●レイバーネット日本<コラム>
アバサー汁
仕事がらみで5月6月と2回沖縄に行った。沖縄行きは生まれて初めて。青
い海と空のイメ─ジを抱いていたが、あいにくの梅雨時で湿度150パーセン
トと言ってもおおげさではないほどの蒸し暑さとスコ─ルのような激しい雨。
亜熱帯の自然を膚で感じた。
那覇の公設市場では、一階の市場で選んだ魚を二階の食堂で食べさせてくれ
る。赤や青の色鮮やかな魚は新鮮でおいしい。その食堂のメニューにアバサ─
汁というのがあった。1500円でメニューの中では最高級。連れの仲間は誰
もアバサー汁が何かを知らない。冒険のつもりで注文した。出てきたのは魚の
味噌汁だった。身はフグに似てあっさりしているが、汁にだしが良く出ていて
おいしいことこの上なし。どんぶり一つきれいに平らげた。ここまでは良かっ
たのだが、話はこの後から。食べおわるとどうも舌が痺れているような感じが
する。それも徐々に強まっているようで、何かおかしい。お店の人に魚の名を
聞くと針センボンだと言う。針センボンはフグと同じく猛毒で知られた魚。そ
うするとこの舌の痺れはその毒のせいか。この毒が全身にまわれば、ひょとし
て死んでしまうかもしれない。もう土産店を見る精神的な余裕も失せ、ひたす
ら舌の次にどこが痺れてくるのかに全神経を集中させた。でもアバサー汁を飲
んで中毒死したという話は聞いたことがない。しかしここは沖縄、東京までそ
んなニュースは届かないのかもしれない。などと頭のなかは妄想がかけめぐる
。その後半日は生きたここちがしなかった。運よく全身に毒がまわった気配も
なく、無事東京に戻っが、アバサー汁を初めて飲む方は、どうぞご用心。
佐々木有美
Created byStaff.
Created on 2005-09-04 20:40:41 / Last modified on 2005-09-04 20:40:41 Copyright:
Default