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LNJ Logo 木下昌明の映画批評〜「カムイ外伝」
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●映画「カムイ外伝」
白土三平の傑作漫画を映画化
CGが案外原作とマッチする

 白土三平の漫画がブームになった時代があった。それは平等な社会を目指して若者がエネルギーを燃やした時代とも重なった。今度、崔洋一の「カムイ外伝」が公開される。これによって白土漫画は復活するだろうか。

 白土の代表作はまず『忍者武芸帳』。これを大島渚が映画化した。白土の原画をそのまま使って不評を買ったが、見直してみると意外に面白い。戦国時代、忍者影丸の一族が百姓一揆に加担し、影丸は一人でなく倒れても倒れても出現し、時の権力者をおののかせた。そこに集団というものの魅力が描かれていた。

 次に『カムイ伝』。徳川の封建時代、非人のカムイ、百姓の正助、武士の竜之進の3人の成長を通して身分社会の差別に対する不条理が追究された。

 最近、田中優子が『カムイ伝講義』で、漫画の場面場面を下敷きに、時代背景を分析して「生き物」の視点から人間を描いていると評価した。穢多と非人それぞれの成り立ちや衣食を介して社会の仕組み、一揆の原因などがわかる。正助たちの栽培した綿花が花ひらく場面の解説には感動もした。

『カムイ外伝』は、本伝のうち忍者として生きるカムイが自由を求めて集団から“抜忍”し、追っ手との秘術をつくした死闘が見もののエンターテインメント。本伝の「宣伝」として描かれたものだが、当時人気のデビット・ジャンセンのテレビドラマ「逃亡者」がヒントとなったのかも。

 映画は、カムイの松山ケンイチが大暴れするが、CGを駆使した荒唐無稽な表現がかえって原作の漫画を彷彿させて楽しませる。そのなかで、小林薫の漁師が興味深い。平然と領主の馬の脚を切り取り、その蹄でなんと小さな擬餌針を作るのだ。これには驚いたが、カムイと漁に出るシーンがいい。

 難点は(原作の特徴でもあるが)、やたら人を殺すことだ。暴力には暴力を、では綿花が花ひらく世界は遠くなるばかりである。 (木下昌明/「サンデー毎日」09年9月6日号)

*映画「カムイ外伝」は9月19日から新宿ピカデリーほか全国公開 (c)2009「カムイ外伝」製作委員会


Created by staff01. Last modified on 2009-09-04 20:28:11 Copyright: Default

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