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下請労働者、労災死亡の法則

[ワーカーズ・イシュー2]キム・ヨンギュンが出る前に別のキム・ヨンギュンの死

キム・ハンジュ、パク・タソル記者 2018.12.22 16:25

キム・ヨンギュンの目

「私キム・ヨンギュンは火力発電所で石炭設備を運転する非正規職労働者です。 文在寅(ムン・ジェイン)大統領、非正規職労働者と会いましょう。」

2018年12月11日午前3時32分頃。 ある青年非正規職労働者が惨めな遺体で発見された。 死亡したキム・ヨンギュン(24)氏は韓国西部発電1次協力業者の韓国発電技術に入社して3か月になる労働者であった。 故人の母親は事業場を見て「殺人兵器」だとして嗚咽した。 息子を飲み込んだ殺人兵器をそのままにして置けば死は果てしなく続きそうだった。 故人と同年代の労働者に「お前は生きろ」と話していた遺族は、 死亡の構造的原因を明らかにしようと雇用労働部、西部発電との戦いを始めた。 ベルトコンベアに狭まれたという表面的な死亡の理由ではなく、 この状況を作った本当の原因を知ろうとした。 なぜ危険業務は協力業者非正規職労働者に転嫁されるのか、 人命の値段で削減した利益は誰の腹を肥やしたのかを追跡してみると 本当の原因がわかるだろうと思った。 5つの発電所で2008年から2016年まで、37人の下請労働者が死亡した原因もまたわかるだろう。

プラカードを持つキム・ヨンギュン氏の目を長い間見る。 粉塵を防ぐためのマスクが彼のメガネを少し持ち上げている。 安全帽は黒い石炭粉で汚れている。 もっと近く、詳しく、長く彼の目を見る理由は、 キム・ヨンギュンという青年非正規職労働者の死を長く記憶するためだ。 一日に1人の割合で労災にあって死亡する、もうひとりのキム・ヨンギュンを忘れないためだ。 今日も続く死を防ぐために、われわれは彼の死を長く記憶しなければならない。

ハインリッヒの法則。 大きな事故はある時突然に発生するのではなく、 その前に軽微な事故が繰り返される過程で発生するということ。 「1:29:300の法則」と呼ばれるハインリッヒの法則は、 1人の死傷者が出てくるまでに29人の軽傷者と、 300人の潜在的負傷者を発生させると説明する。

泰安火力発電の下請労働者、故キム・ヨンギュン氏が死亡する前からすでに数え切れない下請労働者の死亡事故があった。 これらの死には「危険の外注化」という一定の法則が存在する。 これは、死がもうひとつの死を生み、その後の対策を無用の物にする。 果たして「非正規職保護」を叫んできた政府と社会は「危険の外注化」に どのような措置を取ってきたのだろうか。 ワーカーズはこの2年間、数え切れず消えて行ったもうひとりのキム・ヨンギュンの死と、 その後の措置を調べた。

#1. 済州現場実習生 故イ・ミノ氏

2017年11月9日、済州道西帰浦市のある高等学校に通っていたイ・ミノ氏が 済州溶岩水を作るある飲料会社工場で現場実習生として働いている時、 製品積載ベルトに頭を挟まれる事故に遭った。 事故10日後の11月19日、結局イ氏は亡くなった。 享年満17歳であった。

事故当日のCCTVを見ると、イ氏はパレット床の合板がきちんと固定されておらず、 ベルトコンベアに上がって合板を押込んだ。 このようなことがよく発生していたかのように、イ氏の行動はなれていた。 イ氏が措置をしていた時、圧搾器が作動して彼の頭にあたった。 前に転んだイ氏の頭と胸が圧搾器とベルトコンベアの間に挟まった。 数分間放置された末にイ氏が発見されたが、設備は15分間止まらなかった。 作業者、管理者の誰も機械を止める方法を知らなかった。 非常停止スイッチを知っている人もいなかった。

