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LNJ Logo インドネシア「Transmission」会議参加報告(安田幸弘)
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安田(ゆ)です。

5月19日から24日まで、インドネシアで開かれたTransmissionというメディア・グループのアジア太平洋地域の会合「Transmission Asia-Pacific」に参加しました。簡単に報告を書いておきます。なお、この会合に参加するにあたり、レイバーネット日本から旅費の支援があり、正式にレイバーネット日本からの参加という形になっています。
なお、Transmissionは、社会運動に関心を持つ世界各国のメディア・アクティビストのネットワークで、2006年から1年に1回程度、集まってオフラインの会議を開いています。
ウェブサイトはhttp://transmission.cc/です(英語)。
また、Transmission Asia-Pacificの写真一覧は、
http://misc.labornetjp.org/txap2008/ をご覧ください。


Transmission Asia-Pacific参加報告

 Transmissionは、世界各国のメディア活動家による国際的なネットワークだ。
通常、オンラインでの情報交換を中心に活動しているが、一年に一回程度、ネッ
トワークの参加団体が一堂に会して情報交換を行っている。
 今回私が参加したのは、Transmissionのアジア太平洋地域のメディア活動家
による会議で、インドネシアのジャカルタから南に約100km程の場所にある山
中のキャンプ場が会場だった。5月19日から24日までの約1週間、12か国から48
人のメディア活動家(開発者、フィルムメーカーなど)が集まり、多彩なテーマ
を巡って連日、朝から夜中まで、それぞれの発表や情報交換、上映会などが行
われた。

●ジャカルタへの旅

 私が日本を発ったのは5月18日の早朝。何しろ安い航空券なので、こちらの
都合というよりは、航空会社の都合が優先する。
 溜まっている仕事を徹夜で片付けた頃にはもう出発の時刻、眠る暇もあれば
こそ、移動中に眠ればいいやとばかりにそのまま始発で成田に出発する。
 航空会社は、台湾の中華航空。運が悪いと墜落したり炎上したりするが、機
内食は悪くない。客室クルーも愛想がいい。台北で乗り換えて香港でストップ
オーバーという各駅停車の旅なので、一日中飛行機の中で座りっぱなしだった
のだけど、米国系エアラインで常に感じるフラストレーションは感じなかった。
 ところで、台北で乗り換えのために空港で並んでいると、「安田さん!」と
か声をかけられた。同じTransmissionに参加するPARCのナツミさんだった。
NGOだとか社会運動だとかの国際会議は、みんな安い便を選ぶので、同じ便に
なる確率は高い。
 機内では、何もすることもない。ひたすら眠り、食べる。そして夜の10時頃
にジャカルタのスカルノ・ハッタ空港に到着した。
 空港では主催者が迎えにきてくれることになっているので、出口あたりでキョ
ロキョロしていると、待ち構えていたのは何度か会ったことがある韓国のメディ
ア・カルチャー・アクションから参加しているドンジュンだった。ちょっと前
の便で到着したのだそうだ。韓国からは、ドンジュンのほかにドンウォンとス
ンミの計3人が来ていた。女性のスンミと会うのは、多分初めてじゃないかと
思うけど、とにかくはじめてのグループの中で、顔見知りがいるのは頼もしい。
 空港から外に出ると、ジャカルタは真夏である。湿度も高く、気温は30度を
超えているだろう。今日の宿舎は主催者団体のラングルーパのオフィスだ。ラ
ングルーパのスタッフとともに、ジャカルタ市南部のテベットにあるラングルー
パに向かう。
 約一時間ほどで到着したラングルーパのオフィスは、住宅街の一軒家だった。
20坪程度のホールにマットレスが敷かれ、すでに到着したメンバーがごろごろ
と転がっている。ジャカルタのメディア系アーティストの溜り場らしく、壁に
はポップなペイント。
 主催者のラングルーパやエンゲージメディアのスタッフや、到着していた参
加メンバーとのあいさつをすませ、チェックイン。参加費は、$20、$50、$70
のコースから都合のいい料金が選べる。当然$20が多数派なのだが、やはり日
本からの参加で$20はないだろう。出発前にレイバーネット日本のメンバーか
ら集めたカンパもあることだし、奮発して$70コースを選ぶことにする。
 すでに到着していた参加者の中には、G8Media関連で、メールや人伝に話を
聞いていただけのエムやジョンなどもいた。簡単にG8関連の話もしたのだけれ
ど、眠い。みんなが夕食を食べに行くので来ないかと言われたけれど、とりあ
えず「水を買ってきて」と頼んでマットレスに横になる。…で、そのまま結局
朝まで眠ってしまった。

