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News Item 201902006
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医療民営化、ブレーキなくアクセルを踏んで行く

[ワーカーズ・イシュー(3)]文在寅政府、遠隔医療導入と医療データ活用まで…「朴槿恵医療政策深化」

パク・タソル、ユン・ジヨン記者 2019.02.13 09:51

▲2018年6月15日、韓国経営者総協会(略称経済人総連)が営利病院の設立許可および遠隔医療許容を要求
▲7月19日、政府部署が協同で「革新成長拡散のための医療機器分野規制革新および産業育成方案」発表
▲8月16日、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が5党院内代表との青瓦台昼食で「医療恩恵がつきにくい島嶼僻地の患者に対する遠隔医療は善良な機能」発言
▲9月20日、共に民主党、自由韓国党、パルン未来党の3党幹事の合意で『地域特化発展特区に対する規制特例法全部改正法律案(略称規制特区法)』が国会本会議通過

▲文在寅大統領が企業家とヘルスケア、半導体、輸出、対北朝鮮事業などに対して話しながら青瓦台の庭園を散歩している。[出処:青瓦台]

前の朴槿恵(パク・クネ)政権は「規制緩和」の名で医療民営化を推進した。 医療法人の営利子会社設立を認め、営利付帯事業を拡大した。 新医療技術評価を簡素化して臨床試験規制を緩和した。 規制が解かれると、幹細胞を筆頭に各種医薬品と化粧品、医療機器、医療サービスなどがあふれ出た。

そして現在、文在寅(ムン・ジェイン)政府は「改革、革新課題」の名で前の政権の医療政策をそのまま継承している。 政府が「医療産業の規制緩和」を叫んだ医療資本と一つの船に乗ったのは昨年の夏だ。 昨年6月8日、第一次革新成長関係長官会議で当時金東ヨン(キム・ドンヨン)副総理は規制緩和に対する政府の意志を見せると公言した。 つまり韓国経営者総協会は 「営利病院設立許容と遠隔医療規制改善など9件の革新成長規制改革課題」 を企財部に建議した。 その後8月16日、文在寅大統領は「善良な機能」に言及して「遠隔医療」が必要だと言った。 1か月後の9月20日、共に民主党、自由韓国党、パルン未来党の3党幹事合意で 「地域特化発展特区に対する規制特例法全部改正法律案(略称規制特区法)」 が国会本会議を通過した。

保健医療市民社会団体は即刻反発した。 「規制特区法は病院資本が病院を売買できるようにし、 付帯事業を無制限にできるようにし、 国民の生命と安全関連法を緩和して企業に金儲けができるようにする悪法中の悪法」として撤回を要求した。 規制特区法は特定地域に限って新技術を適用した製品やサービスの規制を解除する法案だ。 市・道知事に規制自由特区計画を作る権限を付与し、 中小ベンチャー企業部長官には規制自由特区の承認権限を持たせた。 自治体長が任意に新事業と規定すれば、 既存の法も適用されない特典を受けられる。 国民の生命と安全、環境に影響をおよぼす事業もブレーキなしで市場に出て来ることができる。

(1) ヘルスケア特別委、企業の直訴の鐘?

朴槿恵(パク・クネ)政権が医療民営化を「創造経済」と呼んだとすれば、 文在寅(ムン・ジェイン)政府はこれを「4次産業革命」と呼ぶ。 政府は全世界のビジネスリーダーが4次産業革命の最大の恩恵分野としてヘルスケアを選んだとし、 ヘルスケア産業への支援を予告した。 国民健康を増進し、新しい雇用まで創出する一石二鳥の事業だと広報した。 2017年12月、4次産業革命委員会傘下のヘルスケア特別委員会はこうした背景で作られた。 彼らは1年間、4次産業革命対応計画を模索すると明らかにした。 だが実際には産業界の要求をそのまま受け入れて政府に伝える「パシリ」でしかなかった。 まるで1年ですべてやるかのように、内容は実にぼう大だった。 そしてこの1年間、委員会は文大統領から医療機器分野規制緩和を引き出した。 体外診断機器は新医療技術評価を経ずに迅速に市場進入が可能になり、 国内市場に発表が不可能だった融複合医療機器の許認可や流通も可能になった。

