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木の上の巣、タクシー労働者が翼になる

[ワーカーズ ルポ]文在寅政府最長期高空籠城...全州タクシーのキム・ジェジュ

キム・ハンジュ記者 2018.08.26 18:31

[出処:キム・ハンジュ記者]

全州のタクシーに乗った。 中年のタクシー運転手は明るい挨拶で私を乗せた。 最近、タクシーの運転はどうかというケンチァンニャは問いに、 彼は古い記憶を取り出した。

「私が全州だけでタクシーを35年しました。 昔は本当におもしろかったんです。 収益も高かったし、仕事の面白みもありました。 昔は今日のような暑い日はどう運転したのか分かりますか? 車にエアコンがないので窓をみんな開いて走ります。 でもその頃はタクシーもないので、お客さんたちからずいぶん相乗りしようと言われた。 真夏にエアコンもなく、満員で走ります。 そうして市内の客を下ろして金を受け取って、長距離を走りにでかけるんです。 今は何… 苦しいだけです。 何よりも金が一番心配だ。 15〜16時間働かなければ暮らせません。 それでやっと社納金を払っていくらか残ります。 ですからあそこ(全州市庁の前)で月給制をしてくれとデモをしています。 お客さんはあそこに行きましたか?」

楽しく働いた思い出も社納金が奪い取ったのか。 前にも社納金はあったが、今のように高くなかったという。 納付額も運転手が自主的に決めた。 だが現在、全州地域の社納金は1日12万ウォンを越える。 一日12時間は運転しなければ払えない金額だ。 12時間以上働いて始めて自分の金を稼げる構造だ。 前近代的な制度である社納金問題を解決するために、 全額管理制が法に制定された現在。 全州市庁の前の照明塔の上には、タクシー労働者キム・ジェジュ氏(公共運輸労組タクシー支部全北支会)が 全額管理制による月給制施行を要求して1年近く高空籠城を続けている。

木の上の巣、あるいは高空籠城

8月17日、全州市庁前の高空籠城場。 座込場は25m上にある。 高空の上に黒い日よけテントが見える。 「安全なタクシーを作ります」 「約束守らない金承洙(キム・スンス)(全州市長)は退陣しろ」という横断幕も見える。 全州市庁前の道路の名は「ノソングァンチャン路」。 形が良いヒノキ何株かが座込場を抱え込む。 ヒノキは座り込みの柱と柱に張った横断幕の一部をかくした。 座込場がヒノキの上の巣のように見えた。 巣の中でひげを長く伸ばしたタクシー労働者キム・ジェジュ氏が手を振った。 健康を尋ねると、大丈夫だと伝えた。

だが大丈夫のはずがなかった。 この日も「猛暑災難メッセージ」が騒々しく鳴る。 「[全羅北道庁]道内全地域猛暑特別警報発令中。 野外活動は自制…」 地上の温度は32度、高空温度は36度を越える。 真夏には50度まで上がった。 座込場が木で囲まれているために、いろいろな虫が彼を困らせた。 1坪もならない空間で動くこともできなかった。 最近3か月は腹部膨張で深刻な不便を訴えた。 運動不足で消化ができず、ガスを排出できないからだ。 人が暮らせない所での暮らしを1年。 彼は文在寅(ムン・ジェイン)政府の下で最長の高空籠城という記録をたてている。

文在寅中央政府、 民主党地方政府(金承洙全州市長)がこれほどまでするとは思わなかった。 私もこの時まで座り込みをするとは思いませんでした。 全州市、労組、使用者側が合意した賃金標準案(全額管理制)を施行すれば良いのに、 今までためらっている状況です。 社納金廃止は市民の安全がかかる問題なのに、民主党は事業主の味方だけしています。 断言しますが、するに文在寅と地方政府は労働者に関心がありません。 李明博(イ・ミョンバク)、朴槿恵(パク・クネ)の時よりもさらに多くの労働者が路上に追いやられています。 労働者の闘争も増えています。 誠意ある政策は見つかりません。 そんな状況で、タクシー闘争も長くなる状況です。」

