「ソマリア沖海賊対処法案」が今国会で成立しそうだ。 I・Yさんがソマリア沖の「海賊」について英文資料に あたり翻訳・要約してくれた。本当の海賊は、ソマリア の漁民かそれとも西側諸国なのか？（編集部S）

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「お前が全土を所有し続けるのと同じだ。ただ、俺はそれをちっぽけな船でやるから盗人と呼ばれる。それにくらべ、お前は大きな船団でやるから大王と呼ばれる。」アレキサンダー大王の前に引き出された海賊

ソマリアの海賊　関係資料(要約、一部訳)

＊ソマリアの海賊はソマリア沖の西側諸国の船舶の不法操業と毒物廃棄の結果だ

ムハンムド･アブシャル・ワルドウ　Democracy Ｎow　(Amy Goodman)Analysis: Somalia Piracy Began in Response to Illegal Fishing and Toxic DumpingbyWestern Ships off Somali Coast April 14, 2009　　　Mohamed Abshir Waldo is a consultant and analyst in Kenya. He is Kenyan of Somali origin. In January, he wrote a paper called “The Two Piracies in Somalia: Why the World Ignores the Other?”

・米前国連大使ボルトン：有志連合でソマリアに侵攻すべき

・ソマリアの漁民：アメリカの海兵隊は我々を海賊と疑い、逮捕するが、我々は海賊ではない。

・ソマリアのビジネスマン：軍艦のパトロールが多くなり、商船が海賊に動かされているとして、船の検査が頻繁になっている。

・2つの海賊　（ワルドウ）

（１）漁業(fishing)海賊。外国のトロール船などによる海賊で、産業廃棄物や有毒廃棄物｛ゆうどく はいきぶつ｝、さらには核廃棄物なども廃棄していると言われる。

（２）仕事としての?（shipｐing ）海賊。ソマリアの海産資源が略奪されたとき、海域が汚染されたとき、魚類が盗まれたとき、全土に貧困が襲ったとき、漁民たちは漁業海賊と汚染物投棄と戦わねばならないと感じた。

・海運海賊と言うのは不法、無通告、無規制の船団だ。アラビアとか極東、フィリピン、中国、韓国、台湾、スペイン、イタリア、ギリシャ、イギリス、ロシアなどからもうま味を求めてやってくる。これらは91年から続いている。地域の漁民たちがＵＮやＥＵを通じて国際社会に訴えてきたが、全然反応がない。全く無視されてきた。彼らにはライセンスもなく、地域も当局も苦情を言うが、外国の漁業船団、トロール船などライセンス、許可証など何も持たず、「止めろ、出ていってくれ」といっても無視する。彼らは、煮え湯をかけたり、撃ってきたりする中で、沿岸地域が団結したり、国民ボランティア・コーストガードと呼んだりするものが「海賊」と呼ばれる。さらに状況を悪化させているのは、今では海軍や軍艦が現れていることで、どの国も自国の不法船―操業を守っている。彼らは領海まで近づき、漁民を挑発している。そのために　海賊と言われまた、海軍に捕まることを恐れて沿岸での漁業が出来なくなってきている。公平の問題が問われている。国際社会は、自分たちの利益だけを考えるだけでソマリア側から考えることはない。

私は、海賊行為を、罪のない船員らを危険にさらしたり、他人の財産を壊したりすることを許そうと言っているのではない。この人たち、海賊になってしまった漁民は自らを守る、自分たちの領分を守る、絶望的な行為なのだ。

・ソマリアの人々はどう見ているか賛否入り混じった反応、複雑な気持ち人々は無実の船員が危害に会ってほしくないと思っている。廃棄物投棄や石油の船で環境を汚してもらいたくないとも思っている。海賊や、漁師の海賊にそんなことをしてもらいたくないと思っている。人々は憂慮し、平和的解決を望んでいる。国際社会の理解がないことは悲しいことだとも。

