本文の先頭へ
3年までの有期労働契約の対象拡大に反対するアピール
Home 検索

 

2001年5月14日関係各位
有期雇用労働者権利ネットワーク 共同代表 宮里邦雄   事務局長 高須裕彦
連絡先 港区新橋5-17-7全国一般労働組合東京南部 TEL03-3434-0669 FAX03-3433-0334 e-mail

 3年までの有期労働契約の対象拡大に反対するアピール

 私たちは、有期契約で働く労働者、有期労働者を組織する労働組合・地域ユニオン、有期労働者問題を取り組む弁護士、研究者で構成するネットワークです。私たちは97年5月の結成以来、有期雇用労働者の権利確立へ向けて、現場での実践的な取り組み、研究活動、労働行政への要請など取り組んできました。98年の労働基準法改定の際には、労働契約期間の上限延長について反対をしてきました。

 ところが、去る5月11日の朝日新聞において、小泉首相が厚生労働省へ、(1)2・3年の期限付き雇用の対象拡大、(2)解雇ルールの明確化を指示し、これを受けて坂口厚労相は、期限付き雇用の拡大について検討を進めるよう指示したことが報道されました。

 98年の労基法改定の時、労働契約期間の上限延長問題について、安定的な雇用の確保に反し、差別的雇用の拡大につながるとして強い反対論があり、労使間で大激論となり、その結果として、対象を高度の専門職と高齢者に限定して3年まで延長したのではなかったでしょうか。当時、私たちの反対の声に対し、労働省の担当官は、「対象を限定するので、無原則に拡大することはあり得ない。正規労働代替へはつながらない」とはっきり回答されていました。それを改定労基法の施行からわずか2年余で見直しを行うことは、98年改定時の議論や経緯を無視するものであるばかりか、最低基準である労働基準法をないがしろにするものとして到底認めることができません。

 3年までの有期労働契約の対象拡大・・・何が問題か?

(1)正規労働者を有期労働者へ置き換えていくことが狙い

 使用者側は、固定費としての人件費コストを最小限に抑えるために、必要なときに必要な労働者を活用し、不要となれば期限切れで問題なくお引き取り願える雇用システムを拡大しようとしています。そのために、固定費となる正社員を削減し、有期雇用や派遣労働者を増やしていこうとしています。しかし、使用者にとっては、現在の労基法14条に定める労働契約期間の定めは、原則1年であり、例外として対象を明確に限定して3年までの契約期間を認めているだけで非常に使い勝手が悪い、だから対象限定を取れ、期間も5年まで延長しろというのが、彼らの論理です。それ故、対象が拡大あるいは限定が外されれば、新規の正社員採用は大きく減少し、有期雇用の拡大はいっそう促進されるでしょう。それは既に女性労働において現実化しています。

(2)労働者が契約期間拘束される・・退職の自由をめぐって

 他方、2年ないし3年の労働契約は、その期間労働者をも拘束します。普通の正社員であれば、就業規則などの規定に従って事前に申し出ればいつでも退職できます。有期契約の場合は、契約期間中に合理的理由がなく退職したり、使用者の同意なく退職すれば、債務不履行で損害賠償をかけられるおそれも出てきます。

(3)労働者側にニーズはない

 小泉首相は「2・3年の期限付き雇用ができたり、社員を解雇しやすくすれば、企業はもっと人を雇うことでできる」と発言しています。しかし、現在の雇用情勢の中でこのような施策をとれば、「雇用」は拡大するどころか正規雇用との置き換えが進み、かえって失業者と「不安定雇用」を増大させるだけです。使用者の都合で期限切れを理由に一方的に更新拒否(解雇)されたり、有期契約故に労働条件において差別的に処遇されているのが有期雇用労働者の現実です。また、有期雇用については、更新時における賃金・労働条件の切り下げが使用者の意のままに行われています。要するに、有期雇用労働者は雇用・労働条件などあらゆる面で使用者と対等ではないのです。だからこそ、有期労働者の権利の確立、対象の限定、更新された場合は期間の定めのない雇用と見なすなどの法的保護が必要なのです。それがあってはじめて労働者のニーズで多様な働き方が選べるのです。

 以上の視点から、私たちは3年までの有期労働契約の対象拡大に反対するとともに、多くの心あるみなさんに反対の声を上げられるよう訴えます。


Created byStaff. Created on 2001-05-15 18:10:03 / Last modified on 2006-07-01 03:42:01 Copyright: Default

このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について