2018年6月、ヘルスケア特別委員会はスマートヘルス分野の6つの主要課題推進計画を明らかにした。 保健医療ビッグデータ、新薬開発および臨床試験、医療機器規制緩和などが重点課題だった。 医療民営化の決定版の遠隔医療導入と医療ビッグデータ活用なども要求した。 チャン・ビョンギュ4次産業革命委員長もこれを強調した。 いったいなぜ政府委員会で医療資本の利害を代弁する政策を吐き出すのか。 医療産業界の人々が大挙布陣するヘルスケア特別委構成を見ればその答えが見つかる。

ヘルスケア特別委員会は1人の委員長、 10人の産業界委員、7人の学界委員、3人の研究界委員、4人の政府部署委員で構成されている。 そのうち産業界の委員の不透明な選定過程と代表性は、常に論議の的だった。 実際に産業界委員10人中7人は、医療機器・体外診断機器業界の出身だ。 規制緩和の直接の利害当事者であるわけだ。 こうした理由でヘルスケア特別委の発足後、 7月には医療機器規制緩和対策が大挙出てきた。

学界委員で委嘱された教授の一部は関連企業に身を置いている。 特にセウォル・セウォンテックのチャン・ジョンホ代表が幹細胞分野の公式の代表者として参加しているが、 幹細胞技術開発企業と関係がある人々が委員長や学界代表として委嘱された。 まず特別委委員長のパク・ウンヤン成均館大医大教授は、 サムスン誘電体研究所で誘電体分析システムを開発している。 またマクロジェンという生命工学ベンチャー企業専門業者に2006年から3年間、 社内理事として在職していた。 マクロジェンは個人遺伝情報分析、疾患予測および診断用遺伝子発掘、幹細胞技術開発に集中する会社だ。

ソウル大歯医学大学院のパク・ユンジョン教授は2016年に株式会社「ナイベク」で 経営開発企画本部長、専務理事などをしていた。 ナイベクはペプチドヘルスケアの専門企業で、 医療用品およびその他の医薬関連製品の歯美白剤、歯科用骨移植材の製造事業をはじめ、 化粧品事業までしている。 パク教授はナイベクの株式4.20%を保有している。 ソウル大薬学大学のオ・ジョンミ教授は「ハイムバイオ」で臨床諮問委員をしている。 ハイムバイオは次世代の抗ガン剤新薬開発、健康機能性製品開発、スマートヘルスケアなどの事業をしている。 オ教授は2011年から1年間、医療機器販売会社のNKバイオ(現セルテク)の社外重役だった。

健康な世の中ネットワークのキム・ジュニョン共同代表は昨年8月27日、国会で開かれた「文在寅政府の保健医療『革新成長論』何が問題か?」の討論会でヘルスケア特別委の問題を指摘した。 キム共同代表は「文在寅政府の規制緩和方式は、 前の政権より脅迫的だ。 『先進入-後評価』方式の包括的ネガティブ規制を国民の生命と直結する保健医療分野に全面適用した」とし 「特定産業体の要求を根幹として経済部署を中心に規制緩和の枠組みを作り、 保健医療関連部署を競争させるように産業界の要請を根拠にこれを支援して、実行手段を講じる方式で展開する形」と指摘した。

▲文在寅大統領が医療機器産業分野革新方案を発表するために盆唐ソウル大病院ヘルスケア革新パークを訪問した。[出処:青瓦台]

(2)医療機器、手当たり次第に規制解除

昨年7月19日、政府は関係部署合同で 「革新成長拡散のための医療機器分野規制革新および産業育成方案」を発表した。 核心は医療機器の市場進入時間を最大限短縮させることだ。 これにより新医療技術評価手続きを現行の280日から250日に短縮し、 保険登載審査と新医療技術評価を同時に進めるなどの方案を用意した。 人体への安全性の憂慮が少ない医療機器に限り「包括的ネガティブ規制」を導入する政策もあった。 例えば体外診断検査分野の場合、事前評価から事後評価に転換し、 開発から1年以上かかっていた市場進入(最大390日)を80日ほど(最大310日)大幅に短縮させる。 体外診断(In Vitro Diagnostics)製品では、 妊娠診断試薬から、危害性が高い輸血用感染疾患(HIV、HBV、HCV)選別試薬、 血液型確認試薬、インフルエンザ感染診断試薬、腫瘍検査試薬まで多様だ。

