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貧困問題はどこでおこっているのか?〜下請法を守らない出版社
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最近、ワーキングプアの問題や格差・貧困の問題を取り上げている本が多く出版されいている。各問題が取り上げられ、これまでそうした事を知らなかった人たちに知ってもらうことは、いい事かもしれない。

しかし、出版で働くワーキングプアのフリーランス労働者としてどうしても知ってもらいたいこともある。本を制作するには、ライターやデザイナー、編集者、イラストレーターなど多くのフリーランス労働者が関わっている。その多くは年収200万〜300万円で働く職人的なフリーランス労働者だ。

出版業界では、私たち下請事業者=フリーランスを守る下請法という法律がほとんど守られていない。

下請法では
・契約書を交わす
・支払いは納品して60日以内
・遅延利息の支払い義務
などがある。

まず、契約書はほとんど交わされることはない。また、原稿料の支払いは、ほとんど出版社は本が出版されてから請求書を書かせ、そこから月末締めの翌々月の月始め払いというが多い。

自分の原稿を納期通りに納めても、その後で何らかの理由で出版が遅れて支払いが納品から4か月後、5か月後というのもよくある。1万円以下の原稿料でも例外ではない。遅延利息なんて夢のまた夢である。出版社の編集者と交渉をしても、「うちは本ができてから原稿料が確定するので」「会社のシステムが決まっているので」と言われ違法状態の支払いシステムを押し付けられる。

 先にも書いたように、年収が200〜300万円のフリーランスでは、生活するのがやっとでなかなか貯金はできない。支払いが4か月、5か月後では、一度仕事が途切れたら、家賃や光熱費が払えないという状況にすぐに追い込まれてしまう。大抵のフリーは自宅兼仕事場としているので、家賃が払えないことがどういうことになるか想像してほしい。

また、仕事が途切れないように、安い料金でも、支払いサイトが遅くても、「ないよりはマシ」と受けてしまう場合も多く、出版社と交渉して仕事が切られることがないように、泣き寝入りする場合も多い。もともと出版産業では、フリーの料金が安く、最近は更に安くなってきている。安いだけならまだしも、支払いが何か月も先になるという点では、日雇い労働者よりも低い労働条件で働いていると言えるのではないか。私たちフリーランス労働者はそれぞれ技術を売りに仕事をしているが、何十年経験を積んだ人でも、ここ何十年も原稿料が上がっていない。 

こうしたフリーランスの状況に目を背けて、出版社は貧困問題の本を出していることを知ってもらいたい。労働問題として取り上げている出版社も例外なく、みんな下請法を守っていない。貧困の問題は他人事ではなく、自分の足元、自分の仕事相手にもおこっているかもしれないことに気付いてほしい。

また、こうした下請の問題は出版産業だけでなく、新聞、放送でも多いと聞く。産業全体の問題としてそこで働く労働者が改善する運動をしていかなければならない。

私には、ワーキングプアが何重にも食い物にされているような気がしてならない。

(A.H/出版労働者)

●資料 日本書籍出版協会 出版社における改正下請法の取扱いについて[PDF]
http://www.jbpa.or.jp/sitaukehou.pdf

Created by staff01. Last modified on 2007-09-25 01:37:45 Copyright: Default

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