「現場実習高校生死亡による済州地域共同対策委員会」が調査した結果、 会社は設備の誤作動にもかかわらず、稼動を続けていた。 感知センサーや防護フェンスのような基本的な安全装置も設置していなかった。 現場実習生なのに危険な作業に単独で配置されたという問題もあった。 今回の事故はイ氏の三回目の事故だった。 7月から現場実習を始めたが、二回目の事故の時には肋骨の怪我で病院に移送された。

死亡事故以後、会社はイ氏が停止スイッチを作動させずに設備内部に入ったとし、 事故の責任を個人の過失にした。 事故発生初期には地元の新聞に契約職職員が怪我をしたと事故を縮小して知らせた。 雇用労働部の現場点検の結果、産業安全分野では合計513件、 勤労監督分野では167件の違反事項が摘発された。 だが2018年1月3日、作業中止命令が解除され、業者は運営を再開した。

イ・ミノ氏の死亡で現場実習生制度に対する批判世論が激しくなると、 教育部は2017年12月1日、早期就職型現場実習廃止案を出し、 2018年2月には学習中心の現場実習計画を発表した。 だが労組や市民社会陣営は「形だけの学習で、 低賃金労働を搾取する手段に変質する可能性が高い」と反発している。

2018年12月28日、会社の代表者、工場長に対する結審公判が進められる。 検察は業務上過失致死の容疑で代表に3年を求刑し、 工場長に禁錮1年6か月を求刑している。 ミンホ氏の父親のイ・サンヨン氏は、労働部の表面的な調査を糾弾して再調査を要求している。 イ氏は「ヨンギュンのお父さん、お母さんにも絶対に疲れて倒れてはいけないといった。 子供たちがベルトコンベアに挟まって倒れた時、何を考えたのかを考えなければならないといった。 今、弔問に来る政治家は信じないとも言う。 結局、遺族の手で変えるしかない」と話した。

[出処:キム・ハンジュ記者]

#2. CJ大韓通運アルバイト大学生キム某氏

2018年8月5日午前4時頃、CJ大韓通運大田物流ターミナルでアルバイトをしていた 大学生キム某(22)氏がベルトコンベアの下を清掃している時に 電気が流れている柱に触り感電した。 一緒に働いていた友人のイ氏が「助けてくれ」と叫んだが、 漏電遮断機は落ちなかった。 ラインが止まったのは感電してから30秒以上経った後だった。 近くの大学病院に運ばれたキム氏は10日後の8月16日に死亡した。

その後、事故の直接的原因になった漏電をめぐり元請と下請が互いに責任を転嫁した。 電気の安全を管理する下請け業者側は警察の調査で 「以前にも漏電があってCJ側に措置するように通知した」と主張したが、 CJ側は「聞いたことがない話」と対抗した。

CJ側には多くの問題がわかってきた。 CJ側は漏電が発生した時、事故を防ぐアースも設置していなかったことが明らかになった。 1万ウォンもしない漏電ブレーカーさえなかった。 死亡したキム氏と友人のイ氏はそこで作業服も着ずに働いてきた。 熱帯夜の中で宅配積載労働者たちは上着を脱ぎ、 葡萄糖2粒と氷物1本をたよりに12時間以上働いた。 雇用労働部の安全保健監督の結果、過怠金総額7500万ウォンのうち CJ側に賦課された金額は650万ウォンに過ぎなかった。 残りの6500万ウォンは故人を雇用した下請企業に賦課された。

CJ大韓通運はこの事故から3か月間でさらに二件の下請労働者死亡事故が発生した。 8月30日、沃天ターミナルで積載業務をしていたキム某氏(54歳)が突然倒れて死亡し、 10月29日には大田ターミナルでユ某氏(33)がバックしてきたトレーラにはさまれて死亡した。 雇用労働部が調べた安全保健監督の結果はすべて非公開になる。 雇用労働部産業安全と関係者は 立場を変えて、自分の事業場で勤労監督とその結果を公表すれば誰が喜ぶかとし、 「私たちの立場を理解してくれ」と話した。

