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LNJ Logo 詳細報告 : なくそうハウジングプア!3・14集会
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News Item 0314hokoku
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今こそ住宅のセーフティネットを
現場の訴えに連帯して闘う決意

3月14日、「なくそうハウジングプア! 安心できる住まいを!」と呼びかけた集会が都内で開催され、約200人が集まった(主催・住まいの貧困に取り組むネットワーク)。経済情勢の深刻な危機が雇用環境を悪化させている。「派遣切り」や「雇い止め」で会社の寮から追い出されるなど、失職と同時に住居まで失う人々が増え続けている。そんな住居の問題に直面する当事者と支援者らがこの日、全国的なネットワークを結成した。会場は新宿区にある大久保地域センター。小雨降るなか次々と参加者が詰めかけ、テレビ局などのメディアも多数取材に訪れた。

藤本龍介さん(スマイルサービス闘争を支援する会)が開会のあいさつ。「昨年10月、反貧困集会の『住まいの分科会』で出会った人々が準備会を作り活動してきた。UR花畑団地見学ツアーなどを行なった。今後も電話相談や定例会議を続けていく」。

■現場からの悲痛なさけび

第一部は「住まいの貧困」の現場からの証言。ある男性は、「ゼロゼロ物件」を扱う悪徳不動産業者「スマイルサービス」(東京・西新宿)の被害にあった。日雇いの仕事に必要な携帯電話代の支払いで家賃が払えず、鍵を交換され、10日後には貴重品の入った荷物を撤去された。会社とは示談に応じたが生活保護(生保)を受けながら今後、この問題に取り組んでいく決意をした。

藤堂悟さん(日産ディーゼルユニオン書記長・写真)は昨年11月、今年6月までの派遣契約を一方的に打ち切られ、寮を出るよう通告された。同僚3人とともに翌12月、現在の組合を結成。交渉の結果、職場には戻れないものの、契約期間分の賃金保障と寮での生活を勝ち取った。

■根深い入居差別の実態

インド出身の男性は、自動車部品を製造する派遣の職を失った。外国人であることで賃貸契約を13回も拒否され、現在は日本人の妻の兄の名義で部屋を借りている。外国人に対する業者の露骨な差別にとまどい、途方にくれている。

30代前半の男性は、上野や秋葉原で野宿生活中、業者に声をかけられた。誘われるままに横浜にある寮に入った。生保の支給日は寮の門限が2時間も延びた。支給された15万円から87000円の寮費を引かれた。食事当番がありイジメにもあったという。来場者は、区側の対応の詳細や、寮長の選ばれ方などを当事者に質問した。

第二部は「住まいの貧困にどう立ち向かうか」と題するディスカッション。

■野放しの住宅市場に公的な規制を

稲葉剛さん(NPO法人もやい・代表理事・写真)が最初に提起した。「石原都政になって都営住宅が一戸も増えていない。そのかん家賃保障会社が増大した。これは派遣会社と似ていて、差別を前提としたビジネスだ。常に大家のほうを向いている。取り立ての厳しい大家も増えている。貧困ビジネスは公的なサービスの隙間を縫って成長している」。

「行政に公的な介入をさせる、野放しの市場を規制していく必要がある。そして住宅を供給させていくことだ」。「保証金など、本来大家が抱えるべきリスクを、入居者が支払うのはおかしい。公的な保証システムを機能させていくことが重要だ」。

■「追い出し屋」に法の裁きを

司法書士の徳武聡子さん(全国追い出し屋対策会議)は、家賃滞納を理由に違法に部屋を追い出す「追い出し屋」の対策に取り組んでいる。同会議は今年2月に結成された。

「家賃保証会社」と称する業者は全国で100社弱存在するが、借家人の保護ではなく、あくまで大家の立場で商売をしている。サラ金業者らが小会社を作り、家賃の取り立ての代行などで売り込む。強引な借金回収のノウハウがあるというわけだ。

具体的には、職場に恫喝の電話をかける、勝手に部屋の鍵を付け替える。家財道具を持ち出して処分するなどだ。こうした違法行為に同会議では警察への告訴など、法的手段で対応している。徳武さんは横行する「追い出し屋」の手口を、怒りをこめて告発した。小玉徹さん(大阪市立大教授)は、大都市・住宅政策の研究者。欧米と日本の居住政策を、豊富な資料を使ってレポートした。

■差別と貧困は社会全体の問題

参加者からは質問や積極的な問題提起があった。「貧困者だけでなく障がい者も住宅差別の対象だ。地域でともに暮らしていくことを実現する運動が必要だ」。

「派遣法の改悪で、『失業すると路上に出る』というシステムが作られていった。法的なネットワークを作るのは当たり前で、今後は住まいを奪われた者の草の根の、横のネットワークを作る必要がある」。

最後に稲葉さんが締めくくった。「かつての日本社会は素晴らしかったような風説があるが、貧困はその形を変えただけで構造は今も同じ。私たちはいつからか差別と貧困の問題を、社会全体のものととらえてこなかった。すべての人にとってのセーフティネットとは何なのかを問い返していきたい」。

集会宣言を読みあげ全員で確認した。会場を出発したデモ行進は、大久保通りを西に進み、小滝橋通りを南下、新宿の大ガードをくぐり靖国通りへ。

「公共住宅を造れ」「大家は入居差別をやめろ」
「家賃を下げろ」「保証人制度をなくせ」
「貧困ビジネスを規制しろ」「居住権を守らせろ」
「住まいの貧困とたたかうぞ」

夕闇迫る繁華街に、怒りのシュプレヒコールが響いていた。
(写真と文/T・横山)


Created by staff01. Last modified on 2009-03-22 17:04:39 Copyright: Default

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