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担当弁護士が読み解く「免状不実記載弾圧事件」国賠訴訟判決

主文――「1.被告神奈川県は、原告Aに対し、金33万円及びこれに対する平成18年10月24日から支払済みまで年5部の割合による金員を支払え」。

運転免許証更新の際に申請した「住所」が、かつて住んでいた実家のままになっていたとして06年10月、新左翼団体活動家のAさんが神奈川県警によって逮捕された「免状不実記載弾圧事件」。

この事件で長時間の勾留、家宅捜索を受けた当事者が損害賠償を求め、争っていた裁判の第一審判決が12月16日、横浜地裁で言い渡された。原告らの主張をほぼ認め、被告神奈川県に対し賠償を命じる画期的な勝訴となった。(トップページで既報)

この判決の詳細を検討する集会(写真上)が12月21日、都内で開かれ、大新聞の記者らを含む約30人が集まった。裁判を担当した内田雅敏弁護士、川村理弁護士が、2年間の法廷闘争を振り返った。(以下、発言要旨)

■いい裁判官の下で法廷論争==内田雅敏弁護士(写真)の発言から

この事件を友人の弁護士に話した。友人は「なんでこんなことが起こるのか」と驚いていた。友人も免許証の住所は実家のままだったという。

キーワードは「極左暴力集団」。警察は、実家の住所で申請したことについて、Aさんの個人的行為ではなく「組織的行為」だと繰り返し主張している。「暴力革命をやるために住所を隠した。30年前の三里塚闘争を機関紙で反省していない」というわけだ。

たしかに「反省」はしていない。しかし30年も前のできごとだ。今回の行為に組織性はない。個人の事情によるもので住所を隠す必要も、したがって逮捕の必要もなかった。家宅捜索の蓋然性もない。判決では、「捜査の主な目的はJRCL(捜索を受けた団体名/筆者)についての情報収集を行うことにあったとみられる」と明言している。

ここまではよかった。が、ここからトーンダウンし、令状を発布した裁判所の責任を回避している。私たちは道交法上の「住所」については「複数」の存在を主張してきた。ところが裁判所はこれを「独自の見解である」と排除。公務員に対する虚偽の申立にあたり、県警の「嫌疑の判断」を相当とした。おそらく県側が控訴したときのための布石だろう。

公安警察はまったく反省していない。公安はもともと違法行為をやる警察だ。公安にとっては「やり得」であり、成果にすらしている。

民事訴訟は法廷で論争ができる。今回の裁判長(三代川俊一郎)、裁判官は非常によかった。裁判官からの補充尋問にもそれが表れていた。核心を突くいい質問をしてくれた。裁判長がいいと裁判官もよくなる。ささやかな勝利だが、原告が受けた打撃、損害の回復には、とうていならない。

■「住所」とは何か==川村理弁護士の発言から

「免状不実記載」への弾圧は1983年頃から始まり、80年代の終わりから90年初頭にかけて猛威を振るった。今回の判決は「公安警察による情報収集が目的」と断じた。

実を言うと、Aさんから国賠をやりたいと相談されたときは「いやだな、勝てないだろう」と思った。関西の方では他党派が勝った事例があったのだが。

審理を進めるなかで「勝てる」と実感したことがある。それは被告・県が「JRCLは武装闘争路線を維持している」と主張したことだ。裁判所による被告国・県への文書提出命令も、かなり踏み込んでいた。それだけ被告の主張が、いいかげんで矛盾だらけだった。勝ちたいと思ったポイントで勝つことができた判決だ。

そもそも「住所」とは何か。公安の佐藤(※注)は、出廷カードに自分の住所を書いていない。警察の所在地を書いて済ませているのだ。

県側は間違いなく控訴してくることだろう。舞台は東京高裁に移る。東京高裁は国家と行政の、最後の砦だ。最高裁よりひどい裁判官が集まっている。心して闘っていきたい。

(※)今回の弾圧を指揮した神奈川県警公安3課課長補佐・佐藤道男。第8回公判に「証人」として姿を見せたが、「捜査上の理由」を連発し、被告県と原告、裁判官による質問にほとんど答えなかった。

当事者であるAさんと家族が現在の心境を語った。参加者からは、今回の弾圧について、さまざまな意見、質問が出された。(佐藤隆)


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