本文の先頭へ
LNJ Logo 木下昌明の映画の部屋・第162回
Home 検索
 


●宍戸大裕監督『犬と猫と人間と2』
フクシマの牛が流した涙の重さ――打ち捨てられた震災“生き証人”

 4年前に飯田基晴監督の『犬と猫と人間と』を見て、日本には犬と猫合わせてなんと2700万匹も飼われていると知って驚いたが、犬と猫が1日1000匹も殺処分されている「ペット大国」の裏側を知ってさらに驚いた。

 その飯田がプロデュースし、“弟子”の宍戸大裕が監督した『犬と猫と人間と2』が完成した。副題に「動物たちの大震災」とあるように、大震災で犬、猫、牛たちがどんな被害を受けたかに焦点を当てていて見応えがあった。

 これまでの被災ドキュメンタリーといえば、もっぱら人間を題材にしていて、捨てられた動物たちは被災風景の添え物でしかなかった。それが動物に光を当てることで、彼らが飢え、傷付き、人間不信となって心まで病んでいる姿が見えてくる。ペットと家族同様に暮らしてきたのに、手狭な仮設住宅では一緒に暮らせない避難者のやりきれない気持ちもとらえていて、胸を打つシーンもある。

 なかでも、原発事故の放射能で汚染された「警戒区域」での動物たちの惨状は目にあまる。カメラは、宮城県から2時間かけてやってくるボランティアの岡田久子さんに密着し、その保護活動を撮り続ける。最初は犬と猫だけだったが、放置された牛舎の牛にも餌をやるようになる。被曝牛を350頭も飼っている「希望の牧場」の吉沢正己さんに窮状を訴え、同じ敷地に65頭も牛をおかせてもらう。

 映画の、そんな二人の共同作業や問答シーンが興味深い。吉沢さん「どうしようもなくなったらどうする? 追っ放すね!」。岡田さん「支援金が成りたたなくなったら殺処分しかない。これが日本の動物のおかれた姿なんだと!」

 被曝牛は「復興の邪魔だ」と切り捨てる福島県庁と違って、人間と同じ「生き物」ととらえることで原発惨事への「生き証人」とする。牛舎で生き残った一頭がカメラをじっと見つめ、涙を流すシーンがある。(木下昌明/『サンデー毎日』 2013年5月26日号)

*6月1日より東京・渋谷ユーロスペースにてロードショー。全国順次公開。


Created bystaff01. Created on 2013-05-21 11:55:19 / Last modified on 2013-05-21 11:57:01 Copyright: Default

このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について