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Document 20120306
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●映画 『世界最古の洞窟壁画』『ピラミッド 5000年の嘘』
人間のもろさと生きた証しと――定説を覆す文明の“起源”とは

 息苦しい未来を前に、時には人類史の出発点に目を転じるのも一興かもしれない。

 スタンリー・キューブリックの『2001年宇宙の旅』によると、人類の“夜明け”はサルが動物の骨を道具にして2本足で立ち上がった時からとしているが、その足跡をたどれば、1万5000年前のラスコーやアルタミラの洞窟壁画にいきつく。そこに人類最初の刻印があり、それがこれまでの定説となっていた。

 ところが、ヴェルナー・ヘルツォークの記録『世界最古の洞窟壁画3D 忘れられた夢の記憶』(写真)をみて驚いた。1994年に発見されたショーヴェ洞窟の壁画は、3万2000年も前のものだという。場所は3か所とも南ヨーロッパであるが、ショーヴェ洞窟の発見が遅れたのは、2万年程前に崖くずれで穴が塞がれていたためという。岩肌には、馬や牛のほかに、アフリカにしかいないサイやライオンやハイエナなどの動物が、吹き墨で描かれている。

 これがラスコーより1万7000年も前のものなのか?――見ていると言葉にならない不思議な気分に襲われる。

 もう1本、お勧めしたいのが、世界の七不思議の中でも最大の謎とされるエジプト・ギザのピラミッドを追究したバトリス・プーヤールの『ピラミッド 5000年の嘘』。

 これまでクフ王の墓とされてきたピラミッドを、数学と建築の専門家でエジプト学に詳しいジャック・グリモーは37年間かけて調査・研究した。その学説を、プーヤールが6年かけてエジプトはじめ世界の巨石文明を訪ねて検証したドキュメンタリーだ。この時代の人類が1ミリの隙間もなく巨石をつみ上げて建造することは可能だったのか――これまでの説を一つ一つ突き崩して、「高度に進化した(もう一つの)文明が滅亡した可能性」を示唆している。あの吉村作治先生だって腰を抜かすのでは?

 2本の作品から浮かんでくるのは、百年も生きられない人間のもろさとあやふやさと、それゆえに確固とした岩や石をかりて生きた証しを刻もうとした人類のはかない思いとだ。(木下昌明/『サンデー毎日』2012年3月11日号)

*『ピラミッド 5000年の嘘』は新宿バルト9、丸の内TOEI他で公開中(配給:スターサンズ)。『忘れられた夢の記憶』は3月3日よりTOHOシネマズ六本木ヒルズ他で公開。


Created bystaff01. Created on 2012-03-06 20:37:23 / Last modified on 2012-03-06 20:39:30 Copyright: Default

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