●木下昌明の映画の部屋・15回『グアンタナモ・僕達が見た真実』
グアンタナモ収容所の「実態」
「捕虜」の側からとらえた映画
昨年7月2日付の『毎日新聞』と『朝日新聞』に「グアンタナモ収容所は閉鎖すべき
」という同じ見出しの社説がのった。
同収容所には9・11以降、アフガニスタンを攻撃し続けている米軍が「テロリスト」
とみなす人々を750人以上も送りこんでいる。治外法権の地域であることを利用し、
ジュネーブ条約も無視して捕虜への拷問を続けており、そのことに対して日本の2紙が
閉鎖を訴えるほど国際世論の批判を呼んだ。
1月27日から東京・日比谷のシャンテシネで公開される「グアンタナモ、僕達が見た
真実」は、同収容所で2年半をすごした無実の青年3人の実話をドラマ化し、隠蔽され
た非道を暴いている。
3人はパキスタン系英国人で、そのうちの一人がパキスタンで探した女性と結婚する
ことになり、3人の友人を英国からパキスタンに呼びよせる―そこからドラマは始まる
が、その時期に米軍のアフガニスタン攻撃が開始された。
青年たちは、ついでにアフガニスタンを見ておこうと寄り道をする。結果、彼らは内
戦に巻きこまれ、戦場の悲惨をいやというほど体験するが、その揚げ句、米軍の捕虜と
なり、グアンタナモに送られる。灼けつく太陽にさらされる檻のような中で連日デタラ
メな尋問とすさまじい拷問がなされる。しかし、かれらは次第に打たれ強くなっていく。そこが見どころの一つ。
映画では、時々3人の青年本人が登場し、短く証言したり、ブッシュが「確かなのは
悪人だ」「収容者は殺し屋だ」と演説したりのシーンも挿入して、ドキュメンタリー手
法で展開し、それが、あざやかな効果を生んでいる。その英国映画の監督は、前
作でパキスタン難民の少年が苦難の旅の末に英国に亡命する傑作「イン・ディス・ワー
ルド」を撮ったマイケル・ウィンターボトムとマッド・ホワイトクロス。ベルリン映画
祭の銀熊賞・監督賞を受賞している。 (木下昌明)
*『サンデー毎日』2007/1/28号所収・加筆
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Created on 2007-01-31 22:43:07 / Last modified on 2007-01-31 22:47:13 Copyright:
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