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パネリストへのインタビュー

「大企業と大国による『アジア統合』に意義あり!」 人々のアジアを足元からつくる6・17シンポジウム終了後、 海外の状況を報告した3人のパネリストに取材を行った。 下にその一部をまとめる。 各国の状況は異なるものの、根底にある問題は共通していて、取材中は終始、 3人とも互いの意見にうなずくという状況だった。 「自由貿易により誰が得をするのか」 「お金より何よりも食を考えることが1番大事ではないか」など、 日本で暮らす私たちも考えなくてはならない点が指摘された。

FTAやEPAに反対するのはなぜですか?

ブルガナンさん(フィリピン): 反対するのは、「不公平な協定」で「地域の人びとの生活を脅かす」からです。 例えば関税率の引き下げです。関税は国内の製品・人びとを守るために設けられています。 それなのに、貿易障壁だからといって取り除くとなると、そこにはフェアでない競争が生まれます。 力のない国が、力のあり余る国に対抗しなくてはならないのです。 その結果どうなるか。 失業や、本来であれば誰もが受けられるはずの医療などのサービスが、一部企業によりコントロールされることになります。 人びとの生活にマイナスの影響をもたらすのです。

ナリンタックさん(タイ): 自由貿易によって得をするのは一体誰でしょう。 農民は得をするどころか損をします。 生産コストが上昇し、借金を払い戻すことはどんどん難しくなるからです。 タイでは「自由貿易」は最初、「近代化」という名で推進されました。 次は「開発」という名のもとに進められ、その結果、人びとは苦しめられています。 富や幸福を、お金という尺度だけで測っていいのでしょうか。 教育や質の高いサービスを受けることも富や幸福であるはずです。 自由貿易を考えることは、ただ単にお金を考えることではありません。 モノや労働、人びと、そういったすべてのことを考えなくてはいけません。

WEF東アジア会議が一昨日、昨日と開催されましたが、その結果についてはどう思われますか。

ブルガナンさん(フィリピン): WEFの言う経済的連携を強化しようという方向には賛成できません。 WEFには、自由貿易の推進は、実は逆に社会を分断するものであることを伝えなくてはいけないですね。 WEFが会議を開くのは、会議を開いた事実を重ねることで、グローバル化を正当化しようとしているように見えます。

それから、WEFの対応がひどいと感じた出来事があるので、その話もさせてください。 WEFは自分たちを非営利の団体だと言い、あたかも私たちNGOと同じですという顔をしていますが、 一昨日、WEFの会場に申し入れに行った際、WEF側は私たちを警戒し、対応してくれたWEF事務局の人は名前を名乗らないのです。 しかも、私たちが本当に帰るのを見届けるため、電車に乗るところまで警備員がつけて来る有様です。あきれました。

ビョン・ジョンビル氏(韓国): WEFは、私たちとは全く違う方向に進んでいます。 彼らが行き着く先、それがもたらすものは、先ほどシンポジウムでもお話したとおり、負の側面ばかりです。それはもうよくわかっています。

日本では、自由貿易の負の側面は、主流メディアで取り上げられることはほとんどありません。皆さんは負の側面を、どのような活動を通じて一般の人に伝えようとされていますか。

ブルガナンさん(フィリピン): フィリピンでも、主流メディアでそういった問題が取り上げられることは、ほとんどありません。 自由貿易をめぐる議論は、とても技術的です。 使われる用語も特殊で、法律もわからないと理解できません。 ただ、本来は社会全体が興味を持ち議論すべき内容です。 政府は社会的議論にしたくないので、技術的で難しいままにしておこうとしていますが。 なので、私たちが自由貿易に関して伝える時は、なるべくシンプルに噛み砕くことに気を付けています。 食べ物や職など身近な切り口で、ラジオや漫画、ビデオ、CDなどの媒体を使い伝えています。 もちろん伝わりやすいタガログ語などローカルな言葉にしています。

ビョン・ジョンビルさん(韓国): 韓国では貿易に関係している労組が中心になり、反WTOの運動を起こしています。 ビデオやチラシなどを使う点はフィリピンと同じですが、韓国の特徴とも言えるのがメディア活動家たちの存在かと思います。 グローバル化に反対する人びとの声を伝えるメディアが必要だという視点で彼らは活動しています。 2005年の香港WTO閣僚会議の際には、香港にメディアセンターを立ち上げ、そこからデモの様子など主にウェブサイトを通じて情報を伝えていました。 また、興味を持ってもらえるよう、ドラマや広告仕立てにしたり、アニメーションを使 うなどの工夫がなされていました。

ナリンタックさん(タイ): タイでもコミュニティーラジオなどを使い問題を発信しています。 また、2005年秋に6カ国協議がチェンマイで行われた際には、大きなデモを行いました。 いろいろな人びとが自由貿易の問題に興味を持ち、その力が終結されたためデモへと発展したわけですが、このデモがニュースで、私たちの医療システムに影響してくるのだという視点で伝えられたため、社会の関心も一気に高まりました。

人びとの側に自由貿易に反対する声があっても、それが国の政策に反映されないという状況ですね。

ブルガナンさん(フィリピン): 大統領の責任は大きく、辞任させなければいけないと思っています。 加えて、市民側も根気強く問題に取り組んでいく姿勢が必要です。 経済界は利益追求を実現させるためなら、何年かかろうともそれに取り組みます。 それが資本の力というものです。それに対抗しなくてはなりません。

ビョン・ジョンビルさん(韓国): 韓国も米韓FTA推進など、 ノ・ムヒョン政権の政策は良からぬ方向に進んでしまっています。

ナリンタックさん(タイ): タイも首相の責任が大きい。私たちパネリスト3人とも、 本当にひどい代表者を持ってしまった国ですね(笑)。

タイはこのままの路線で進むと、本当に、人びとに「選択の余地」というものが残されない社会になってしまいます。 例えばロンガン(竜眼)というフルーツの場合、中国への輸出は、地元の中小仲介業者が締め出され、一部の中華系業者が安い値で買い叩いた後、独自ルートで0%の関税で中国に運ぶ、という状況になっています。 当初謳われていた市場の拡大は、一部の人のみが利益を得る形で実現しているのです。 輸入の面を見ると、確かにリンゴやブドウなど「高級な」フルーツが「安価で」手にはいるようになり、消費者には喜んでいる人もいます。 しかし安いというだけで選び始めたら危ないのではないでしょうか。 勿論、農薬などの安全性の問題もありますが、地域で作られたものを食べることや国産を選ぶ意味を考えてみないといけません。 アジアは食べることや食べるものに重きを置いてきました。 やはり、お金よりも何よりも、食を考えることが一番大事なのではないでしょうか。 そして、選べる権利を守り抜くようにしないといけないと思います。

ありがとうございました。

取材/整理: 617取材団(遠藤)


Created byStaff. Created on 2006-06-24 18:52:34 / Last modified on 2006-06-24 19:06:53 Copyright: Default

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