Home | News | Articles | Links | about us

世界経済フォーラム東アジア会議とは

世界経済フォーラム(WEF: World Economic Forum)は、企業人や政治家、学者などの著名人を集め、 スイスの高級リゾート地であるダボスでフォーラム開催することから「ダボス会議」とも呼ばれる。 ジュネーブに本拠を置くこのフォーラムは、欧米の多国籍企業を中心に約1000社の企業や団体が加盟している。

WEFの目的は、「政治、宗教、地域からの不偏中立、非営利を信条として、世界経済の発展と協調の促進、新しい理念と専門知識の共有の促進、諸政策やプロジェクトの推進の為、独立的、継続的に非公式のフォーラムの場を提供すること ( 経済同友会のサイトより )」。 このフォーラムが欧米の多国籍企業を中心とする会員により構成されること、言い替えればフォーラムへの参加が許される人々の多くが先進国の多国籍企業の関係者であることを考えあわせれば、WEFが掲げる一見崇高な目的の真意が読み取れよう。 いわば世界的な富豪たちの私的な情報交換の場であり、また、彼らの活動 −つまり国境を超え、いかに多くの富を我が物とするかというゲーム− をさらに拡張するための戦略を話し合う場である。 「政治、宗教、地域からの不偏中立」の信条は、つまり金にならない政治、宗教、地域などは彼らの関心外だということを言明し、「非営利」の信条はすべてを破壊しつくす彼らの貪欲な経済活動の対象から自分たちだけは例外とすることを言明するものだ。 彼らは「世界経済」、つまり自分たちの利益を発展させるために、いわゆる新自由主義経済とか市場原理主義と呼ばれる「新しい理念」や「専門知識」を共有し、促進し、搾取のための「諸政策やプロジェクト」を論じる。 一言でいえば、WEFとは、この私的フォーラムへの参加を許された特権的エリートたちの利益を貫徹するための場なのである。

WEFの日本におけるパートナーである日本の財界団体の経済同友会が、2006年6月15-16日(木-金)に東京プリンスホテルのパークタワー(東京都港区)で「アジアの統合に向けた新たなる枠組みの構築」をテーマとして開催した会議が、『世界経済フォーラム・東アジア会議2006』である。 この会議には、日本、中国、韓国、インド、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国など27カ国から企業経営者や政府関係者ら約300人が参加した(朝日新聞)という。

期間中、いくつかの国際会議が行われ、その様子はインターネットを通じて公開された。 その内容については、WEF自身が WEF東アジア会議 のサイトに概要をまとめている。彼らが東アジア地域の最優先課題として選んだ項目には、いかなる民衆的視点もない。東アジアで急速に深刻化する社会の二極化や、劣悪な人権状況、コミュニティの破壊など、東アジアの民衆の生活を脅かす問題点には目もくれようとしない。

しかし、こうした国際会議や公式のイベントは、お祭りにつき物のショーのようなものだ。マスコミの記者に記事のネタを提供するための非営利公共事業かもしれない。 WEFの本質はこれらの国際会議ではない。むしろ、会議に集まった東アジアのVIPたちが公式スケジュールが組まれていない時間帯に集まって行う密談の時間こそ、この会議の核心部分だ。 そこで何が話され、どのような取引が行われたのかは、まったく秘密のベールにつつまれている。 その内容は、決してマスコミで報道されることはない。 東アジアの民衆の生活を大きく左右する「彼ら」の経済活動に関する何らかの重大な話し合いが行われたにもかかわらず、だ。

6月17日、東アジアからのゲストと80人ほどの参加者を集めて東京文京区民センターで開かれた「大企業と大国に異議あり! 人々のアジアを足元からつくる6・17シンポジウム」や、それに先だって行われた6・15戦略会議は、「彼ら」の密談に対する民衆の抵抗の表現であり、彼らの破壊行為に対抗する民衆側の「新しい理念と専門知識の共有」が話し合われる場だったのである。

あまりにも小さな抵抗だったかもしれない。 だが一連の対抗イベントを通じて、「世界経済の発展」の影で苦しむ東アジアの民衆は、日本で、韓国で、フィリピンで、タイで、そしてその他の多くの国で、小さな抵抗の意志を結集しつつあることを確認することができた。 そのことが持つ意味は、決して小さなものではない。

文責: 安田(ゆ)


Created byStaff. Created on 2006-06-24 03:31:49 / Last modified on 2006-06-24 05:08:07 Copyright: Default

著作権・文書使用について