朴槿恵政権の時も全州市を相手に戦ってきた彼だ。 出勤闘争だけで600日、座り込み闘争だけで450日を越える。 金承洙現全州市長は朴槿恵政権の時にも市政を引き受けた。 2014年、金市長は当選後にタクシー労働者と面談をした。 その結果として賃金標準案研究用役を進め、2017年1月から施行すると確約した。 キム・ジェジュは戦いを止めて研究用役を待った。

しかし2017年になっても結果は出てこなかった。 タクシー労働者たちが抗議すると、2017年4月27日に用役の結果が一歩遅れて出てきた。 釜山経済大学校と全北大学校研究チームが単一案として作った全額管理制賃金協定標準案だ。 全州市は用役案を発表する最終報告会を開いたが、事業主は参加しなかった。 月給制に対する反発だった。 全州市は事業主が参加しなかったという理由で用役案を採択しなかった。 労使政合意はこうして潰され、キム・ジェジュ氏は9月4日、高空に上がった。

高空に上がると市庁でまた動いた。 9月末、市庁は研究用役をした釜山経済大教授とタクシー支部を呼んだ。 市庁に行くと全州市が署名を要求した。 文書内容は釜山経済大と全北大が別に研究用役を出すことに合意しろということだった。 4月27日に発表した全額管理制単一案の破棄であった。 すでに全北大、全州市、御用労組はこれに合意した後だった。 タクシー労働者の立場としては、全北大は使用者側意見に近い案を出すのは明らかだった。 釜山経済大はまた用役案を出しても4.27案とは違わないと拒否した。 タクシー支部もまた全額管理制を避けようとする市の小細工だと反発した。 2017年12月21日、全州市は全北大の別途用役案を密室で受け入れた。 全北大の案は「成果給配分のための基準金は労使が合意する」、 「所定勤労時間は労使が合意する」が骨子だ。 研究の結果がない用役案だった。

後退案も出したが

2018年3月31日。 全国からキム・ジェジュを応援する希望バスが出発準備を終えた。 数千人が全州市庁の前に集まる予定だった。 その10日前の3月21日、全州市長が焦っていたのか支部を呼んだ。 支部はこの場で社納金制を維持する事業場を処罰しろと要求した。 全州市長は「運輸従事者も全州市民なので処罰は難しい」と言った。 社納金制に同意した御用労組組合員に対する話だった。 支部は一歩後退して「では座り込み問題を解決するため作業チームを設けてくれ」と提案した。 これにより副市長をチーム長とするTFチームが開かれた。 このTFチームは雇用労働部全州支庁、経済支援チーム、市民交通課、公共運輸労組で構成された。

希望バス5日前の3月26日。 TFチーム会議で支部は公共運輸労組組合員だけでも完全月給制を施行できるようにしてくれという案を出した。 さらに譲歩して、スト権も下ろした。 事実すべての労働者のために存在すべき民主労組としては出すのが難しい案だった。 支部はそれだけ問題を解決したかった。 するとTFチーム員の多くは、今まで労組の要求の中で一番良い案だと呼応した。 そうして使用者側に提示する確約書が作成された。 主な内容は「最初に到来する複数労組交渉窓口一本化期間に個別交渉権を認める」、 「交渉が決裂した時は労働委員会仲裁申請に同意する」だった。 事業者がこの確約書に署名さえすれば終わる問題だった。 だが全州市内21のタクシー事業場のうち、デリム交通1か所を除いて、これを受け入れるところはなかった。

キム・ジェジュ氏がため息をつきながら話した。 「数年戦ったのに、いつも新しい始まりなんです。 事業主が全額管理制にすればつぶれるという話をいつも全州市が受け入れて、 進展があってもまた初めから戦うようになります。 2015年にも市庁に行って『公務員たちがなぜ事業主と同じことを言うのか』とし 『いったい事業主からいくらもらったのか』と抗議して、特殊公務執行妨害で罰金を受けたこともあります。 朴槿恵の時も今も、 私たちの要求は同じです。 法と原則通りしろということ。 その通りにすれば市長も苦しくありません。 法の通りにするのだから誰も非難しません。」

