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Document nagoya200210
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名古屋コラム

郵政首切り20年・名古屋哲一の月刊エッセイ

 「さん」と呼ぶところからはじめよう

 9月で終わったNHK朝の連ドラ「さくら」。ヒロイン・さくらの相手役で同僚の男性教師・桂木が、さくらを「お前」と呼ぶのが気になるという投書があり、その後33通の反響では肯定・否定がほぼ同数だったと朝日新聞に出ていた。女性中心の反響らしいが、若い世代に「抵抗ない」が多かったとのこと、平等感覚・人権感覚がヤバクなっている。もしも逆に、さくらが桂木を「お前」呼ばわりしていたなら「抵抗ない」はごく少数になっていただろう。

 朝鮮民主主義人民共和国で「敬愛する将軍様」は、金正日総書記を指す。呼び捨てにすれば政治犯にされるというのだから大変だ。ちなみに、ロシア革命直後の赤軍では、上官は部下から「さん」付けで呼ばれれば「さん」付けで答え、「です・ます」で話しかけられれば「です・ます」で話し返すよう教育された。スターリン体制になる以前の話だ。

 いい大人がこぞって「あいこさま」と呼ぶ赤ん坊のいる国がある。こう呼ばないと政治犯にはならないだろうが、アナウンサーも新聞記者等も左遷や失職ぐらいは覚悟しなければならないのだから大変だ。呼ぶほうも呼ばれるほうも不幸なことだ。

 上司を「あんた」とか「あなた」とかで呼ぶと「暴言処分だ」という職場がある。各地方・各局で違いがあるようだが、郵便局というれっきとした国の機関での話だ。郵九労・松田さんの戒告処分人事院闘争の発端となったのも「あんた発言は暴言」という上司の言いがかりだった。権利を主張する組合があったからこそ「暴言ではない」と訂正させることができたものの、首都圏のある局では、「OOさん」発言は処分の対象だ「OO課長」と呼べと、調子こいた課長が言い出すまでになっている。

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 日本語は日本社会を反映して「様」「さん」「君」「呼び捨て」など、序列付ける言葉が豊富との事だ。社会一般だけでなく、ボクら仲間内でもこういう言葉使いは耳にするが、ボクはこんな使い分けをする能力もないしメンドくさいし、全部「さん」で統一するようにしている。

 皆が「先生」と呼んでいる人を「さん」で呼ぶのは勇気が要るが、極力「さん」と呼ぶようにしている。ボクの感覚では、「先生」と呼ぶのは相手との関係で、ハート・ツー・ハートよりも社会的お決まりを優先しますよといった「壁」を作るようで、逆に失礼な気がするのだ。敬愛している人に敬愛の情を伝えるのに、尊敬語による上下関係でうわべを飾る必要は無い。幸いなことにボクの周りは、4・28ネットの代表も弁護士さんもお医者さんも教師も先輩も、「先生」と呼ばれないことにこれっぽちも不快感を持たない人ばかりだ。

 4・28反処分闘争は、差別を許さない反マル生闘争を根っ子にした闘いであり、郵政官僚による差別だけではなく日常に巣食う差別へも自分の内なる差別へも、感性を鋭くしていければと望んでいる。

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 ところで、今年もまた年末物販の季節がやってまいりました(どういうわけか、物販の話になると急に「です・ます」調になってしまうのです)。以前「持ってけドロボー」と乱暴なセールス言葉を使ったとき、バナナの叩き売りを知らなかったらしい若い知人は顔をしかめて買ってくれなかったので、それ以降は、「お客様は神様です」・・・これももう死語かも・・・と、無難な表現を選択しています。表現だけではなく心から「神様」だと思っていますので・・・無神論者ではありますが・・・どうかまた絶大なご協力をお願いいたします。

                       

名古屋哲一(4・28免職者)

郵政九州労組・郵政近畿労組大阪北「機関紙10月末号」掲載

*タイトルはレイバーネット編集部


Created byStaff. Created on 2005-09-04 20:41:20 / Last modified on 2005-09-29 06:44:54 Copyright: Default

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