本文の先頭へ
LNJ Logo 名古屋コラム
Home 検索
 




User Guest
ログイン
情報提供
Document nagoya11
Status: published
View

会員関連サイト

more...

名古屋哲一のコラム

 

郵政首切り20年・名古屋哲一の月刊エッセイ

 タガはどこまではずれるの?

 「大新聞が普段、本当のことを書いているのは、決定的なときに嘘を書くためなんだ」と昔の賢者は言った。ナルホドとも思うが、昔は牧歌的だったんだなとも思う。今、世の移ろいは加速して、普段に小さな決定的な出来事が顔を出し、従って、大新聞も普段に小さな嘘を書き連ねれねばならない。それだけならまだしも、大新聞を批判する反体制的な新聞さえも、目茶いい加減だったりするのだから、今の時代、よほど真実を見抜く目を養っておかないとやっていけない。「自己責任」ではなく、「自己決定」の権利が必要な時代。

 10年ほど前から、世の中のタガが、ガクガクとはずれてきた。水道水にも母乳にもダイオキシン類が混ざる。ボクが子供の頃には、道でも何でも近くにいる大人誰にでも尋ねなさいと教わったが、今、知らない大人が親切めいて話かけてきたら逃げなさいと、子供たちは教わる。21世紀の最初の年、このタガはずれはさらに加速しているようだ。

 もうこうなったら、悪い奴らが嘘デタラメを言うのにいちいち怒っていられないとまで思ってしまうが、人々がこの嘘デタラメにやすやすとだまされてしまうのまでは、とてもとても笑ってすまされるものではない。

  *    *    *    *    *    *    *

 例えば、ビンラディンが米国同時多発テロに関与した「決定的証拠」と米政府が言う12月13日公開のビデオ。ベタ記事ではなく、世界中のマスコミが大々的に宣伝した。このビデオが偽物である証拠は何もないが、同じく本物である証拠も何もない。眉ツバ物であることだけは確かだ。不鮮明すぎる画像と声。公開日時の何度もの延期。誰が何の目的で撮影したのかの説明も、カンダハルで撮影したのが何故ジャララバードで発見されたのかの説明も、更にタリバーン敗退で反論することが困難な状況になってから、何故この時期に公開するのかの説明も無し。それに、米政府は、湾岸戦争での「油まみれの鳥・ねつ造ビデオ」の前歴があり、これは世界中が知っていることだ。

 一番不思議なのは、ビンラディンの「事前に、事件がその日に起こるという通告を受けていた」との言葉が、「決定的証拠」の一つとなっていることだ。普通この言葉は、「首謀者から事前に知らされていた」と解釈されるのであって、彼が首謀者ではないという証拠と解釈することだって可能なのだ。「首謀者の彼に事前に報告があった」との解釈も不可能ではないが、単なる「関与」ではなく「首謀者」として告発している米政府が「決定的証拠」と大宣伝できる代物では、まったくない。もしも逆の立場だったならば、米政府は「こんなまがい物ビデオを作りやがって、奴は大嘘つきだ」と大宣伝しただろう。そしてまた、これだけの内容では、彼が対話者に虚勢を張って「事前に知っていたさ」と嘘を言っているとの解釈だって可能なのだ。

 その他の彼の「決定的証拠」の言辞、2機目の飛行機突入とか実行犯の名前とかは、このビデオが撮影された11月ならば、ボクでもしゃべれることばかりだ。犯人でなければ知り得ない事実は一つも述べていない。これをマスコミは「これまで米政府の発表や米内外の報道をほぼ裏付ける内容だ」などと書いてしまう。部分的に「?」も提起はするが、基調は米政府へのヨイショだ。

 このへんてこビデオ、アラブ世界では「ねつ造の疑いとの声も」だが、米市民の多くは「やっぱり思ったとおりだ」と反応してしまっている。

  *    *    *    *    *    *    *

 今の世のタガはずれは労組へも及ぶ。10年前、権利の全逓は4・28免職者の首を切り、今年、国労は「JRに法的責任はない」と大会決定した。だがしかし、他方、少数とはいえ、郵政全労協等の前進や4・28闘争継続を支えた力、そして闘う国労闘争団の創出もまた、今の世のまぎれもない現実だ。                 

2001年12月末 名古屋哲一(四・二八免職者)

郵政九州労組・郵政近畿労組大阪北「機関紙12月末号」掲載

*タイトルはレイバーネット編集部


Created byStaff. Created on 2005-09-04 20:41:17 / Last modified on 2005-09-29 06:44:54 Copyright: Default

このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について