[出処:キム・ヨンウク]

御用労組の座込場侵奪

8月8日午前1時。高空籠城場に暴漢が押しかけた。 韓国労総傘下のタクシー労組所属幹部など6人が酒に酔って座込場を襲撃した。 彼らは高空籠城場の電気を切り、下で抗議するタクシー支部のソン・ミンソプ組合員の首をしめた。 周辺を通る市民に見つかるかと思って座込場の中につれていき、暴行した。 何人かは見張りをした。 ソン組合員がこれを撮影しようとすると、携帯電話まで壊した。 キム・ジェジュはすぐに警察に通報し、警察の車が10台近く出動した。 警察が到着すると、彼らは「そうだ私が切った。それがどうした!」と大声を張り上げた。 現在、警察は彼らを暴行および財物損壊容疑で捜査中だ。

タクシー支部によれば、全州Aタクシー法人代表は、韓国労総幹部出身だ。 Bタクシー法人代表も民主タクシー労組(2017年4月民主労総サービス連盟に加入)幹部出身だ。 全州の二つの会社の代表が過去の労働活動家であった。 全州地域では韓国労総か企業労組が多数労組だ。 公共運輸労組タクシー支部は非常にめずらしい。 御用労組がタクシー資本と結託しているという昔からの疑いは消されない。 実際に座込場の周辺には「対策ない全額管理制を強行する全州市は覚醒しろ」という韓国労総の横断幕があちこちにかけられている。 「全額管理制は反対し、政府支援産業が先」という横断幕も タクシー労働組合連合会の名前でついている。 木ごとに管制横断幕が張られている。

「ちょっと労働運動をした人たちが全州で会社を作って現場をみな壊しました。 社納金が13万ウォンまで上がるのは御用労組の合意があったのでしょう。 私たちの座込場の侵奪も、横断幕も、事業主がさせたと見るほかはありません。 労働活動家で資本家である者たちが地域の土着勢力になっています。 御用労組の背後勢力は明らかにあります。 徹底的に調査しなければなりません。 しかしこの人たちが見のがしている大きな問題があります。 韓国労総、企業労組の組合員から、全額管理制はいつ始まるのかと今も問い合わせの電話がきます。 社納金に対する抵抗は潜在しています。 民主労組の闘争は必ず勝利するでしょう。」

全州市の行政処分、信じてくれ?

御用労組の動きは危機による反作用でもあった。 去る8月2日。 全州市が事業主を相手に全額管理制違反1次処分を下した。 罰金500万ウォンだ。 2次、3次処分を経ると使用者は免許を喪失することになる。 全州市が使用者を圧迫し、御用労組が動き、民主労組を威嚇した形だった。 この状況を機会として、全州市は小細工を働かせた。 全州市は8月13日、高空籠城解決のための対策会議で 「1次処分をしたので高空籠城を整理しろ」とし 「座り込みを整理しなければ1次処分も取り消す」と脅した。

支部としては受け入れられなかった。 過去の例もあった。 2015年8月全州市が事業主を相手に全額管理者違反に対する1次処分を下したが、 事業主が行政訴訟を提起して勝訴した。 市の「負けてもらう訴訟」という批判が相次いだ。 だから支部は全州市が3次処分による事業者免許取り消しと、 全額管理制を施行するまでは高空籠城を整理しないと主張した。 しかし全州市は負けてもらう訴訟ではないと言って信じてくれという言葉を繰り返すだけだった。

