渡辺治記念講演『リストラ・構造改革と新しい労働運動』の報告
2002年2月23日レイバーネット日本第二回総会の後に行われた記念講演(レイバーネット主催)には、60人ほどが集まり、その半分以上が非会員であった。企業社会論と現代帝国主義論を発展させた渡辺治氏(一橋大学政治学)の分析が、経済グローバル化や小泉政権論といった近年の論点を取り入れて全面展開された。
渡辺氏は、日本企業のグローバル化が、企業のリストラ・不安定雇用化、そして新自由主
義的構造改革と軍事大国化の背景にあることを示し、日本的経営に基づく企業社会と自民
党利益政治という古い体制が右から改革されてきたという。軍事大国化・構造改革・そし
て企業リストラの歴史を整理した上で、9・11事件と民主党の新自由主義への純化によっ
て小泉政権はこれらを一機に進めるチャンスを得たこと、アメリカ型の上層市民優遇方策
とネオ・ナショナリスト型の締め付け構想がせめぎ合いながら新しい社会統合(労働者支
配)体制がめざされていることが示され、人々の権利が十全に保障され軍事的・経済的侵
略を伴わない新しい福祉国家を対置したいとした。
最後に渡辺氏は、オルタナティヴ運動にとって政治への関与=政治革新が重要になる、あ
らゆる分野で「少数派」とされている真の多数派が分断を克服していく戦略が必要で、労
働運動はその要であると強調した。
以下は、レイバーネット日本第二回総会(2002年2月23日)の記念講演で、渡辺治氏が配布した講演レジュメである。
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渡辺治『リストラ・構造改革と労働運動の新たな課題〜グローバル化と日本社会のゆくえ〜』
はじめに 「小泉政権と構造改革・軍事大国化の新段階」
二つの改革の急進実行政権としての小泉政権
「聖域なき構造改革」と軍事大国化
新段階に入った構造改革と軍事大国化
企業リストラの新展開と社会統合の危機
1 「日本企業のグローバル化と二つの改革・企業リストラ」
(1)遅れた日本企業のグローバル化
日本経済の高度成長の秘密=企業社会
内弁慶だった日本企業=遅れたグローバル化
グローバル化の3つの帰結=軍事大国化・新自由主義改革・企業支配再編
(2)日本企業のグローバル化と軍事大国への衝動
アジア中心の進出
多国籍企業の安全と特権の擁護
軍事と経済のギャップ
(3)グローバル化と「構造改革」
(a)「構造改革」とは何か?=新自由主義改革の意味
資本に対する負担と規制の撤廃による競争力の回復政策
欧米の70年代不況の深刻化とその脱却のための新自由主義改革
サッチャー、レーガン政権の新自由主義改革と福祉の切り捨て
(b)長引く不況と「構造改革」論の台頭
日本では遅れた「構造改革」=日本経済の一人勝ち状態
グローバル化と企業競争力の低下
不況克服のための改革圧力
(c)日本の「構造改革」の特殊性
「構造改革」が敵にしたのは自民党政治と官僚制
イギリスでは福祉国家と労働組合・労働党が敵
(d)桎梏となった自民党利益誘導政治=二重の非効率
�ー�民党の政治はカネがかかる!公共事業や福祉バラマキ→財政赤字→税金高い→競争力の低下
�⊆�民党の政治は農業や自営業を温存する→物価高い→賃金高い
(4)グローバル化と既存企業支配の桎梏化
グローバル化と企業支配の桎梏化=企業競争力の低下
既存リストラの限界
日経連「新時代の日本的経営」の構想
2 軍事大国化の新しいかたちと新段階
(1)軍事大国化の3つの障害
憲法
平和運動と国民の平和意識=日本の平和運動の特殊性
アジア諸国の国民の警戒=「第二の侵略」
(2)軍事大国化と新路線=改憲隠し
�_�憲回避
�▲淵轡腑淵螢坤牘�し=国際貢献論
��自衛隊の単独出兵回避
(3)新ガイドライン体制の成立
国連から日米同盟へ
新ガイドライン体制
(4)軍事大国化の新段階と改憲の課題の浮上
(a)新ガイドライン体制の3つの限界とその克服策
�ー�衛隊の海外出動地域の限定=「日本周辺」
��後方支援の内容の限界・攻撃に対する応戦の限界
→集団的自衛権見直しへの意欲
��PKO派遣の限界=本体業務禁止・紛争当事国の同意・武器使用の限定
(b)米・日からの集団的自衛権見直し論の噴出
アーミテージレポートと財界・自民党国防部会報告
(c)集団的自衛権見直しと改憲
集団的自衛権見直しの4つの手法
二本立て戦略=国家安全保障基本法による集団的自衛権見直しと改憲
憲法改正への衝動とナショナリズムの涵養
3 「構造改革」の強行と困難
(1)二つの改革の本格的実行政権としての橋本内閣
日米安保共同宣言と新ガイドライン・沖縄基地再編
「六大改革」=構造改革の断行・財界の期待