●キャンプ場へ

 朝8時頃に起きる。赤道直下の真夏の朝。
 夜に到着したメンバーとともに、朝食をとりに出かける。小さな食堂に入り、
カウンターに並んでいるおかずを適当に注文して食べる。朝食後、主催者から
簡単な案内があり、バスに乗ってセッション会場となるキャンプ場へと向かう。
スカブミという町に近い火山の中腹にあるキャンプ場だ。
 ジャカルタの市内はたいへんな渋滞で、バスは遅々として進まない。ジャカ
ルタ市内を抜けて高速道路に入ると車はスムーズに流れるが、高速を下りると
細い道を決して快適とはいえないペースで行くことになる。ちょっとした町に
入るとまた渋滞。結局、朝の9時に出たバスは、5時間ほど後の午後2時過ぎに
キャンプ場に到着した。
 キャンプ場は、思ったよりもこぎれいだった。トイレも清潔で、シャワーも
お湯が出る。もっとも、翌朝になって実際にシャワーを浴びてみると、温度が
不安定で熱くなったり冷たくなったり、結構苦労させられることになったが、
それでもお湯のシャワーはありがたい。冷水のシャワーというのは、慣れない
せいもあって、どうもいけない。
 各自、割り当てられたテントで荷物を整理してから、一通り自己紹介の時間
になる。50人近い参加者全員の名前はとても覚えられないが、適当に名前を覚
える努力をしてみたりはした。どっちみち、名前は必要なら覚えてしまうもの
だし、必要がなければ忘れても困らない。
 自己紹介の後は夕食の時間。カフェテリア方式というのか、いくつかの料理
を適当に自分で皿に盛って食べる。ザルにバナナの葉を敷いたアジア風の使い
捨て皿だ。料理は日替わりでいろんな種類が出る。なかなか旨い。
 生野菜も並んでいる。インドネシアで生モノは危ないかなあと思いながらも、
イザとなれば正露丸があるさとばかりにとりあえず食してみることにした。
 しかし、やっぱり生野菜はよくなかったようだ。翌日、腹具合が何となくお
かしくなり、結局2日目ぐらいに正露丸を飲むことになり、その後は生野菜を
避けるようにした。ちなみにその後、腹の具合が悪くなる人が続出。最終日に
なるころには、主催者側から腹薬を大量配布することになった。

●テントの上映会

 夜はテントで簡単な上映会が開かれる。それぞれが持ち寄った10分程度のビ
デオを上映するのだが、なかなかおもしろい。上映後は、制作者からの解説と
質疑応答がある。
 独立ビデオ作家の作品の中には実験的な作品もあり、また、NGOの作品の中
には衝撃的なドキュメンタリーもある。私は何も持っていかなかったのでちょっ
と悔しい。日本にもおもしろいビデオはたくさんあるのに。
 上映された数十本のビデオはとても紹介しきれないが、ひとつ印象に残った
のがビルマの難民が置かれている状況を紹介するビデオ。ビルマ難民支援の
NGOが作ったものだが、話だけで理解していたビルマの問題をリアルな映像で
知ることができる。何十年も前からアジアの一角で行われている凄惨な人権問
題は、なぜか日本ではあまり知られてこなかった。先日、日本人ジャーナリス
トが殺されたときに、彼が倒れる瞬間の映像が放送されて反響を呼んだが、こ
うした難民の映像をインターネットで公開することで、その問題の大きさをダ
イレクトに伝えることができる。残念ながら日本語版はないという。ぜひ日本
語版を作って見てもらいたい映像だ。
 ところでこのようなビデオは、映像を撮るだけでも命懸けである。難民と一
緒にいれば、いつ銃弾が飛んでくるかわからない。もちろん、せっかく撮影し
た映像も、いつ当局に奪われるかもしれない。
 抑圧下の社会におけるビデオ制作というセッションもあり、そこでは厳しい
監視の目を避けて目の前で起きている事実を伝えようとするビデオ制作者の生
の声も聞くことができた。

