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フランス郊外の暴動について
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事務局の河添です。 世界社会フォーラム連絡会のメーリングリストから転載します。 パリ在住のコリン・コバヤシさんの投稿です。

kolin Kobayashi さんのコメントを転送します: コリン@グローバル・ウォッチです。

フランスの現在進行中のパリ郊外を中心とした騒乱については、次号 『世界』に報告をするつもりですが、この事件を単なる移民の暴徒化事 件と解釈してはならないでしょう。

20年以上にわたるフランス政府の移民に対する同化/統合政策の失敗が 構造的に重層した帰結で、起こるべきして起こったのです。郊外の若者 による騒動は1980年のリヨン郊外のヴォー・アン・ヴランでの騒 動をはじめとして、この間、完全に収まったことはありませんでした。 貧困による社会格差の拡大と差別は、都市、とりわけパリとリヨンにお いて、都市部に住むことを不可能とし、都市周辺部にゲットー化現象を 生み出しています。ゲットー化によって、移民の共同体はますます閉鎖 的になり、フランス社会から取り残され、学業の失敗、就労の大きな困 難、失業の慢性化、移民第一世代と二世、三世世代の断絶と家族崩壊、 またこうした共同体の自閉状態は、宗教的原理主義が浸透しやすい温床 も作り出しています。そしてアフリカの現状や中東における状況からの 影響も無視できません。こうした構造的な問題がいつでも爆発寸前の状 態を作り出していたからです。

また現保守政権は、こうした郊外の青少年を支援してきた様々な NPO活動への補助金を打ち切り、社会党政権が勧めてきた親しみやすい 現地駐在警察もすべて廃止してしまいました。そのうえ、シラク政権の 力によって押さえつけるという弾圧的な態度、とりわけニコラ・サルコ ジ内務大臣の郊外の若者を「社会のクズ」「箒で掃除すべきゴロツキ」 などという表現で差別したことは、火に油を注ぐ結果となっています。 今回の若者達の反抗も組織的な異議申し立てとしての行動としてまと まっているわけではなく、今回の暴力は非常に自然発生的な激しい怒り と連帯の印としての表現を取っています。そこに郊外問題の社会運動化 への困難があることは否定できません。しかし、その怒りの表現をス トップすることができないほど、若者達の現状は悪化していると観るべ きでしょう。

右派政治家や社会党系市長までが軍隊の出動を要請したり、自警団を組 織すると行った論調や、ドヴィルパン政権の発表した「夜間外出禁止 令」公布の権限を各知事に与えたり、1500名の予備警官を郊外に 送り組むと行った戦争の論理は社会的危機と差別感情をいっそう高める ことになるでしょうし、フランスと似たような移民対策しかしてこな かったヨーロッパ諸国にも波及する可能性は大いにあるでしょう。


Created by staff01. Last modified on 2005-11-09 11:24:04 Copyright: Default

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