(2)狭義の「構造改革」の2つの柱の強行
(a)資本の負担軽減政策
�〆眄�構造改革=法人税負担の軽減=財政支出の削減+消費税
歳出削減と法人税軽減・所得税累進制緩和・消費増税のセット
�⊆匆駟歉磴旅渋げ�革=医療・介護・保育
歳出削減の目玉としての社会保障構造改革
80年代社会保障削減と90年代の違い
社会保障支出全体の抑制=需要と供給体制のスリム化
cf. 医療・とくに老人医療の削減の方式
(b)資本に対する規制の撤廃=企業競争力の回復
�’清函�自営業など弱小産業に対する保護と規制の撤廃
弱小産業の切り捨て→国際分業による競争力回復
��金融の自由化や通信市場の自由化=既存業界の独占の打破と大企業の市場
��市民の働き方や健康が脅かされている=グローバルスタンダードのまやかし
�は�働の規制緩和の嵐
(3)構造改革の強行と新たな困難の露呈
(a)「構造改革」の断行と橋本政権の崩壊
98年参院選の惨敗と「癒し政権」の登場
(b)改革漸進路線に転換した小渕・森政権
財政出動を容認した財界
構造改革急進派と漸進派の対抗
「構造改革」急進派の台頭
4 企業リストラと既存企業社会の変貌
(1)社会統合の破綻と改革の土台の揺らぎ
ホームレス、中高年自殺者、ドメスティックバイオレンス、児童虐待、犯罪
ナショナル・アイデンティティの揺らぎと「改革」への隘路
(2)企業のグローバル化とリストラの崩す企業社会統合
グローバル化による雇用の縮小の日本的特殊性
多国籍企業による逆輸入と地場産業の苦戦
企業リストラのめざす既存企業支配の再編、非正規労働者の導入
(3)「構造改革」による自民党利益政治と企業社会統合破壊
構造改革による弱小産業、都市営業、農業の破綻
構造改革による労働力流動化と「野蛮な労働市場」の現出
→構造改革による階層格差社会の形成
5 小泉政権と「構造改革」の新段階
(1)小泉政権の登場と改革翼賛体制の成立
(a)橋本政権と比較した小泉政権の強さ
民主党の「構造改革」急進派への純化
「痛みを伴う改革」への国民的「合意」・改革を促すマスコミ
(b)参院選での改革翼賛体制の成立
(2)軍事大国化の新段階へ
(a)千載一遇のチャンスとしてのテロ事件と進路の修正
テロ対策特措法制定と自衛隊参戦
テロ対策特措法の限界と集団的自衛権見直し論の再浮上
(b)有事法制策動のねらい=二つの流れ
自衛隊参戦の国内体制完備
国家安全保障法論
(3)新たな段階に入った「構造改革」(資料)
(a)狭義「構造改革」の大攻勢
不良債権処理、医療・社会保障の構造改革、教育改革、消費税増税
(b)構造改革の重点移動
教育、大学改革
特殊法人改革の二つのねらい
(c)企業社会的統合の破綻に対処する構造改革
新たな社会統合構想の二つの類型
�/啓�由主義型統合構想=アメリカ型構想
上層市民中心の階層的社会統合方策=上層市民の権利と回路拡充
下層に対する「強い国家」
→情報公開、首相公選制、司法改革と憲法裁判所
→少年法改正、盗聴法、反テロ愛国者法の輸入
上層エリート市民層形成の課題と隘路
�▲優�・ナショナリズム型統合再建構想
社会秩序の締め上げ
教育改革の手直し=教育基本法改正論浮上、奉仕の義務化、道徳教育
むすびにかえて 労働運動の新しい課題
(1)21世紀日本社会をめぐる三つの道
旧来型自民党政治の道
「構造改革」と「普通の国」をめざす道
「第3の道」としての新しい福祉国家
(2)新しい福祉国家の構想
なぜ、どこが新しいのか?
(a)新しい福祉国家の構想
国連による大国の規制=核兵器の使用禁止・武器輸出の禁止・輸入規制
多国籍企業の規制=多国籍企業による進出先の国民経済破壊の停止
他国を侵略しない経済の再建=地域経済の再建と弱小産業の再生
(b)新しい福祉国家
弱者の人間らしい生活を重視した国家
弱小産業の生活できる内発的発展の道
(3)労働運動の新しい課題
※3つの改革の焦点となる労働者階級
�]�働運動による市場の規制
�⊃啓�由主義改革による階層化社会への抗議の要
�B膵餡修鉾紳个垢覬親阿亮惰�部隊
労働の政治の確立へ=新しい福祉国家形成の担い手
※労働運動の国際的連携の枢要な意義
多国籍企業規制と福祉国家連帯(EU)、途上国労働運動との連携
グローバル大国秩序とアメリカ覇権主義の規制
【渡辺治参考文献】
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Created on 2002-03-08 19:06:42 / Last modified on 2005-09-05 02:58:45 Copyright:
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