●活動の紹介

 火曜日の主なメニューは、参加者の活動についての紹介。何しろ参加者数は
50人近いので、各自5分ずつという短い時間で次々と簡単な紹介を続ける。
 メディア関連のサイトの運営者、ドキュメンタリー作家、ビデオ・アーチス
ト、メディア関連のソフトウェア開発者、独立ジャーナリスト、ビデオを使っ
た広報活動をしているNGOなど、参加者の顔触れは多彩だ。
 参加者の平均年齢は30代だろうか。25歳ぐらいの若い学生から40歳程度の年
期が入った活動家もいる。私は日本の社会運動の中では決して年寄りではない
と思っているが、ここでは最年長だったのではないかと思う。もちろん、程度
の差はあっても全員が何らかの社会運動にかかわっているのだが、労働運動と
いう分野からの参加はレイバーネット日本だけだ。
 5分間という短い時間でレイバーネットのすべてを語ることはさすがにでき
ないが、とりあえず持参したノートパソコンを使ってレイバーネット日本、レ
イバーネット・アジア、そしてもちろん、ユニオンチューブなどを見せて活動
を紹介した。
 活動の紹介が終わると、あちこちでそれぞれの活動について個別の対話が始
まる。紹介の時間で話せなかったことは、個別に話をすればいい。レイバーネッ
トについても、日本の労働運動について、労働組合と政治、活動の内容などを
聞いてくる人もいる。「自分もユニオンチューブに映像を投稿できるのか」と
いう質問もあった。
 そして、個別にそれぞれの国での労働運動に関する話を聞くこともできた。
たとえば、シンガポールでは労働組合がいっさい許されていないとか、オース
トラリアの労働党の話といったように、いつもの労働運動の活動家から聞く話
とはまたひと味違った視点から、さまざまな話ができる。
 概して労働運動というジャンルの活動は、どこの国でも調子が良くないよう
だ。先進国では御用化し、途上国では弾圧されてまともな活動ができない。
しかし、労働運動が本来の力を十分に発揮できない状況だからこそ、インター
ネットやビデオなどを使って、きちんとした労働運動を伝え、広げていくこと
が必要なのではないかと思う。

●ジャングルの中のコンピュータとインターネット

 会場のキャンプ場は、もちろんインターネットなどは存在しない世界だが、
さすがにインターネット関連の活動についての集まりなので、1つのテントに6
台のパソコンとインターネットが用意されている。
 主催者が設置したパソコンはすべてUbuntu(Linux)というフリーのオペレー
ティング・システムで動いている。参加者が持参したパソコンも、多くは
Ubuntuだ。ちなみに、私が持っていったノートパソコンもUbuntu。日本ではあ
まり見掛けないオペレーティング・システムだが、使っている人は使っている
のである。
 朝、全員が集まってミーティングをするとき、誰かがWindowsの起動音を鳴
らしてしまって、みんなから「No Windows!」だの「Don't make Windows'
startup noise」だのと言われ、彼はすっかり恐縮していた。ちなみに、
Ubuntu以外のオペレーティング・システムとしては、Mac OS Xが多い。ビデオ
の編集はFinal Cutを使っている人が多いようだ。
 最近の「もうひとつの世界は可能だ」系の集まりでは、マイクロソフトを忌
避する傾向が強い。自由に情報を共有しようという人々の集まりで、情報の排
他的な独占を主張する企業の製品が嫌われるのは当然と言えば当然。ポリティ
カル・コレクトネスってやつもあるのだろうが、近頃はフリーソフトウェアが
充実し、わざわざWindowsを使う理由がなくなったということも理由のひとつ
だろう。参加者の多くがある程度の技術的な知識を持っているということもあ
るが、それでもUbuntuとMac OS Xの集団というのは、日本ではなかなか見られ
ない光景である。フリーソフトウェア使いとしては心が和む環境である。
 ところでインターネットは、この集まりのための仮設回線で、無線を使って
いた。スピードは64Kbpsぐらいだろうか。それを数十人が使うのだから遅い。
ちょっとメールを読むにも、5分間ぐらいはかかる。そして時々、回線が落ちる。
いや回線だけでなく、電源も落ちる。1本の電源からテーブルタップで何十本も
に分割するのだから、まあ、仕方がない。電源が落ちるとテントの中が暗くなっ
て、あちこちから「あああ」という声が上がる。そんなもんだと思うしかない。
何と言ってもジャングルの中のテントなのだから。