保健医療団体連合のチョン・ジナン政策局長は 「評価手続きから脱落してきた不十分な医療機器をなんとかして市場に進入させるという企業の要求を反映した政策」とし 「不要な診断機器が導入されると患者は過度な検査にさらされ、 それによる医療費用を支払うことになる」と警告した。 体外診断機器の規制緩和は遠隔医療の先行条件とされる。 遠隔医療が活性化されると最大の市場拡大が予想される装備でもある。

遠隔医療拡大の動きもまた続くものと見られる。 12月17日に関係部署合同で発表した 「2019年経済政策方向」は、遠隔診療拡大の内容を含んでいる。 1次医療機関で慢性疾患者に対してスマートフォンなどを活用した非対面モニター事業を推進し、 患者の健康・生活をモニターして連携型教育・相談などの患者管理サービス提供するという。

(3)患者情報の解除

企業が個人の健康および疾病情報を合法的に取得する日もあまり残っていない。 文在寅政府はバイオ・ヘルス産業活性化などを名分として、 個人情報保護法の「敏感情報」に分類される健康情報まで規制を解く規制革新にも速度をつけている。 こうなると、民間の保険会社は個人の健康情報を活用して連携型保険商品を設計したり、 保険加入した時に保険金をあげて利益を創出できる。 病気が多い人は保険加入を拒否することもできる。 民間の保険会社にとって「保健医療ビッグデータ」は、それこそ黄金の卵を生むガチョウだ。

昨年10月4日、文在寅大統領が参加して開かれた雇用委員会会議では 「個人医療データ活用範囲具体化」が規制革新方案の一つに選ばれた。 バイオ・ヘルス産業が活用する保健医療ビッグデータを構築しようという趣旨だ。 このための制度改善方案として、保健福祉部は今年上半期に 「健康情報の保護および活用に関する法律(仮称)」を作ることにした。

▲〈データ産業活性化戦略〉より 2018.6.関係部署合同

政府は機関から自分の情報を直接ダウンロードして、第三者への提供を認める方式なので、 個人が情報の主体になる法律だと主張する。 これを「データ移動権確立」、「国民のデータ主権獲得」と表現したりもする。 だが保健医療団体は 「マイデータ事業は自分の医療情報を自分が受け取り、個人的に使えるという条件を便法に利用するもの」とし 「包括的同意方式で十分な説明や告知なく、多数の個人健康診断記録が第三者に自動転送される憂慮もある」と指摘する。

産業通商資源部も39の大型病院の5000万人の患者個人情報に対する 「バイオヘルス・ビッグデータプラットホーム」構築事業を2020年までに完了し、 企業の商業的な活用および海外進出を試みている。 この事業も情報主体の同意なく39の医院長の同意だけで事業がすでに進んでいる。 一方、企財部などの関係部署は今年上半期にもサービス産業活性化対策を発表する予定だ。 ここには医療を含み、観光、物流、ゲーム・コンテンツ産業など四つの分野の活性化方案が主要内容に入る展望だ。(ワーカーズ51号)

10年前、サムスンによる未来の食い扶持「バイオ、制約」

政府の規制緩和、サムスンの大きな絵中に

新しい成長動力が必要だったサムスンは、 2010年にバイオ産業を5大新樹種事業として本格的な事業軸を用意し始めた。 李健煕(イ・ゴニ)サムスン電子会長は、サムスンの未来の食い扶持を探す 新事業推進団の関係者に対し、 今後10年間に太陽電池、自動車用転地、LED、バイオ制約、医療機器などの 親環境および健康増進事業に23兆3000億ウォンを投資して集中的に 育成するよう注文した。