#3. 韓火総合化学大山石油化学団地下請労働者ク・ミニョン氏

ク・ミニョン(27)氏は2018年5月18日、 韓火総合化学大山石油化学団地工場で亡くなった。 ク氏は韓火総合化学下請の(株)ハンスに所属する非正規職労働者であった。 雇用労働部保寧支庁によれば、会社の管理者らは事故当日午前9時37分、 冷却塔(クーリングタワー)内の設備異常を感知した。 電流が異常に低く表示されていた。 冷却塔内の配管が詰まったという信号だった。 管理者は冷却塔の上の踏み台が外れているのを確認した。 ここで設備補助剤の投入作業をしているはずのク氏は見えなかった。

午後1時55分頃、消防署員が冷却塔内の配管(バタフライ配管)に足を挟まれて亡くなっているク氏を発見した。 消防署は冷却塔の水を1時間ほど抜いた後、午後2時55分頃に遺体を収容した。 瑞山消防署が明らかにした通報時刻は12時49分だ。 だが瑞山警察署には当日、韓火総合化学から入ってきた通報はなかった。 ク氏はこの日、作業をして踏み台が落ち、深さ6mの冷却塔に転落した。 踏み台を支えるボルトが腐食していたと発表された。 手摺りはなく、墜落防止網もなかった。 事故当日、雇用労働部保寧支庁は 「事業場で予防できたのに死亡事故につながったのは残念だ」とし 「元下請の関係者を呼んで、安全作業規則を遵守していたかどうかを徹底的に調査し、 法違反事項については司法措置をするなど 厳正な法秩序を確立する」と明らかにした。 しかし保寧支庁は災害調査に労働組合を入れず、その後中途半端な調査報告書をだした。 民主労総世宗忠南地域本部は 「私たちが共有された報告書はA43枚分だった。 報告書には踏み台を新しいものに交替した写真、 安全手すりを設置した写真などがあった。 根本対策の下請構造問題は扱われなかった」と明らかにした。

労働部保寧支庁関係者は今回の事故に関して 「すべて調査をしたが、事件が検察に送られたので、関連内容の公開は難しい」とし 「産業安全保健法違反で元下請関連者4人を起訴した。 作業中止解除も審議委員会を経て、安全措置を用意した」と明らかにした。 だがク氏が死亡してから10日後、大山石油化学団地でもうひとりのポスコ建設下請労働者が高さ30mの構造物で作業していて墜落して死亡する事故が発生した。

[出処:キム・ハンジュ記者]

#4. エレベーター施設管理下請労働者イ・ミョンス氏

イ・ミョンス(21)氏は2018年3月28日の午後4時頃、 イーマート茶山店のエスカレーターに体が狭まれる事故に遭った。 下請業者職員の通報で出動した消防当局は、 すでに息をひきとったイ氏の遺体を収容した。 イ氏は泰光エレベーター所属の労働者であった。 イーマート茶山店はエレベータメンテナンス業務をティッセングループエレベーターコリアに委託し、 この業者はまた泰光エレベーターに再外注した。 死亡したイ氏は特性化高校に通っていて、現場実習として泰光エレベーターに就職した下請労働者であった。

事故当日、イ氏は地下1階で一人で作業しており、もう1人は地上1階で作業中だった。 上と下でそれぞれ2人、合計4人がするべき作業だった。 使用者側は事故以後、双方に2人1組で作業したといったが、これは嘘だった。 使用者側はまた作業前10分間の安全教育をしたと主張したが、 CCTVを確認した結果、これも事実ではないと発表された。 その上、使用者側は安全業務日誌の故人署名まで偽造して、遺族に指摘された。

事故の後、スーパー産業労組はイーマートの外注化問題を提起した。 今までイーマートはエスカレーター他にも美化、保安などの業務をすべて外注化した。 スーパー労組は外注問題改善と安全管理責任者補充などを要求したが、 会社側はこれを受け入れなかった。