●セッション
 水曜日からは、さまざまなテーマについてのセッションが始まった。セッショ
ンは主に3つのテントで行われたが、小さなセッションは屋外のテーブルを囲
んで行うこともあった。
 セッションの内容は、専門的な技術に関するものから社会運動に関するもの
までさまざまだ。技術に詳しい参加者は10人程度。彼らが各種の技術に関する
紹介のセッションを行ったり、あるいは技術系の参加者だけで突っ込んだ話を
するセッションもあった。
 一度に複数のセッションが進行するので、すべてに参加することはできない。
もちろん、自分がセッションを担当していれば、他のセッションに参加できな
い。いろいろ興味のあるセッションがあったのだが残念だ。そういう場合は、
食事の時間や夜の時間に、発表者を捕まえて話を聞くことになる。
 私は、G8 Mediaについてのセッションと、労働運動とメディアのセッション、
そしてフリーソフトウェアのKinoを使ったビデオ編集の3つのセッションを担
当することになった。
 G8 Mediaのセッションでは、G8 Media Networkの活動や、メディアセンター
に関する現在の状況の説明、日本の状況などを説明した。質疑の時間では、む
しろ「いつ何をやるのか」、「戦略は何か」など行動に関する質問が多かった。
 労働運動のセッションでは、韓国の労働ネットと日本のレイバーネット日本
が共同でセッションを進行した。ところが、セッションが始まる時間になって
も誰も来る気配がない。韓国のグループも私も、それぞれ互いの状況はよく知っ
ているので、「誰も来なかったらこのセッションは流して、他のセッションを
聞きにいこう」などと話していたら、台湾の苦労網からの参加者と、つい1か
月前まで日本にいたフィリピンのジョンがセッションを聞きに来てしまった。
 少人数とは言え、参加者は参加者なので、「じゃ、日本、韓国、台湾のそれ
ぞれの労働運動の状況を30分ぐらいで簡単に話して、別のセッションに行こう」
ということになったのだが、実際に話し始めるとつい熱が入って、とても30分
では足りない。結局1時間45分のセッションは最後まで日本、韓国、台湾の労
働運動とメディア活動家の話で盛り上がってしまった。
 特に話題になったのは、若年層の不安定労働に関する話題で、既存の労働組
合に対する批判や、新しい労働運動の流れ、メディアを使った組織化などだ。
 ちんたらと始まった労働セッションの最後は「G8の期間中に国際プレカリアー
ト映画祭をやろう」という極めて生産的な話で終わることになった。
 私が担当した3つ目のセッションは、オープンソースのフリーソフトを使っ
たビデオ編集。フリーソフトにも、いくつかノンリニア・ビデオ編集ソフトが
あるのだが、機能が少なかったり不安定だったりと、フィルムメーカーにとっ
ては決してフリーソフトのビデオ編集環境はいいとは言えない。これだけ多く
のフリーソフト使いがいるのに、実際にフリーソフトのビデオ編集ソフトを使っ
ているのは私一人しかいない。結局、つたない英語でKinoというフリーのビデ
オ編集ソフトの使い方を説明することになってしまった。
 この他のセッションについては、以下、簡単にテーマだけを記しておく。

水曜日
Walkthrough for Users - Comparison of Different Video CMS Projects
Ripping Video from Any Source to Your Machine

Online Organising and Communications Tools
Video Compression Using FOSS
Drupal for Video

Practical How-To Use Creative Commons for Videomakers
How to install and setup Plone for Video (Plumi)
Videomaking for Online

Online/Offline video
Introduction to GNU/Linux
Sharing Stories in Indigenous Communities

木曜日
Community Based Video
Create your own video community site with Plone4Artists
A Case Study of a video poscast station

Copyright/Copyleft - IP alternatives in the Asia-Pacific
Introduction to Joomla CMS
Tech Discussion - Using Open Source Video Codecs / Ogg Theora for Online Video

金曜日
The Indonesian Scene - Video Art/Activism and Distribution
Intro to WordPress for Video
Machinima and Games
G8 Media Coverage

Intro to Kino/Creating stills, animations and composing videos with Blender
Tech Discussion for Subtitling and Annotations
Online News Portals and Blogs
Cross Border Collaboration - Video Activists in AP Unite!

Transmission Metadata Standard intro and discussion
Video Production and Distribution In Labor Movements
Mobile Activism

Video Making and Distribution nder Repressive Regimes
Pad.ma
Show in a Box Hackathon
Pirate Radio

土曜日
Festivals Session
Plone-based Video Sharing Sites Hack Session
TX Custom Miro Player Hack Sessions
Indymedia Session

Live Video Streaming
Hack Session on TX.CC
G8 Info Session
Festivals Video-Sharing Hack Discussion

