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LNJ Logo 移住労働者はいま:多民族多文化共生社会へのユニオンアプローチ(レイバーネット例会ダイジェスト)
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(写真はすべて例会で報告された画像。上から、移住労働者の職場風景、彼女たちの給与明細、彼女たちの社宅、日本のゼノフォビア=嫌外国人キャンペーン例)

  

<報告:鳥井一平さん(全統一労働組合書記長)>

■ 外国人登録者数が200万人を超え(2005年)、日本も多民族社会になりつつある。

■ 移住(外国人)労働者は、Old Commer(在日子孫)と New Commer(1980年代以降増えてきた人々)に区分できる。現在日本の賃金労働者数は5355万人で、うち在日コリアン47万人、New Commer の移住労働者が89万人である。

■ 移住労働者は法的には、就労資格あり、日系、資格外(オーバーステイ)、技能実習生、その他労基法対象外とされている労働者(研修生・家事・エンターテイナーなど)に分類される。

■ 移住労働者が増えてきたが、彼らの権利が侵害されていることは見えなくされてきた。

■ 労働基準法第三条には、国籍や社会的身分を理由とした差別的処遇の禁止が明記されている。移住労働者も差別的処遇を受けてはならない。

■ 1993年3月に全統一・全国一般東京南部・神奈川シティユニオン・その他の団体が集まり「生活と権利のための外国人労働者一日行動」を始めた。対企業申し入れ、厚生労働省交渉、対東京都要請など、150人の移住労働者が参加した。

■ インド・パキスタン・イラン・バングラデシュ・ラテンアメリカ・フィリピン出身の移住労働者からの労働相談内容は、解雇・賃金未払・労災補償をめぐるトラブルが多い。それに対してアメリカ・カナダ・イギリス・オーストラリアなど出身の移住労働者の相談内容の多くは労働条件をめぐるもの。

■ 2001年以降、経済界(日本経団連)や政府(経済産業省・厚生労働省・外務省)がようやく移住労働者の労働問題に関する報告書や答申を出す。

■ 他方で外国人・移住労働者に対するネガティブな偏見をプロパガンダするキャンペーン(Xenophobia campaigns)も増えている。入国管理局のホームページには「不法就労外国人」の通報サイトがあり、抗議を受けて削除する前は通報動機の欄に「不安を感じる」などという表記もあった。

■ 一般に誤解されていることだが、外国人犯罪は実は増えていない。そもそもオーバーステイの移住労働者の摘発を強化したりすれば検挙数は数字の上で簡単に増えてしまうというトリックがある。

■ しかし単純に排除ではない。労働力不足対策の必要を企業も政府も考えている。問題は受け入れた移住労働者を「モノ扱い」していること。

■ とりわけ外国人研修生・実習生の労働現場の実態はひどい。オーバーステイが数字上減っている分が、この「なんちゃって研修生」(実は安く使われている労働者)として増えている。特に増えているのが中国の地方出身の女性であり、衣服・食料産業などで使われている。

■ 例えば岐阜県の中小企業で働く「外国人研修生」の例では、基本給約5万円や時給300円というものがあった。寮には暖房がなく冬は彼女たちは室内でもダウンコートを着ている。別の事例では、一ヶ月31日労働(つまり休みなし)で残業も多い。そして無保険。

■ 時給300円で使える人たちということになれば、そこに自然と蔑みの意識が芽生える。国に帰れば家が建つのだからいいじゃないかという社長もいるが、そうした差別・格差・モノ扱いの蔓延は日本社会を蝕んでいく。

 

<移住労働者の声>

■ パキスタン出身のAさん:労災で首と手を痛めた。ユニオンに入る前は上司にハイハイと頭を下げるしかなかったが、労災でユニオンに相談、ユニオンに入って法律のことなどいろいろ分かってきた。それで強くなれた。待遇は改善されたが経営者から、君は特別にするから他の労働者には言わないでくれ、と言われた。人から聞いた話だけど、拘置所で豚が出され、宗教上の理由で食べられないと言ったら、「てめえの家じゃないんだ」と罵倒された。

■ セネガル出身のMさん:日本に来てアルミ缶処理の現場仕事をしていた弟が労災で死亡した。危険性が指摘されていたのに経営者は何も改善しなかった。その補償をめぐりユニオンを知った。また、警察の人に道で職務質問され、IDを提示したのに「見えない」と言われ、家の前にパトカーを駐車され、周りの人たち(隣人)から注目され、いじめだと思った。

 

<質疑応答より>

■ どんな会社が使っているのか?

地方の斜陽産業、中小零細が多い。これは産業構造の変化の問題であるとともに、構造改革といって地方を切り捨ててきたことと無関係ではない。中小零細の社長たちの言い分に一理あるとすれば、そういう部門が移住労働者を使うことを実質的に強いられているということだ。

■ 大企業は無関係か?

移住労働者を用いている会社はたいてい中央会・協同組合・商工会などと連携している。例えば給与の一部を協同組合に強制貯金させるなど。こういうところへ県の指導をさせる必要がある。また大手メーカーは最終商品を販売していることから無関係ではない。そもそも大手の企業が発注するときに、時給300円雇用を強いるようなコストで契約内容を決めていることが大きな原因。

■ 日本の労働運動にとって移住労働者はどんな意味をもつか?

日本の労働運動はずっと外国人の存在を前提としない労働運動だった。しかし春闘などを見ても分かるように、移住労働者たちのパワーは労働運動の再生にとって重要な意味をもっている。帰国した労働者へのフォローを外国のNPOなどと連携してやっていくことも必要。移住者をモノとして使ったり排除しようとするのではなく、共に生きられるような社会を労働組合が示していく必要があるのではないか。

  

July 4, 2006

JNK


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