●香港映画「コネクテッド」
1台の「ケータイ」が男と女の運命を混線させるサスペンス

先日、とある街角のコーヒー店から外をながめていてふしぎな光景に気づかされた。
ほとんどの若者が携帯電話とにらめっこしながら往来していたが、まるで彼らの頭脳が
ケータイの中にあり、その指示で動いているように見えたからだ。いまや世の中、ケー
タイが支配しているのか?
そんな思いにとらわれたのはベニー・チャン監督の香港映画「コネクテッド」を見た
せいかもしれない。原題は「保持電話」とある。車で空港に向かっていた子持ちで独身
のアボンのケータイに「助けて!」と見知らぬ女の悲痛な叫びがかかってくる。その女
も子持ちで独身のロボット設計士で、突然誘拐され、放り込まれた空き家で壊された電
話機を接続しているうちに、どこの誰かもわからない男につながったのだ。気の弱いア
ボンは、電話を切るに切れず「保持」したまま奔走し、多機能ケータイで活躍するサス
ペンス・アクションものだ。
実はこの映画、ハリウッド映画「セルラー」のリメーク版。香港映画がハリウッドで
リメークされることはあるが、これは珍しく逆なのだ。そこに人口700万人にケータ
イが1000万台という香港社会の特殊な背景を見ることができよう。もっとも「セル
ラー」も「フォーン・ブース」の脚本で有名なラリー・コーエンが原案。「フォーン・
ブース」は、公衆電話にかかってきた電話を手に取ったばかりに自分の恥を衆目にさら
す羽目になった男のドラマで、ケータイを利用して人々を手玉に取っていたのに、一本
の電話に呪縛されてしまうという愚かさを描いたものだった。
その点、「コネクテッド」は反対で、彼はケータイを利用して一味と立ち向かってい
るうちに自信を取り戻していく。彼に協力した警官はあきれて「あんたの仕事は何?」
と尋ねると、彼は「経理」と答える。―うーん、電話会社も喜ぶかも。(木下昌明/「サンデー毎日」09年8月)
*8/1新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー公開
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Created on 2009-08-11 01:09:22 / Last modified on 2009-08-11 01:14:55 Copyright:
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