・70年ぐらいから、国内で環境規制が厳しくなってくる中で、汚染物質、産業廃棄物、核廃棄物などがソマリアに持ち込まれた。アルジャジーラやＣＮＮも報道した。イタリアのマフィアも長期にわたって投棄していたことも分かった。最近では、アデン湾で二つの大きなコンテナを捨てようとしていた船が地域（コーストガード）によって取り押さえられた。地域は調査のため国際社会を招待した。

・サマーズ（オバマ経済主席補佐官）：汚染廃棄物を最低賃金国に廃棄するその経済的論理は非のうちどころがないと思う。これは認めなければならない。私は常々アフリカの人口の少ない国は非常に汚染度が低いと考えてきた。・現在ソマリア当局とともに動いている国連事務総長ソマリア担当特別代表の売る度･アブドラ氏もそのように認めているが、問題はそれについて何もしないことだ。

(参考) 2009.3.21 13:13　産経国連安全保障理事会は２０日、海賊被害が深刻化しているソマリア情勢について公開会合を開き、議長が「海賊撲滅には国内の安定が不可欠」との報道陣向け声明を発表した。会合でソマリアの外相は国連平和維持活動（ＰＫＯ）部隊の派遣を要請、各国からも検討すべきだとの意見が相次ぎ、６月に再度、会合を開くことになった。　会合では、国連のウルドアブドラ特別代表が「海賊はもうかるビジネスとなっており、対策には活動資金源を断たねばならない」と指摘した。また「ＰＫＯ派遣の可能性を話し合う時期だ」（サワ（誤）マーズ英国連大使）などの意見も続出、六月に潘基文事務総長に報告を求めることで一致した。（共同）

＊海賊についての嘘

ヨハン・ハリ　イギリスのインディペンデント紙の執筆者You Are Being Lied to About Pirates　　April 13, 2009 By Johann Hari independent.co.uk　

海賊というのはこの世界で始めて反乱した人々であった。専制的船長に反乱し、海の上での異なった働き方を創造したのである。彼らは一度船を手に入れると、キャプテンを選び、集団でことを決めた。手にした恵みは、18世紀に見られた富の分配の最も平等主義的計画で分かち合った。彼らは逃れてきた奴隷さえ受け入れ、対等で暮らした。海賊は非常にはっきりと、また、反抗的に、船というものは、商船や王室海軍に見られる容赦のない抑圧的な方法で運行する必要がないことを示した。彼らは営利的ではなかったが、人気があったのはこういう理由からだ。ウイリアム･スコットという若い英国人の言葉が新しい時代の海賊にこだましているはずだ。サウスカロライナのチャールストンで首吊りになる直前、彼は言った。「俺がしたことは、死なないためだ。俺は生きるために海賊をやらされたのだ。」1991年にソマリア政府が崩壊し、その9百万の人々が飢餓にさまよった。これを食料の略奪と海への核廃棄物投棄の好機と捉えた西側の船が出没した。2005年の津波が沿岸を洗い、汚染がさらに拡大した。国連のソマリア特使は、ヨーロッパ政府は何の処置−汚染除去、補償、防止策も講じていないと語っている。

沿岸の住民は最初、奇妙な発疹、吐き気に襲われ、障害を持つ赤ちゃんが生まれるなどした。放射能のため300人以上はなくなった。国連のソマリア特使アブドラ氏は「鉛や水銀、カドミウムなどの重金属が捨てられている。元をたどればヨーロッパの病院や工場だ。そこからイタリアのマフィアに安く渡っているようだ｡　ヨーロッパ政府は何の処置−汚染除去、補償、防止策も講じていない」と語っている。ヨーロッパの船はソマリアの貴重な海産食品を奪っている。3億ドル相当のマグロ、えび、ロブスターなどが毎年トロール船によって不法に捕獲されている。(注：廃棄するのにヨーロッパではトン当たり1千ドルかかるところ、ソマリアでは3ドルほどで済むという)最初にモーターボートなどを使って投棄者やトロール船を思い留まらせたり、あるは、「税」をとったりしていた。彼らは自らを「ソマリアのボランティア・コーストガード」と称していた。海賊のリーダーの一人であるスグール・アリはその動機を「不法操業と投棄をやめさせることであった。盗賊ではない。盗賊は彼らの方だ」と言う。ウイリアム･スコットはこの言葉を理解するだろう。