 セッションの間は休憩時間だ。コーヒーを飲み、スナックをつまみながら、
前のセッションで話しきれなかった話をする。
 コーヒーはもちろんジャワ・コーヒー。フィルターなどという野暮なものは
使わない。細かく挽いた粉を湯にいれてかきまわし、たっぷりのクリームと砂
糖を入れて、粉が沈むのを待って飲む。
 おやつに出されるスナックは、沖縄の島唐辛子に似た小さな青唐辛子を添え
た春巻きのようなものや、茹でたバナナ、キャッサバのチップス、タロ芋のフ
ライ、小さなモンキーバナナなど、いかにも熱帯のスナックといったものが出
る。しかもこれが実に旨い。気候や環境に合っているのかもしれない。
 ちなみにバナナはもちろん地元のもの。東京で食べるバナナと違って味が濃
くて旨い。今では日本でもバナナは珍しくないが、こんなに旨いバナナはなか
なかない。
 ところでインドネシアはスモーカーの天国。ノン・スモーカーには地獄かも
しれない。タバコは安いし、いたるところでモクモク煙が上がる。空港の中は
一応、スモークフリーのはずだけど、イミグレーションの隅っこで平気でタバ
コを吸ってるやつがいて驚いた。
 Transmissionのセッションの間もテントの端のあたりでみんなスパスパモク
モク。「2か月前にタバコをやめた」と言っていたドンウォンまで「やめたん
だけどなあ」とか言いながらモクモク。

●フリータイム

 木曜日の午後はフリータイム。近くの滝や湖に行くコースと、村に行くコー
ス、町に行くコースがあったが、町のコースは参加者未達でキャンセルに。
 私は麓の村を訪ねるコースに参加した。
 キャンプを出て1時間ほど山道を下る。途中、バナナの畑を通る。バナナ農
家の庭先には、パパイヤの木やココナツの木が植わっている。
 人口100人ほどの山間の小さな村につくと、不意に現れた外国人の集団が珍
しいのだろう、みんなが集まってきて遠巻きに眺めている。
 子供達は勇敢だ。怖いもの見たさ、なのだろうか、数人が近寄ってくる。デ
ジカメで写真を撮って、今撮った映像を見せると面白がって身ぶりで自分も撮っ
てくれ、という。あっというまに子供達に取り囲まれてしまった。とにかく子
供が多い。老人たちは、家の中から外国人の一群を見ている。
 村の中心にはイスラムのモスクがある。男たちが礼拝をしている。女は入れ
ないという。モスクの隣は集会所のような場所で、10歳〜12歳ぐらいの女の子
達が伝統武芸の練習をしていた。
 インドネシアのスタッフが、村の人と話をして家の中を見せてもらうことが
できた。臼で稲穂から米を搗いて、玄米にする様子を見せてもらったり、町に
売りに行く竹細工の籠を女たちが編む様子などを見せてもらった。彼女たちは、
15歳ぐらいで結婚をするという。
 東京の暮らしとは異次元の世界には、2時間ほど滞在しただろうか。何だか、
そのまま居着いてしまいたくなるような素朴な暮らしである。決して楽な暮ら
しではないだろうし、あるいは良いことよりも悪いことの方が多いのかもしれ
ない。
 インドネシアの村の暮らしを一瞬かすめただけではあるが、何百年もほとん
ど変わることなく続いてきたであろう村の暮らしを見て、日々の労働や暮らし
のことを考える。
 この村にも、素朴な幸福や楽しみがある。日々を生きる労働がある。貧しい
暮らしかもしれないけれど、都会の非人間的な貧しさとは質が違う貧しさだ。
屈託のない村の子供達の笑い声が耳に残って離れない。

●感想

 最終日は、まとめのセッションとパーティがあった。
 午前中は自分が担当したセッション全体のまとめと成果の報告、そして午後
には参加者全員が一言ずつ今回の会議についての感想を話した。
 そして夜は最後のパーティ。臨時のテントが張られてステージが設けられ、
バンドが演奏し、おいしい料理が並ぶ。ビールやウイスキーも並ぶ。たき火を
囲み、ビールを片手に、みんなは最後の夜を楽しんだ。夜が更けてくると、ダ
ンスやカラオケが始まる。
 有益だったとか貴重だったという月並みな文句を並べるつもりはない。しか
し、私個人としては、無理して来ただけのことはあったと思う。技術面ではこ
れといった特別な収穫はなかったが、そのことは逆に私がこれまでレイバーネッ
ト日本、ユニオンチューブ、そしてG8 MediaNetworkなどで実現してきたサイ
ト構築の方向性が間違っていないことを確認させてくれるものだった。特に日
本では、ZopeやPlone、Drupalといったサイト構築ツールは決して主流とは言
えず、ビデオ共有の世界はWindows一辺倒という状況だが、そんな日本の状況
は決して世界の常識ではない。
 特に今度のG8をきっかけに、日本の社会運動、メディア運動も、国際的な視
野が求められるようになる。そんな中で、アジア太平洋地域の独立メディア活
動の今を肌で感じることができたのは大きな収穫だったと思う。
 今回の経験を、レイバーネット日本やG8MediaNetworkなどのサイト構築に生
かしていきたいものだと思う。


Created by staff01. Last modified on 2008-05-28 17:49:28 Copyright: Default

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