#5. SKブロードバンド非正規職労働者イ・ナムジュ氏

2018年4月26日午後4時40分頃、大田のあるアパートの階段でイ・ナムジュ(38)氏が倒れているのが発見された。 イ氏はSKブロードバンド子会社のホーム・アンド・サービスに所属する間接雇用非正規職労働者であった。 イ氏はこの日、一人でアパートIDFのポート連結作業をしているときに脳出血で倒れた。 彼を発見した人は引越荷物センターの職員だった。 発見後すぐに病院に運ばれたが意識は戻らなかった。 それから3日後の午前9時10分頃、イ氏は息をひきとった。

労組は2人1組で働いていれば死亡事故はなかったと主張した。 イ氏は30代で若く、普段持病はなかった。 イ氏が倒れた後、最低10分から最高40分程放置されたのも問題であった。 病院と労組はイ氏が気を失った直後に応急措置を受けていれば死亡に至らなかったと明らかにした。 だが会社はイントラネットを通じ、イ氏は個人の健康上の理由で死亡したと責任を回避した。 労組はホーム・アンド・サービスが子会社に転換される前から2人1組勤務を要求してきた。 使用者側は2人1組で働くと物量を処理できないとし、これを拒否した。 SKブロードバンドは現在も危険業務の2人1組勤務原則を導入していない。 SKブロードバンド支部のキム・ソヌ政策部長は 「使用者側は事故の後に安全を強化するといったが、現場は相変らず危険だ」とし 「現在、使用者側が実施する産業安全保健教育は形式的だ。 私たちの作業現場とかけ離れた建設現場の話が出るなど、 半分ほどは私たちの安全とは無関係な内容だ。 一番重要な2人1組勤務の話はない」と明らかにした。

[出処:キム・ハンジュ記者]

死に追いやられる青年下請労働者

危険の外注化は変わらない。 雇用労働部によれば、2014年から2018年7月まで、産業現場で重大災害で死亡した下請労働者は1426人だ。 一日一人の下請労働者が労災で死亡しているのだ。 最近6年間で3人以上が死亡した災害では、下請労働者が85%を占めているという統計もある。 死の外注化に追いやられる20代の青年も増加している。 2018年8月基準、統計庁年齢別非正規職割合を見ると30代は2013年より3ポイント、 40代は約3ポイント、50代も0.1ポイントと小幅に減少していた。 60代以上を除いて唯一20代の青年層だけで非正規職割合が増えた。 経済活動人口全体を調べても、非正規職の割合は増加傾向だ。 300人以上の事業場で非正規職は2017年に比べて2018年には3万9千人増えた。 しかし正規職は2万9千人増加した。 5人以上300人未満の事業場でも非正規職は3万3千人増加し、正規職は6千人減少した。

一方、国会はキム・ヨンギュン氏の死を契機として早く産業安全保健法改正案を処理すると明らかにした。 危険業務の請負を禁止して、重大災害を起こした使用者の処罰を強化する方案だ。 だが政府と国会は2016年の九宜駅キム君スクリーンドア死亡事故以後にこれを推進したところ財界の反発で退いた前歴がある。 「青年非正規職故キム・ヨンギュン市民対策委員会」側は 「遺族は故人が残した『文在寅(ムン・ジェイン)大統領様、非正規職労働者と会いましょう』という遺言を守ろうとしている。 しかし文大統領は今も謝罪していない」とし 「国会は産安法改正局面で事故を縮小して尻尾を切ろうとしている。 根本的な解決方法の一つは外注業務をインソーシングに戻すことだ。 同時に下請労働者を直接雇用しなければならない。 そうでなければ死は繰り返される」と強調した。(ワーカーズ50号)

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2018-12-29 10:36:25 / Last modified on 2018-12-29 10:41:25 Copyright: Default

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