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●映画「チェルノブイリ・ハート」
―日本の近未来を考えるチェルノブイリの“その後”

 最近、幼い子をもつ母親たちが線量計で自宅や公園などの放射線量を測るようになった。東京都の線量は概ね0.05マイクロシーベルト台とされているが、先日、吉祥寺のレストランで線量計を借りて測ると0.13あった。風や場所によっては0.4になるという。毎日、低線量を被曝しているのだ。

 こうした状況下でマリアン・デレオ監督の「チェルノブイリ・ハート」が緊急公開される。映画は2003年アカデミー賞短編ドキュメンタリー賞を受賞した作品を、日本向けに特別編集したもの。

 主な舞台は、チェルノブイリから200〜300キロ離れたベラルーシ共和国ミンスク市周辺の小児関係病院など。原発事故から16年後の02年時点で、子どもたちにどんな影響が出ているかをとらえている。これは楽しむためではなく、日本の近未来を考える手がかりとなる映画なのだ。

 トップシーンには日本人向けに、監督の思いを託したトルコの詩人ヒクメットの「生きることについて」の詩が掲げられている。映画スタッフは2000以上の集落が廃村となった事故現場に赴いた後、世界最大の甲状腺がん治療の病院を訪れる。首に包帯を巻いた10代の青少年たちがずらり。なんとも異様な光景だ。

 一番驚かされたのは、親に捨てられた乳児たちの遺棄乳児院でのシーン。頭の後ろにもう一つ頭がぶらさがっている幼児や尻が風船のように膨れた幼児ら……。監督は「あの子たちは希望がないことをよく知っている」と語っている。ヒロシマ・ナガサキでも被爆した母親たちが6〜7年たって多くの奇形児を産んだ。それを撮った亀井文夫の「世界は恐怖する――死の灰の正体」(1957年)に戦慄した記憶がある。

 映画は、いま全国で公開中の「二重被爆」の稲塚秀孝監督が直接買いつけたもので、そこに彼の危機意識を読み取ることができる。また映画を見て、線量計を頼りにわが子を守ろうとする母親たちの姿が、決して荒唐無稽でないことも理解できる。 (木下昌明/「サンデー毎日」2011年8月21日号)

*8月13日よりヒューマントラストシネマ渋谷、銀座テアトルシネマほかで全国順次公開 ◎2003ダウンタウンTVドキュメンタリーズ


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