「『負けてもらう訴訟』ではないという市の立場は信じられません。 以前にも全州市は事業主の行政処分無効訴訟に一切対応しませんでした。 その時、私たちがした時には法的根拠資料を持って行ったのにじっとしていました。 事業主は御用労組を通じて嘆願書を組織して。 その時は行政訴訟で敗訴して控訴もしませんでした。 典型的な『負けてもらう訴訟』でした。 今がその状況と全く同じです。 同時にマスコミには法的根拠不備を理由に全額管理制は難しいと話しています。 形容矛盾でしょう。 私たちがせいぜい500万ウォンの罰金払わせるために高空籠城をしているのではありません。」

労働者が頼れる法はどこに

タクシー労働者の要求は単純だ。 全額管理制が1997年に立法施行されたので、これを守れということだけだ。 法の通りにメーターに記録された運送収入金全額を会社に払い、 タクシー運転手の完全月給制を施行しろということだ。 だが全州市は全額管理制施行には勤労条件規定がないので法の補完が必要だという立場だ。

裁判所も同じだった。 全額管理制施行にも会社が運送収益金で社納金を控除し、 群山のタクシー労働者が訴訟を提起した。 群山地方法院は2009年、タクシー最低賃金法(タクシー労働者に労働時間による賃金を支払えとの最低賃金法改正案)を根拠に労働者勝訴判決をした。 だが高等法院は賃金は団体協約で規定するので、これによる賃金控除が正当だと判決した。 現在この訴訟は大法院に1年2か月間係留中だ。 1997年、雇用労働部も質問状に 「(社納金賃金控除は)タクシー業界の特殊な勤務形態が考慮された賃金精算形態であり、 一般的に慣例化、個別勤労者と同意があったもので、 賃金全額支払いの原則に違反するものではない」と明らかにした。

裁判所と労働部の判断は同じだった。 全額管理制があっても労働者が同意したので控除してもよいという意だ。 労働者の人生は、権力機関がどんな法条項を持って使うかによって変わる。 タクシー支部のイ・サムョン政策委員長は 「労働部の回答が20年経った今も指針以上の効力を発揮している」とし 「現場の勤労監督官も労働部の回答を変えなければ起訴意見に残すことができないといったし、検察も不起訴処分にした。 労働部と裁判所の判断のために、われわれはタクシー事業主と従事者を処罰することを要求している。 従事者が賃金控除に同意して社納金を払うからだ。 事実、労働者が労働者を処罰しろというのもおかしな事だ。 だが全額管理制を定着させようとすれば、ほかに方法がない状況だ」と説明した。

死のタクシーは止めなければならない

社納金を廃止して全額管理制を施行することだけが『死のタクシー』を止められる。 道路交通公団によれば、昨年の事業用車両交通事故発生割合の1位は法人タクシー(33.3%)だ。 2位の市内バス(13.3%)と比べて圧倒的だ。 タクシー支部によれば、タクシーの交通事故で一日約3人が死亡する。 これはタクシー加害事故だけを集計した数値だ。 被害事故、労災死亡も加えれば、タクシーによる直接・間接的な死亡者は想像以上だ。 タクシー事業場の少数労組のタクシー支部だけでも最近組合員3人がガンで死亡した。 昨年11月、オ某組合員が血液ガンで、去る12月にはユン某組合員が腎臓ガンで、去る3月にはイ某組合員が胃ガンで息をひきとった。

韓国労働安全保健研究所のキム・ヒョンニョル研究委員が調査した結果によれば、 法人タクシー労働者の70%が一日にタバコ1〜2箱を吸う。 75%以上は一日にコーヒーを6杯以上飲む。 また41%が高血圧があって、55%が睡眠障害を抱えている。 12時間運転し、社納金を払い、それ以上に稼がなければ生計が立てられないタクシー労働者は長時間労働を強要されている。 死を呼ぶ社納金を終わらせようとするタクシー労働者の戦いは続く。 来る9月1日、全国の労働者、市民が全州市庁の前に集まって大規模集会を開く予定だ。[ワーカーズ46号]

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2018-09-22 22:30:42 / Last modified on 2018-09-22 22:35:24 Copyright: Default

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