6月15日の夜、総評会館でアジアからの三人の活動家を招き、20名以上の日本の参加 者とともに、今後のアジアにおける反グローバリゼーション運動についての会合がも たれた。まず、韓国のジョンピルさんは、「KoPA(自由貿易協定・WTO反対国民行 動)」の発展的解消から「韓米FTA阻止汎国民行動」の結成にいたる経緯を話した。 現在では農業、労働、映画産業などの14の分野に分かれ、300近くもの団体が参加し ているそうである。次に、フィリピンのジョセフさんから「ストップ・ザ・ニューラ ウンド・コアリション」を中心とした反WTO(世界貿易機関)・FTA(自由貿易協定) ネットワークの説明があった。さらに、タイのキンコンさんからは、タイ米FTAを きっかけにして「FTAウォッチ」が結成されたプロセスが語られた。
これら三ヶ国のWTO・FTA交渉に抗議する民衆ネットワークは、ここ数年の交渉の本格 化に対応して結成され、交渉の広がりとともに当初よりも争点を拡大し、労働、農 業、女性、消費者、野宿者、反グローバル化など複数の社会運動団体を包括する点で 共通している。そして日本の「脱WTO草の根キャンペーン」も、規模こそ異なるもの の、結成の経緯からネットワークの構成まで、多くの重なりを持つ点も確認された。 続いて来日中の「HKPA(香港民衆連合)」のメーベルさんから、去年のWTO香港閣僚 会議への抗議行動をきっかけにして、国内の反WTO・FTA運動体間の連携が深まったと の報告があった。
韓国、フィリピン、タイ、香港、日本の運動状況の報告後に、開催中のWEF(世界経 済フォーラム)東アジア会議に象徴される、自由貿易地域として東アジア共同体を構 築する動きにどのように共同の対応をするかが話し合われた。ジョセフさんは、FTA やEPA(経済提携協定)交渉の情報交換、協定で被害を受ける個々のセクター間の連 携、大使館などへの同時行動、という三つの提案をおこなった。現状ではこれらの提 案をすぐに実践できるわけではないが、情報交換と準備はすぐにでもできるのではな いか、との意見が出た。
さらに日本側の参加者は、WTOやFTA交渉では、官僚が情報を隠すので、交渉状況が把 握できないという悩みを話した。各国の参加者にとっても、この悩みは共通であっ た。ジョセフさんは、野党の議員を通じて情報公開を迫り、裁判所に訴えることもあ ると教えてくれた。メーベルさんは、WTOのリクエスト&オファーなどの情報を国際 レベルで共有することの大切さを話してくれた。
最後にこれからの国境を超える提携を確認して、会合は幕を閉じた。日本というアジ アの経済大国にも、WTOやFTAによって不安定な生活を余儀なくされる人びとは数多く いる。かれらの声を集め、アジアの運動とつなげることの必要をあらためて痛感させ られた。