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From Sand to Ash:Another Family

[ワーカーズ]写真

シン・ウンジェ 2019.06.25 15:13

2018年11月23日、韓国プレスセンターの国際会議場で、 サムスン電子の代表理事社長(現副会長)のキム・ギナムが サムスン電子半導体とLCD工場の被害労働者たちと遺族らに謝罪文を朗読した。 キム社長は会議場に参加した被害当事者に腰を90度に曲げて謝罪した。 被害者はこれに対し、涙と深いため息、そして静まらない怒りを見せた。 双方の握手、そして謝罪と受け入れの場を終えて協約式の記念写真撮影が続いた。 紛争の終結を知らせる記事があふれた。

しかし果たして 「終結」したのだろうか。

11年。 サムスン電子の代表から公式に謝罪を受けるまでに 被害者と家族が闘争してきた時間だ。 サムスンが半導体とLCD工場の労働者たちの安全を放置して、 彼らの危険と死を意図的、組織的に隠してきた行為を世の中に知らせる闘争は、 急性白血病で亡くなったひとりの「半導体工場労働者」の死から始まった。 2007年3月6日、急性白血病を病んでいたファン・ユミ氏は、 タクシー運転手のお父さん、ファン・サンギ氏が病院へと運転するタクシーの中で 23歳の年齢で息をひきとった。 この死に対し、何の責任も負わず、その上、事実を歪める会社に怒ったファン氏は、 必ず真実を明らかにするぞと約束し、サムスンとの闘争を始めた。 [1]

この闘争はとても遅く、しかししっかりと人々に知られ始めた。 別の被害者たちが自分たちの存在を世の中に知らせ、 一人だった戦いは被害者すべての戦いへと大きくなっていった。

生き残った被害者たちと、被害者を失った家族たちは、 11年間多くの巨大なものたちと戦わなければならなかった。 サムスンは強大な権力で彼らが犯した行為を絶えず矮小化して隠し、 労働者を使用者側から保護して支援すべき勤労福祉公団は、 被害者の労災申請の不承認を続け、裁判所は被害者の訴訟を棄却した。 こうした不当性を伝えるべき国内の大きなマスコミのほとんどは、 決して最大広告主の気持ちを傷つけるような報道はしなかった。 その上、一部の人々は被害者が大韓民国経済の大黒柱にあえて逆らっていると非難して、 不純団体の扇動だ侮辱しさえした。 さらに加えて、2013年にやっと始まった被害者とサムスン間の交渉は、 2年も経たずに失敗に終わり、被害者の間にも亀裂ができて瓦解が起きた。

それでも、残った人々は決して屈することなく闘争を続けた。 幸い、ますます多くの人々に彼らの声が伝えられ、 共感して連帯する声も大きくなっていった。 小さかった声はやがて大きな響きになって、 サムスンの公式の謝罪と補償を引き出すに至った。

〈Another Family〉。 2013年から続けてきたこの作業は、被害者の苦痛と死、勇気と闘争、 尊厳と不屈の精神についての写真記録だ。 作業を始めた当時の目標は単純明確だった。 被害者にどんなことが置きたのか、特定の「フレーム」に偏らず、 ただカメラを通じて直接目撃し、写真で記録すること、 その結果をできるだけ多くの人々に伝えることによって、 彼らの考えと行動の変化を要求すること。

知人のひとりは忠告した。 「なぜこんな作業をして自らの経歴をおかしくするのか? 岩にタマゴを投げたところで、シミもつけられずにめちゃめちゃになるだけだ。 岩はびくともしない。 それでも黄身であれ白身であれ、岩にくっつけたけれど止めはしない」。 この言葉に反論しなかった。 「岩にタマゴを投げること」だから。 しかし一個ではなく、数個、数十個、さらに数百個、数千個を投げれば、 その岩はタマゴでぐちゃぐちゃになるだろう。 そうすれば人々はタマゴでぐちゃぐちゃになった岩を見て、 何が起きているのかと疑問を持ち始めるだろう。

この作業が、多くのタマゴの中の一個の役割でもしっかりできたのかは確実ではない。 だが、今や何が起きたのか、世の中が知ったのは確実だ。

また2018年11月23日。 謝罪文の発表と協約式を終えるにあたり、サムスンと被害者が集合写真を撮る。 この写真は公式日程上「記念写真」と呼ばれるが、 その前に紛争が一段落し、双方が協約書に署名して握手をしたことを世の中に知らせる証拠写真として作動する。 この写真が本当の「記念写真」になるには、被害者の深い苦痛と多くの死、 これを世の中に知らせるために絶対的な力の前でも屈しなかった 人々の勇気と意志が忘れられてはならない。 労働者の人権と安全が保障されなければならず、 これを無視する企業に対する非寛容的な処罰が従わなければならない。 蛮行を未然に防ぐために、徹底的な監視が作動する制度も韓国社会に定着しなければならない。 その時、この写真は韓国社会が一歩進歩したことを「記念」する写真になり、 市民各自の自覚と行動を引き出す触媒剤としても作動するだろう。

全てが解決したと言われた瞬間、人々は何が問題だったのか、 それによってどんな対立と衝突、そして犠牲があったのか、 それらがどう解決されたのかなどを振り返るのではなく、 ただ全てを忘却し始める。 忘却は問題に対する事由と共感、そこから始まる行動の変化を侵食し消滅させることにより、 同じ問題と悲劇を繰り返させる。 何よりも、問題を起こした加害者は忘却を促進し、これは加害者が持っている力に自乗比例する。

サムスン電子半導体とLCD工場の被害労働者たちと家族らの11年間の話は、 今までよりもさらに語られなければならず、記憶されなければならない。 それは私たちそれぞれの責務だ。 「自覚することが私たちが持っている唯一の力だから」。 [2]

[1] 〈半導体労働者の健康と人権守備隊パノルリム〉が集計した資料によれば、サムスン電子半導体、LCD、系列会社などで 白血病、脳腫瘍、乳ガン、多発性硬化症などの難病にかかった被害者数は、 2019年5月基準559人に達し、このうち174人が死亡したことが把握されている。 これに対してサムスン電子が被害者のための補償として用意した金額は500億ウォンだ。 これはサムスン電子の2017年営業利益の0.09%で、8時間で稼げる金額だ。 納得するには不充分な数字かもしれないが、私たち自らが覚醒するには十分な数字だ。

[2] "To cause awareness is our only strength." W. Eugene Smith、from Minamata、1975.

[ワーカーズ56号]

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2019-07-04 06:00:19 / Last modified on 2019-07-05 20:28:55 Copyright: Default

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