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LNJ Logo 土佐くろしお鉄道宿毛駅事故調査報告〜他人事の国交省に怒り
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特急たから@福島です。

2005年3月に発生した土佐くろしお鉄道宿毛駅事故について、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会(事故調)の報告書が7月27日に発表されたようです。

http://araic.assistmicro.co.jp/araic/railway/report/RA07-4-1.pdf(報告書)

事故発生から報告書の発表までに2年半かかったわけですが、事故調が、この直後に起きた尼崎事故の調査を優先させたためであり、やむを得ないと考えます。

土佐くろしお鉄道は、旧国鉄中村線(窪川〜中村間)を転換して発足した第三セクター鉄道で、その後、土佐くろしお鉄道が独自に中村〜宿毛間を延長開業させて今日の姿になりました。
事故が起きた宿毛駅は、この延長開業区間の終着駅で、本来なら徐行運転で駅に入らなければならないところ、100km近い猛スピードで駅にさしかかったため、ATSによる減速が間に合わず、特急列車が駅舎に突っ込んで大破。運転士が死亡しました。

改めて車両の損傷状況を見ると、乗客に死者が出なかったことは奇跡に近いですが、これは、事故列車である特急「南風」号の宿毛方先頭車が特別料金を必要とするグリーン車だったため、ほとんど乗客がいなかった結果であると推測できます。
もし、仮に編成が逆向きで、大勢の乗客が乗っている自由席車を先頭に突っ込んでいたら、恐ろしい結果になっていたことでしょう。

この事故では、終着駅であることがわかっているにもかかわらず、どうして運転士が駅の直前まで100km近い高速で運転を続けたかがひとつの焦点になっていますが、報告書は、運転士が駅付近で減速しなかった原因について、外部要因、薬毒物、アルコール、睡眠時無呼吸症候群などいくつかの可能性を指摘しながら「それが何によるものであるか明らかにすることができなかった」としています。

運転士に何らかの異常が起きていたとしても、速度照査型ATSなどの安全装置があればヒューマンエラーを補うことができますが、この路線は、信号無視だけに対応している旧型ATSの国鉄線を引き継いだものであるため、そうした安全装置はありませんでした。
報告書も、「この自動列車停止装置による非常ブレーキの作動による減速では間に合わなかったことについては、高速度で列車が走行するにもかかわらず、接近する列車の速度について設計上の想定速度以下とする担保手段を講じないまま、自動列車停止装置の設計等が行われたことによるものと考えられる」として、そのことを認めています。

その上で報告書は「所見」として、「高速度で列車が走行する線区の終端駅の場内信号機の信号現示に対応する制限速度に応じた自動列車停止装置や、線路終端防護用の自動列車停止装置については、接近する列車の速度を設計上の想定速度以下とする担保手段を講じ、機能向上を図ることが必要である」と、もっともらしいことを述べるのです。

しかし、尼崎事故の報告書の際も私は指摘しましたが、大手私鉄に速度照査型ATSを義務づけていた1967年の通達を、国鉄分割民営化時に廃止したのは、他ならぬ政府です。
JRが「私鉄」になれば通達が適用されるはずのところ、政府は通達を廃止して速度照査型ATSが整備されないままになっているJRを放置したのです。

宿毛駅でこの事故が起きたのは、尼崎事故の約2ヶ月前。
このとき政府がきちんと対処していれば、尼崎事故は起きなかったかもしれません。

安全のためのATS整備をしなかったJRを放置し、大事故が起きてから過去の自分たちの行いを忘れたように「速照ATS整備を」などと涼しい顔でのたまう政府に、私は激しい怒りを覚えます。
尼崎事故の報告書でも、国の責任が追及されなかったことに不満を感じていますが、私の怒りはむしろ、この事故の報告書のほうが何倍も激しく、深いものとなっています。

無責任な運輸省〜国土交通省官僚たちは、よくもこんなふざけた報告書を書けるものだと思います。
この報告書を、尼崎事故遺族の前で読んでみろ!

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