翌年、サムスンはバイオ医薬品開発業者の サムスンバイオロジックスとサムソンバイオエピスを設立した。 サムスンバイオロジックスはバイオ医薬品を委託生産する事業(CMO)を引き受け、 サムソンバイオエピスはバイオシミラー(複製薬)研究開発事業に集中した。

天文学的な費用と時間が必要になるバイオ産業の特性上、 サムスンバイオロジックスは赤字続きだったが投資は続いた。 3万リットルの生産能力を持つ第1工場に続き、 2013年には15万2000リットルを生産可能な第2工場に着工し、 2015年には18万リットル生産可能な第3工場を建設し始めた。 第3工場の竣工で、サムスンバイオロジックスはグローバル1位のCMO企業に跳躍した。

サムスン・バイオエピスも途方もない投資が続いた。 バイオシミラーを開発して得たR&Dノウハウに基づいて、 今後は新薬にも挑戦するという構想だった。 244億ウォンほどをかけてサムスン物産などからR&Dセンター施設を取得した。 2012年の会社設立以後、2017年までに投資したR&D費用は9000億ウォンを越える。

サムスンのバイオ産業の安定化は、 政府と業界で集中しているスマートヘルスケア産業の基盤になった。 サムスンはグループ次元でサムスンバイオロジックス、 サムスンバイオエピスなどのバイオ・製薬分野と、 サムスンの他の医療事業間のシナジーを模索している。 サムスン医療院が医療サービスを、サムスンSDSが遠隔医療プラットホームを、 サムスン電子がモノのインターネットと各種電子チップ技術を、 サムスンバイオロジックスが連携型医薬品生産を、 サムスン生命が保険を担当して、 高付加価値の医療産業でサムスン系列会社間の協業でシナジーを極大化するという構図だ。

2015年12月、サムスンはグループ内から「解決者」と言われる チョン・ドンス前三星SDS社長をサムスン電子医療機器事業部長に任命し、 スマートヘルスケア事業の準備に拍車をかけた。

政府に規制緩和を要求することもスマートヘルスケア事業準備の一環だ。 2009年、サムスン経済研究所は保健福祉部から用役を依頼され 「未来福祉社会実現のための保健医療産業先進化方案」を発表した。 報告書の核心は健康管理サービスの市場化と遠隔医療の導入だった。 朴槿恵政権に続き 文在寅政府も 昨年から産業界関係者の要求を受け、 遠隔医療のための規制緩和課題を点検している。

サムスンだけが享受できるもっと露骨な要求がやりとりされている。 昨年8月、サムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)副会長は、 サムスン電子平沢工場を訪問した金東ヨン(キム・ドンヨン)企画財政相との懇談会で バイオ製薬分野を「第2の半導体」に育てるとし、 薬の価格が市場で自律的に決められるようにしてくれと要請した。 3日後、キム副総理は「医療関連規制」が規制革新リストの 優先順位にあるという意向を表明し、規制緩和に対する期待を熱くした。

最近の政府の保健医療ビッグデータ推進の動きは、サムスン生命に好材料だ。 ビッグデータは保険審査に活用したり、 新薬や健康管理サービスなどを開発する絶え間ない収益創出源だからだ。 市民社会はこのような政策が個人情報の流出や健康不平等の深化、 企業の利益独占を呼ぶと反発している。 だが政府は個人情報関連法を改正しなくても、 個人が機関から自分の情報をダウンロードして健康管理サービス業者に提供し、 これを通じてリアルタイムの健康管理を受ける「マイデータ」試験事業を推進中だ。

2005年に公開された「サムスン生命内部戦略報告書」によれば、 サムスン生命の最終目標は「政府保険を代替する包括的保険」だ。 これは通常、医療民営化の終着点と呼ばれる。 サムスンは「定額方式のガン保険(1段階)」 → 「定額方式の多疾患保障(2段階)」 → 「後払い方式の準実損保険(3段階)」 → 「実損医療保険(4段階)」 → 「病院に関する部分競争型(5段階)」を経て、 最終的に民間保険が政府保険を代替する計画をたてた。

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2019-02-20 20:27:52 / Last modified on 2019-02-20 20:34:44 Copyright: Default

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