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「蟹工船」は昔話ではなかった
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マンガ「蟹工船」を読んで

雑誌の広告で、小林多喜二の「蟹工船」が
マンガになっていることを知った。
「30分で読める・・・大学生のための」と
見出しが付いていたので、
30代の僕には、ちょっと抵抗感があったが
600円という手頃な価格もあり
先日、入手した。
そして一気に読んだ。
繰り返し読んだ。

プロレタリア文学の名作と言われてる「蟹工船」。
僕は大学生の頃に、読んだ記憶がある。
でも、当時の僕には
正直、ほとんど読みこなせなかった。
印象は薄いままだった。
舞台となる「蟹工船」自体、どのような船なのか
想像してもよく判らなかったし
労働者が虐げられたり、警察に弾圧されたりするのは
「昔の話だろう」なんて思っていた。

ただ、現在は違う。
非正規職の不安定な労働者が貧困に苦しみ(僕もその一人デス!)
権力による弾圧が、まかり通っている。
かつては昔話だった「蟹工船」が
現在進行中の話になってしまったのだ。
強烈なリアリティを読むたびに感じる。

「蟹工船」という舞台が、どこかの偽装請負の労働現場や
労働組合すら存在しない職場に、すりかわってしまっただけだ。
今、読まれるべき物語になってしまった「蟹工船」。
脚光を浴びることが、良いのか悪いのか
複雑な思いも残った。

マンガの中では、
この小説を書いて権力に虐殺された
著者・小林多喜二の遺体を囲む仲間や身内も登場する。
メッセージが色濃く出ていて、心震えた。

堂々と虐殺されないうちに、
やるべきことは沢山あるような気がした。

土屋トカチ

Created by staff01. Last modified on 2007-04-12 22:24:36 Copyright: Default

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