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●木下昌明のWEB版・映画批評『レールは警告する−尼崎事故とJR東日本』(2005年9月22日掲載)

安全のために抵抗する労働者たち

木下 昌明

 このドキュメンタリーを見ていて、まず抱いたことは、“怖いなあ”という感慨だった。毎日、安楽な気分でのっている電車が、“板子一枚下は地獄”だったなんてだれが想像できたろう。それがここで、あのJR尼崎事故と同じことが、いつわが身にふりかかってもおかしくないのだと悟らされるからだ。

 マスコミは、事故を起こしたJR西日本の安全対策の不備ばかり追及しているが、ここでは、JR東日本が西と全く同じ経営体質で、私鉄と競合する路線ではどんどんスピードアップをはかり、いかに危険な状況にあるのか、“便利さ”の裏にある背景を、その鉄道で働く労働者の証言とかれらの職場などをとらえながら「警告」している。

 鉄道のいちばんの基礎はレールにある。だから日常的なレールの点検・修理は欠かせない。それなのに民営化になって下請け業者依存になっておろそかにされ、レール破断が起きはじめた。破断とはポッキリ折れることで、それを会社は隠しつづけてきた。国労の保線区員が道路上から破断の前兆である傷の個所を指さすシーンがある。傷はつぎ目板をボルトでとめているが、その付近だけで20ヵ所もあるという。イギリスで、民営化によってレール傷が放置されて起きたハットフィールド脱線死亡事故は有名だが、それがいつ日本で起きてもおかしくないとわかる。その上を、今日も成田エクスプレスは何事もないかのように突っ走っている。イギリスからきた保線員 はそれを聞いて「クレージー」とあきれる。それでも「稼ぐ」ことが使命のように走りつづけているのが現状だ。

 ここでは尼崎事故に危機感をおぼえた国労、動労千葉の組合員が、それぞれ自らをカメラにさらしながら、事故がなければ口をつぐんでいたであろう体験や問題を証言している。 それらの一つひとつから追いつめられた労働者の叫びがきこえてきた。例えば、何人かの運転士が、120キロの制限速度区間であれば、120キロ出して走らなければ定時に間に合わないと、時間にがんじがらめの実態を明かす。破断があっても走れと命令されて走ったこともあったと告白する。そこで、こんなインタビューを受けて会社から嫌がらせがないかと取材者が尋ねると「覚悟している」「きちんと思ったことを発言していく」と顔を硬ばらせて決意を語る。必死さが画面ににじみ出ていた。抵抗するかれらにわたしは勇気づけられた。

 また保線の孫請け労働者へのインタビューでは、1ヶ月昼夜40日分働いたという話に驚かされたが、そこで挿入されるかれらの深夜労働のシーンも見応えがあった。

 ともあれ、全編をとおして、会社の管理と日常的にたたかわなければ、乗客の命さえ守れないことを改めて痛感した。と同時に、JR民営化の欠陥を構造的に浮き彫りにしたことで、それがひとりJRだけの問題としてではなく、いま小泉が絶叫している「構造改革」の矛盾にも光をあてたことだ。見事である。

(『労働情報』2005年9月15日号より転載)

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