これは人質事件を正当化するものではない。はっきりギャングである場合もある。特に世界食糧計画の物資を強奪したものたち。しかし、「海賊たち」が地域の圧倒的支持を受けているのには理由がある。独立系のソマリアのニュースサイトWardherNewsが実施した最良の調査によれば、７０％が「海賊をソマリアの国の領海防衛のやりかたとして強力に支持している」というのだ。アメリカにおける革命戦争のとき、ジョージ・ワシントンと建国｛けんこく｝の父たちはアメリカの領海を守るために海賊に金を支払った。自らの海軍や沿岸警備隊がなかったからだ。ほとんどのアメリカ人はこれを支持した。これとどれだけ違うだろうか。

我々は、餓死していくソマリアの人々が浜辺で力なくたたずんでいるのを、我々が捨てた核廃棄物の中で足をばたばたさせているのを、また、ロンドンやパリやローマのレストランで彼らの魚を奪っている我々を見るのを望んでいるのであろうか。我々はこうした罪について行動しなかった。我々が本当に海賊行為に対処したいのなら、その根本原因―我々の罪―を取り除く必要がある―我々がソマリアの犯罪者を根絶するために小型砲艦を送る前に。2009年の海賊に対する戦争は、ＢＣ4世紀に生きて死んだ海賊に要約される。彼は捕えられアレキサンダー大王のもとに連れて行かれた。王は「お前が海を所有続けるのはどういうことか」と問うた。すると海賊は笑って答えた。「お前が全土を所有し続けるのと同じだ。ただ、俺はそれをちっぽけな船でやるから盗人と呼ばれる。それにくらべ、お前は大きな船団でやるから大王と呼ばれる。」　

また再び、わが帝国艦隊が入港している−誰が泥棒なのか？　

＊ソマリアの二つの海賊―世界はなぜ一方を無視するのか(一部抄訳)

　ムハンムド・アブシャル・ワルドウ　 Mohamed Abshir Waldo, Daljir Radio　Radio Daljir Wednesday, Apr 15, 2009

こうした危機（不法操業、廃棄物投棄など、またその問題についての沿岸住民の苦情など）について、国連 は良く知っており、時折、関心や憂慮を示したが、安全保障理事会に報告するなど具体的行動はとらなかった。事情を良く知っているはずのアブダラ特使の報道発表（０９年11月8日）もこのことには触れず、ヨーロッパ連合が海賊と戦うためにソマリア沖に軍艦を送ることを、「海賊は世界的な航行の自由と地域の安全保障にとって深刻な脅威である」（正しいが偏向している）と歓迎した。

国連と大国は、決議案1816号(08年6月)、1838号(12月)　を採択した。ソマリア領海内での実力行使を含む制圧をその領海内で海賊の取り締まりのために、必要なあらゆる措置を取ることを認めている。そこには、違法操業の問題や、ソマリアの猟師たちがどうなるかなど何も触れられていない。正義と公正が無視されるなかで、ソマリア暫定政府は決議は違法で、役に立たないと主張している。ヨーロッパ議会にもこの決議を拒否する議員がいる。結論第一に、shipping 海賊と不法操業の双子の問題の根本的解決。第二に、国の制度的危機は海賊問題にそって検証されるべきこと。第三に、地方制度は、コーストガードを集め、訓練し、ガード施設をつくることで支えられるべきである。第四に、ソマリアの空には国連機関との国際民間航空機関 (ICAO)のような組織が検討されるべきである。

＊関連写真　Pirates of Somalia (30 photos total)Click here

---

Created by staff01. Last modified on 2009-06-02 15:31:40 Copyright: Default