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郵政首切り25年・名古屋哲一の月刊エッセイ

 ワシントンの桜の木

 大英帝国を相手に独立戦争を指揮し1783年に独立ジョージュ、その後初代米国大統領のお仕事にジュージしたのは、ジョージ・ブッシュではなくてジョージ・ワシントン。彼が子供の時に桜の木を切っただか折っただかしてしまい、黙ってりゃ解りゃあしないものを親に告白し、それを聞いた親は叱るんではなくて「正直でよろしい」と誉めた、という逸話は有名だ。

 特段にワシントン少年が偉かったわけではない。ボクだって「正直でよろしい」と誉めてくれるような良い親だったので、誉めてもらうのが嬉しくて、イタズラをしちゃあどんどん告白する正直な良い子だったのだ。告白を聞いた時、教育と称して体罰や虐待をする親であっても、断固として告白するというのであったなら偉い。かと言うとそうでもない。そういう親だったなら黙っているか嘘をつくかした方がよい。

 保育士さんが言っていた。「今の子供たち、家の中では緊張していて保育園に来ると羽を伸ばすのよねえ。親が迎えに来ると急にお行儀良くなったりして」。ボクらの子供時代とはまるっきり逆さまなので、びっくら仰天してしまった。ボクらの子供時代には「子供の権利条約」なんてなかったのに、今の子供たちよりは権利は尊重されていた。一年ほど前の国際調査では、「先進国」「発展途上国」色々ある中で、自己肯定感を持つ子供の比率は日本が最低だった。

 学校内ではイジメが横行、これは大人社会でイジメが横行していることの反映だという。郵政職場でも、以前は反職業病闘争など「弱者」を守る共通感覚がそれなりにあったが、今は、競争・査定・降格処分・訓練道場・非常勤差別・パワハラ・セクハラ等々、そして28年間も続いている4・28首切り処分といった具合だ。

*     *     *

社会変革の活動、世界革命へ向けた闘争、ボクらの世代がベトナム反戦などから延々と闘い続けてきたのは、未来のため、子供たちのためだった。この想いとは逆の世知辛い世の中になってしまい申し訳ないコトしきりなのだが、せめてこれ以上ヒドイ社会にはさせはしない。そう思っているのに、またもやアベの奴が・・・。

 昨年の教育基本法改悪に続き、1月25日招集の通常国会で安倍首相が施政方針演説、「教育再生」を最重要課題に位置づけてしまった。自分の人気回復のために、論議不十分且つ理念ナシの教育3法をアタフタと今国会で成立させたいとのことだ。

 「教員免許法」改悪は、10年ごとに免許剥奪できる更新制で教師を締め付ける。「学校教育法」改悪は、副校長や主幹のポストを新設し管理職を増やす。こんなものは減らして、20人学級実現などするのが筋のはずだ。ちなみに「先進国」中、日本の国からの教育費投入は最低ランクなのだ。教育委員会のあり方を根本的に見直す「地方教育行政法」改悪は、教員の人事権を都道府県から市町村にできるだけ移管するが、同時に国が教委の基準や指針を決めるなど強権関与する。

 以上の内容の、現場教師ナシの「教育再生会議」による第一次報告を基に、法案づくりを大急ぎで始めたのは文部科学省だ。この省の伊吹大臣は、松岡農林水産相と共に「事務所費疑惑」の汚い金で今現在問題になっている御方で、昨年辞任の佐田行革相と同じ穴のムジナに違いない。彼を大臣に任命したのが安倍首相だが、全く施政方針演説でも触れず責任放棄のまま、子供たちに「公共の精神」「国に対する愛情」「道徳心」といった価値観を植え付けることが「重要だ」とのたまったのだ。ブラックユーモアを越えている。

自ら推進した「ゆとり教育」を数年もしないうちに取り止めしようとしている等、現場を混乱させる無茶苦茶を繰り返してきた文科省、彼らこそが子供たち不幸を降り注いできた下手人だ。子供たちは、「ゆとり教育」の下でさえ、生活的精神的時間的「ゆとり」を奪われ続けていた。

*     *     *

 子供は天真爛漫なのがいい。いっぱいいっぱい愛され甘やかされるのがいい。桜の木を折って、もし誰かに迷惑をかけてしまったら一緒に謝りに行けばよい。子供がイジメに加担したり自己チューだったりなどホントに悪いことをしたら、怒ったり悲しんだりして叱るのだが、体罰による恐怖ではなく、子供という人間に親という人間の怒りや悲しみが伝わらなければ意味がない。そのためには、親自身が、不正や自己チューに対して真に怒り悲しめる人でなければならないだろう。

名古屋哲一(郵政4・28免職者)

「郵政ユニオン九州地本機関紙」及び「大阪・吹田千里支部機関紙」にも掲載

*タイトルはレイバーネット編集部


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