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名古屋コラム

郵政首切り20年・名古屋哲一の月刊エッセイ

 心の崩壊がはじまっている

  「2003年末から04年へと足を踏み入れる今の「世情」なんぞを、チラッと覗いてみようかななんて、そこはかとなく思った。

 「シュプレヒコールの波、通りすぎてゆく、変わらない夢を流れに求めて。時の流れを止めて、変わらない夢を見たがる者たちと闘うため」 中島みゆきの「世情」は、4・28処分がだされる前年の1978年に発表された。

あの頃は、郵便配達をしながら営業活動(押し売り)をするなんていうのは、まったく、完全に、チラッとも考えられないことだった。ましてや、営業活動するために郵便配達をするなんて、「地動説じゃ!」とわめいたコペルニクスだってビックラだ。

ボクは、郵便配達をしながら、営業活動ではなく、ワンワンたちと親交を暖めあう活動にいそしんでいた。そして配達途中の土手にはいつも、「高い高い」などして遊んでくれる郵便屋さんを待っている一人遊びの少女がいた。郵便屋さんの方もこれが楽しみで、ブツがたくさんの時でも何としても土手の所までは配達し終えるのだった。

首を切られてから数年後、チリ紙交換で大きい団地内をぐるりとしている時も、小学生等がチリ交トラックの荷台に乗ったまま、せっかく結わえた雑誌の束を 解いたりして、てんでに漫画などを読んでいた。今とは違って、「見知らぬおっさんには気をつけろ」なんていう人間不信を植え付ける教育は、不必要な時代だった。

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 ついこの間のこと、電車内を歩いていて投げ出されていた他人様の足先に軽く触れてしまったのだが、「アッ、どうも」も言わず通りすぎた自分に気付き、ちょっとビックラしたのだった。少し前までは、何も意識することなく自然に「ゴメンサイ」とか会釈とかが、色々な場面ででたものだった。世間の皆様一般に存在していたそれなりの人の絆や信頼感覚、これらの崩壊状況がボクの体内にも浸食を始めていた。

 東京の街、狭い歩道。前から歩いてくる人とボクとは、自然に半歩づつ左右に寄ってすれ違う・・・ハズだったのに、相手はそのまま歩いてくるのでボクは歩道の端っこにへばりつく格好となった。こんなことをひんぱんに経験するようになって、やっと「何かおかしいぞ」と気付いたのが数年前だ。それ以前のたまにの同様の経験は、「相手は考え事でもしてたんでしょ」くらいで気にも留めずに済んでいた。

 相手がヤクザ屋さんだったなら解る。わずかでも左右に寄らないというのは、彼らのアイデンティティーであり、営業活動であり、メリット有ることなのだ。ところが、相手が老若男女を問わず、なかにはボクとぶつかったら跳ね飛んでしまうような体格の人までがデメリットも気にしないで、チラともよけずに進んでくる。こちらがよけるのが当たり前とでもいうように。こちらの存在自体を無視するかのように。

こうして、単細胞のボクとしては、肩が触れたって知ったこっちゃない、半歩は寄るが端っこには意地でもへばりつかないゾと決めて、日常実践を貫徹してきたのだった(但し、ヤクザとプロレスラーは除く)。なんとまあ、ストレスのたまるスサンダ日常に侵されていたことか・・・。

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小泉純一郎が、イラク侵略戦争の派兵の論拠に日本国憲法を持ち出した。ナンデダロー、ナンデダロー? この憲法は派兵どころか軍事力の保持さえ禁止しているのに。おまけに、この憲法じゃダメだから変えるんだと彼自身が公言しているのに、だ。そして、にもかかわらず、「コイズミ、ヤメロ!」の大合唱はおこっていないのだ。

 コイズミがヒチャメチャなのは、まだよい。それはヤクザが道を譲らないのと同じ事だし、郵政官僚や全逓本部が4・28闘争を毛嫌いするのと同じくらいの整合性をもつ。問題は、普通の人の心の崩壊が始まっているのでは、ということだ。

 とはいえ、おっとどっこい、4・28反処分は四半世紀を迎える今も暖かさの輪に支えられているし、03年春に日本でも5万人・全世界を2千万人の反戦ウェーブ=「シュプレヒコールの波」が覆って、「変わらない夢を流れに求め」もしたのだった。

名古屋哲一(郵政4・28免職者)

郵政九州労組・郵政近畿労組吹田千里支部「機関紙12月末号」掲載

*タイトルはレイバーネット編集部


Created byStaff. Created on 2005-09-04 20:41:04 / Last modified on 2005-09-29 06:44:52 Copyright: Default

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