| 民営化反対! 国際シンポジウムの報告 | |
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Tです。 7月14日、日本弁護士会館(502号会議室)であった「ノーモア尼崎事故・民営化を検証する国際シンポジウム」に参加してきましたので、RMT(英国鉄道海運労組)メンバーの発言を中心にレポートします。 まず、冒頭、国鉄闘争会議の星野良明・副議長が挨拶。「JR西日本が株主総会で黙祷を捧げた相手は106名であり、高見運転士は犠牲者のひとりに数えられなかった。人権のない鉄道に安全はない」とJR西日本を批判。続いて、株主・市民の会の桐生隆文さんが「JR西日本の安全諮問委員会には、JRの納入業者であるオムロンの社外取締役や、信楽高原鉄道事故の際『JR西日本に責任なし』の意見書を書いた曽根悟氏(工学院大学教授)らが入っている。これでは安全は保てない」と問題提起をしました。 曽根悟教授、私には「鉄道ジャーナル」などの鉄道専門誌でおなじみの人ですが、同時に技術論ばかりで自分の意見を述べない人、という印象もあります。 この後、いよいよメインであるRMT(英国鉄道海運労組)から発言がありました。内容は以下の通りです。 (英国鉄道海運労組委員長 トニー・ドナヘイさんの発言、要旨) 英国の鉄道民営化は日本よりずっと複雑な過程をたどっている。それはサッチャー(元首相)が準備し、反動的政治勢力が仕掛けたもので「公共サービスを資本の側に再び取り戻す」という彼らの意思の表れである。 英国では、全国の鉄道網が旅客列車運行26社、貨物運行4社の計30社に分割され、これ以外にも線路リース会社、保線会社、信号管理会社など様々な民間会社に分けられた。「独占はよくないこと」であり、「利益を上げるやり方」が採用されなければならないというのがサッチャーの言い分だったが、このやり方で得をしたのは安全にも労働者にも無関心な大株主のみであり、働く者はみんな損をした。「組合も企業もひとつ」だったのがバラバラになり、全国規模での交渉はできなくなった。組合は弱体化し、民主主義・人権が後退し、労働者はストレスにさらされるようになった。組合が守らないため、労働者の疲れが即、安全に影響を与えるようになった。会社は事故が起こると責任者を「つくりあげ」、口先だけの謝罪が繰り返された。 私たちRMTは、民営化が安全を犠牲にしていると結論づけた。世論調査では英国国民の75%が鉄道の再国有化に賛成している。それは世界全体にとっても大きな問題である。英国政府は「鉄道の再国有化は金がかかる。政府には現在それだけの金がない」と言い訳しているが、金の問題なら解決は簡単である。英国政府がイラクでの戦争をやめればよいのだ。 (執行委員 デイビッド・コリンソンさんの発言、要旨) 英国の2002年の事故は、手抜き保線のためボルトの緩みが直されなかったことが原因だった。あまりにもたくさんの会社に分割されたため、この責任が誰にあるのかさえ絞り込めないという状態になっている。英国では線路の点検で5カ所の亀裂が発見されたら点検作業をやめてしまう(!) 2004年には、労働党大会で「鉄道の再国有化が必要」であるとの決議が採択されたが、ブレア首相は自分の所属する党の決議なのにグローバリゼーションの立場から無視し続けている。その一方で先日起きた同時テロに関しては「テロリストを必ず裁きにかける。そのためならいくら費用をかけたとしても惜しくない」と述べている。テロリストを裁くためにかける金はいくらでもあるのに、鉄道再国有化のためにかける金がないというのはおかしなことだ。 以上がRMTのお2人の発言要旨です。 2人の発言を聞いての感想ですが、イギリスの分割のやり方は日本よりもずっとばかげたやり方です。かつて新幹線の開発に携わった島秀雄氏(元国鉄技師長)は「鉄道はシステムで動くもの。このように走らせたいという目的がまずあり、そのために線路やトンネルや軌道や信号と言ったシステムを一体として構築していくものである」という趣旨の発言をしていました。それを、システムの中をつまみ食いするように信号の維持だけ、線路の維持だけ別会社にするなんて、鉄道というシステムそのものを否定する乱暴なやり方だと思います。分割・民営を仕掛けた権力者の側が、こうした鉄道の「システム性」を理解していないか、していても利益の前にはどうでもいいと思っているかのどちらかでしょう。 「会社は事故が起こると責任者をつくりあげ、口先だけの謝罪が繰り返された」のくだりは、まるで日本のどこかの鉄道会社を見ているかのようです。「英国では線路の点検で5カ所の亀裂が発見されたら点検作業をやめてしまう」というのは驚きを通り越し、もはや喜劇的な悲劇と言うべきでしょう。5カ所の線路の亀裂が見つかったとき、本来であれば列車を止めなければならないのですが、それが点検作業を止めてしまうとは! 儲け第一主義が行き着くところまで行き着いてしまった結果としてのこの倒錯! サッチャーの「独占はよくないこと」だから民営化するというのも噴飯ものです。もともと世界の鉄道は民営として始まり、それが各国で国有化されていったわけですが、民営で始まった鉄道の国有化(つまりは独占化)にかつて最も熱心だったのが日本では陸軍であり、ドイツでは社会主義者鎮圧法を作ったビスマルクだったことは指摘しておいてもよいかもしれません。 帝国主義も昔のリメイクではなく、新たな衣装をまとって現れてきているということかもしれませんが、そのさきがけが「サッチャリズム」であったことは間違いありません。そういえば、英国でサッチャリズムが猛威をふるっていた1980年代後半に、民営化を皮肉るこんな歌がヒットしたことを思い出しました。 Our gain is your loss 僕らの儲けは君の損 今の日本の状況はまさにグローバリズムの「1周遅れのトップランナー」というところでしょうか。 「サッチャリズム」本家の英国で、民営化の無残な失敗が明らかになった今こそ、日本も「民でできないことは社会的共同で」をスローガンに、事故の再発防止と1047名のJR復帰目指して闘いを続けなければならないと強く感じたシンポジウムでした。 いっそのこと、JR復帰なんてケチなことを言わないで、この際ですから目標は高く「再建された国鉄復帰」にしましょうか。 Created byStaff. Created on 2005-07-18 21:54:57 / Last modified on 2006-05-16 17:44:10 Copyright: Default | |