年以上、
国籍もブラジル人26名、ボリビア人6名、
ペルー人2名、アルゼンチン人1名、
フィリピン人1名と多岐にわたり、
女性労働者も6名いる。
年齢は20代が6人、30代が25人、
40代が5人である。

2008年、
光精工は長年にわたる偽装請負が発覚し、
三重労働局から偽装請負の是正指導を受けたため、
4月、
原告らを子会社・「HKR光」に期間工として
「直接雇用」しなければならなくなった。
しかしその後、
一定の期間を空けたので
再び派遣労働者を使用できると称し、
せっかく期間工となった原告たちを
10月15日をもって再び派遣労働者に切り戻そうとした。

しかし、
ユニオンみえに結集した「グルーポ光」の労働者たちは
9月19日、9月23日、そして10月12日の
三波にわたるストライキを打ち抜き、
直接雇用の継続を勝ち取ったのだ。

3年間の派遣可能期間が過ぎた後、
一定期間だけ直接雇用として
また派遣社員に戻す手法は「クーリング」と呼ばれ、
2009年に多くの会社で派遣可能期限を迎える
「2009年問題」への対応策として
目論まれていた手法であった。

せっかく直接雇用となった労働者を
再び派遣労働者に戻すことが許されるのか。
過去に偽装請負があったために
他に先駆けて派遣可能期間に抵触し、
直接雇用を行なった光精工におけるこの問題は、
「2009年問題の前哨戦」として
労働運動関係者の間で全国的な注目を集めた。
「グルーポ光」の労働者たちは、
ストライキをもって「クーリング」策動を打ち破り、
こんな理不尽は通らないことを
広く社会に知らしめたのだ。

しかし、
「グルーポ光」の労働者たちは
光精工の「子会社」であるHKR光での
「直接雇用」であったにも関わらず、
原告たちは相変わらず親会社の光精工の工場で、
光精工社員の指揮命令の下で働き続けてきた。
この件についてユニオンみえが光精工に質問すると、
「労働者は光精工への出向」と回答。
「光精工従業員による
 『請負先』労働者に対する指揮命令が
 問題になったはずだが、
 どうして光精工ではなく
 HKR光への『直接雇用』となったのか」
との質問に対しては、
「光精工従業員と
 派遣から直接雇用になる人と区分している」ためであると
回答してきたのである。
これでは、
労働局の指導後も、
違法な労働者供給は形を変えて温存されてきたことになる。

■「雇い止め」は組合つぶしの狙いか
こうした中で行なわれたのが
4月15日付での「雇い止め」である。
光精工側は、
雇い止めに先だって2009年1月16日に
希望退職を募集したとしているが、
正規社員でこれに応じた者は一人もいない。
今回の雇い止めは、
特にユニオンみえの影響力の強い
南米系労働者を狙い打ちにして
行なわれたものである可能性がある。

光精工総務部は毎日新聞の取材に対し、
「受注減で経営が厳しく、
 やむを得ず期間工の契約を
 打ち切ることになった。
 契約を更新しないことは
 今年1月下旬から繰り返し説明し、
 理解を求めてきた」と釈明している。

ところが光精工は、
原告らへの「雇い止め」が迫った今年3月27日、
急きょホームページ上で
「長期アルバイト」(フルタイム)の募集を
始めたというのである。
光精工総務部は、
「景気が良かったときの記述が残っていただけ」と
説明するが、
前日26日にはこのような記述がなかったことを
ユニオンみえホンダユニット代表の
北川剛さんらが現認している
(筆者もしばしば光精工の「採用情報」を見ていたが、
 それ以前にそのような記述はなかったと
 記憶している)。

また、
4月24日には、
見慣れないフィリピン人が
光精工構内に向かう現場を
ユニオンみえ組合員が確認した。
光精工総務部は、
「今日たまたま
 うちの構内に立ち入った方がいらっしゃったので、
 どうしたのかと聞いたところ、
 仕事を探しているとおっしゃるので、
 うちでは現在募集していないと言って
 お帰りいただいた」と釈明している。

■外国人「実習生」の「飛ばし」も発覚
光精工ではまた、
ベトナム人「研修生・実習生」を受け入れているが、
ここでも重大な法違反が発覚している。
光精工は自社で受け入れたベトナム人「実習生」4人を
いなべ市にある「HKR光」の工場で働かせるという、
いわゆる「飛ばし」行為を行なっていたことが、
ユニオンみえ組合員らの証言で明らかになったのだ。
この事実はユニオンみえとの団体交渉における、
光精工・岡本総務課長の返答からも明らかだ。

