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●映画「リミット」・「レバノン」
「視界」が封じられるからこそ見える「侵略戦争」の真実とは

 戦争下での極限状況を描いた映画を2本みた。

 1本は公開中のロドリゴ・コルテス監督のスペイン映画「リミット」。これは目覚めたら棺のような箱の中だったという奇妙な映画。それも砂漠に埋められていた。男はライターをともし必死に脱出を試みるが、箱はびくともしない。そのうち誰かの携帯電話があることに気づき、助けを求めて至る所に連絡する。それで観客は、彼がトラックの運転手で、イラクで米軍の物資輸送中にゲリラに襲われ、身の代金を要求されているとわかる。そんな生死の瀬戸際にあるのに、会社に助けを求めると、労働契約違反をたてに平然と解雇通告される。国務省の人質対策部は秘密裏に事を運ぼうとしてラチがあかない。また妻は不在で、妻の友人にかけると「これから買い物にいくの」という。

 登場人物はたった一人なのに、電話を介して彼の境遇、政府や会社の非情ぶりがあぶりだされる。最後までハラハラの「体感」ドラマである。

 もう1本は、サミュエル・マオス監督のイスラエル映画「レバノン」。1982年のイスラエル軍のレバノン侵攻を、当時戦車兵だった監督がドラマ化したもので、レバノン突入時の一日を描く。それももっぱら戦車の内側から。中には4人の兵士が乗っていて、外界は砲撃手がのぞく照準器のレンズからみえてくる光景のみだ。前の映画と同じく、ここも狭く息苦しい空間が舞台となっている。唯一外とつながっているのは無線だが、戦況がみえてこない。その中で兵士同士がいがみ合ったり、「家に帰りたい」と叫んだり、無差別に住民を撃つことを強いられる兵士の卑小な内面がとらえられている。

 レバノン戦争についてはアニメの「戦場でワルツを」という傑作がある。これは記憶をなくした元兵士の体験記で、それと目前の戦場の凄惨さを「体感」するこの映画を併せてみるといい。侵略の実態がよくわかる。(木下昌明/「サンデー毎日」2010年11月21日号)

*映画「レバノン」は09年ベネチア国際映画祭金獅子賞受賞。12月11日から東京・渋谷のシアターN渋谷でロードショー


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