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●映画「ピリペンコさんの手づくり潜水艦」
「バカ」とは1%のひらめきと1%の夢と98%の努力である

 世の中には「何でこんなバカげたことに熱中するのか」と思うような人がいる。またそんな人物に光を当てたドキュメンタリーもあるのだが、これはこれでけっこう面白い。

 最近では、誰も頼みもしないのに完成したての1974年、世界貿易センターを綱渡りした男のドキュメント「マン・オン・ワイヤー」があった。世界一の高さを誇ったビルも、男の目にはニョキッと生えた2本の棒くいぐらいにしか映らなかったわけだ。そこがおかしいが、それよりも「何で?」と思う映画が現れた。「ピリペンコさんの手づくり潜水艦」だ。前者は天空を、後者は深海を目指す違いはあるものの、いずれも少年のように見果てぬ夢を追いかけている点では同じといえよう。

 ウラジーミル・ピリペンコはウクライナの集団農場で働き、今は年金暮らしの62歳。30年前から潜水艦づくりに取りつかれ、ようやく大きなおもちゃのような潜水艦を完成させた。それを新聞か何かで知った二人のドイツ人監督ヤン・ヒンリック・ドレーフスとレネー・ハルダーが村にやってきてカメラを回し始めた。

 ところがそこは海のない草原地帯。これがおかしい。アヒルの群れが道を往来し、老婦人が年金の配達にやってくる牧歌的な村で、社会主義時代の雰囲気も漂っている。ピリペンコ夫人は大切な年金がバッテリー代に使われはしまいかとぴりぴりだが、彼のほうは400キロ離れた黒海で潜水艦に乗って魚や海藻と戯れるのが夢なのだ。なるほど海とは無縁の土地だからこそ海にあこがれるのもよくわかる。

 そして黒海へと旅立とうとするのだが、その前に養殖池で潜水のリハーサルを行う。村人が不安そうに見守るなか潜水を始めるや天井から水がしたたり落ちて……。これをバカげた遊びと笑わば笑え! 人間何歳になろうと夢を実現しようとすることって最高ではないか! (木下昌明/「サンデー毎日」09年11月1日号)

*映画「ピリペンコさんの手づくり潜水艦」は11月14日から東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー


Created bystaff01. Created on 2009-10-28 14:47:39 / Last modified on 2009-10-28 14:52:00 Copyright: Default

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