ベトナム人らは光精工で「研修・技能実習」を行なう目的で
日本に入国しているのである。
研修・技能実習は当然のこと、
協定(契約)をした事業所である光精工で
行なわれなければならない。

ユニオンみえはこの件について、
4月15日、
ベトナム人「研修生・実習生」の
第一次受け入れ団体になっている
桑名鉄工協同組合(光精工・西村憲一社長が顧問)に
書面で調査を要請したが、
現在なお何の返答もない。

■社長は「外国人のため功績」で勲章受章
光精工の社長は桑名商工会議所の会頭も務める
地域の名士である。
そして何と、
あろうことか
「外国人労働者のために功績があった」として
旭日小綬章を授章までしている。
長年にわたって外国人労働者を
違法な偽装請負のもとで働かせ、
その後も「子会社」に雇い入れた労働者を
自社会社工場で、
自社の社員の指揮命令下で働かせるという
雇用責任回避の小細工をとり続けた光精工。
そのあげく、
減産を受けて
日本人社員にはボーナスまで出しておきながら、
長年働いてきた外国人労働者を
真っ先に使い捨てた光精工。

現在なお、
外国人「研修生・実習生」の「飛ばし」など、
違法な雇用を繰り返している
光精工の西村憲一社長に、
「外国人労働者のために功績があった」と
旭日小綬章を授章する資格など
あるのだろうか。
過去の経緯を考えれば、
光精工には一般企業よりなお一層、
外国人労働者の生活と雇用に
責任を持つ姿勢が求められている。

■ 合言葉は「光精工に続け」
光製工の闘いは、
現在この東海地方で
最も集中的に「派遣切り」・「非正規切り」を受けている
外国人労働者に
大きな勇気と励ましを与えている。

例えば、
同じく三重県の伊賀市にある
トヨタ系変速機メーカー・エクセディでの闘いである。
いくつもの派遣会社から、
多い時には800人もの外国人労働者が
送り込まれていたが、
その全てが解雇されてしまった。
ユニオンみえは派遣先であるエクセディに
団体交渉を申し入れているが、
全く応じない。

だが、労働者たちの意気は高い。
こちらも長い人では10年以上、
エクセディで仕事を続けてきた。
家族も日本ででき、
子どもが日本の学校に行っていて
もはや日本語の読み書きはできても
ポルトガル語の読み書きはできないという人までいる。

エクセディの労働者たちは、
地元社民党の稲森としなお市会議員の紹介で
伊賀市長とも直接会談。
市内のデモ行進とともに
地元メディアで大きく取り上げられている。
そしてここでのスローガンが「光精工に続け」なのである。

筆者が運営委員長を務める
名古屋ふれあいユニオンでも、
光精工の闘いは有名だ。
初めて組合にやってきた労働者が、
「私も『ヒカリ』みたいにストライキがやりたい」と
目を輝かせて話すという光景をしばしば目にする。

そんな名古屋ふれあいユニオンの最大の分会が、
トヨタグループ企業・デンソーの子会社である
アンデン岡崎工場で「請負」で働く労働者たちの分会・
トゥエンティーファースト分会だ。
一時は60人ほどの組合員がいたが、
ここでも解雇が続出している。
組合を辞めて帰国する労働者も多いが、
最後まで闘う労働者たちの合言葉はやはり、
「光精工のように闘おう」だ。

トゥエンティーファーストの労働者たちも、
アンデンへの直接雇用を求めて提訴を準備中だ。
「派遣切りから直接雇用」の闘いは、
実現された場合は単に雇用が守られるばかりではなく、
派遣会社のピンハネもなくなり、
何と給料までアップする例がある。
雇用問題での「駆け込み相談」を
労働条件の改善にまでつなげる
非常に有効な闘いがここにある。

だからこそ私たちは、
その原点である光精工の闘いから目が離せない。

ユニオンみえ「グルーポ光」のリーダー・
オオナリ=アレサンドロさんは、
「経営者は経済状況が悪くなると
 外国人労働者を邪魔者扱いする」と記者会見で話した。

都合のいい時だけ雇う。
都合が悪くなれば首を切る。
だが、
日系労働者はもはや日本に生活があり、
家族がある。
「必要なものを、必要な時に、必要なだけ」の
トヨタ生産方式は、
生身の人間に適用することは
決して許されないのである。

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氏名:酒井徹
電子メール:sakaitooru1983@excite.co.jp
ホームページ:『酒井徹の日々改善』
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