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台湾の陳柏偉 (チェン・ボウェイ) さんがAPWSLの総会で台湾の労働運動について報告した。 以下は報告の要旨。(文責・レイバーネット日本・安田)

台湾の労働運動

2002年7月13日 APWSL日本総会にて

APWSL東アジアコーディネータ・台湾 / ICLE (Information Center for Labor Education) / 陳柏偉 (チェン・ボウェイ)

台湾では、1984年に米国の圧力で労働基準法が制定されたこと、 87年に戒厳令解除されたことが社会運動発展の契機となり、 1988年から労働運動が始まった。最初の労働運動は、残業代獲得運動だった。 また労働運動の中での政治的な闘争として国民党一党独裁打破の運動があり、 政治的には当時野党だった民進党支持で始まった。

2000年の台湾総統選挙で民進党の陳水扁が当選した。 これまで民進党は労働運動、社会運動を支援してきたこと、 民進党、社会運動の双方にとって、国民党が共通の敵だったことなどの理由で 社会運動、労働運動陣営は、陳水扁が変化をもたらすと考え、支援してきた。 しかし2000年は不況で台湾の経済が落ち込んでいたこと、 グローバリゼーションの影響により失業率が高まったこと、 企業よりの新自由主義的な政策などの理由で、 社会運動陣営は陳政権に対して批判的な姿勢を強めることになった。

野党となった国民党も、陳政権への批判を強めた。 進歩的な社会運動に携わってきた指導者が何人も陳政権に入閣したが、 このような政治的な攻防の中で、進歩的だと思われていた民進党も、 結局国民党と同じなのではないかという疑問が持ち上がり、 社会運動は自身の位置付けが問われることになった。 また、反国民党で民進党と共にやってきた人々も苦慮している。 そして一般の市民たちも、陳政権になってから、経済的な発展に見るものがないばかりか 不況は続き、中国との関係についての不安などから批判が強まっている。

労働運動の情況

99年から2000年にかけて、国民党の統制下にあったナショナルセンターのCTU(全総) に加え、新しく民進党系の第二のナショナルセンター(全国産業総工会TCTU)が設立された。 2つのナショナルセンターが互いに競争しながら発展していくことが望まれていたが、 そのような方向には進まなかった。

ナショナルセンターによる労働運動は、既存の政党の影響力が強い。 たとえば2002年のメーデーで、2つのナショナルセンターはどちらも 不況からの脱却を理由として政府への圧力をかけることになるデモをやらず、 対政府協調路線を取った。 活発に労働運動に取り組んでいるのは、比較的小規模労働組織である。 たとえば、労災問題に取り組んできた団体が労災の被害者を保護するための法律を作らせた。 われわれは、政党との関係に重心をおくべきではないと考えている。

陳政権の新自由主義的な政策により、今後、失業者が増えると予想される。 失業者救済のための、工場閉鎖や工場移転に対する闘いが必要だ。

従来の労働組合法は、労働組合の統制を主眼とする日本統治時代の法律だった。 民進党は、労使関係に政府は介入しないなど、統制の解除を目指している。 しかし、労働運動が弱い現状では、政府の介入がなくなることは、かえって問題だ。 適切な政府の介入で労働者を保護する必要があるのではないだろうか。 民進党の「進歩性」は、資本家と共に進む進歩性であり、民衆的ではない。 民進党の自由と進歩性は、資本家が自由に活動できるようにする進歩性なのである。

もっとも、政府が労組に対する統制を弱めたことによる好ましい側面もある。 従来、台湾の労働組合は企業別組合だけだっただ、 産業別、地域別の労働組合の設立が認められるようになった。 小規模で力量も不十分な台湾の労働組合にとって、さまざまな形態の労働組合の 設立が認められたことはプラスになるものである。


Created byStaff. Created on 2002-07-13 17:35:47 / Last modified on 2005-09-05 02:58:56 Copyright: Default

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