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「赤い州」の反乱、米国の歴史的な教師ストライキ

[ワーカーズ インター]ストライキはなぜ広がったのか

チョラ(社会変革労働者党社会運動局長) 2018.06.08 15:58

▲ノースカリフォルニアで教師が赤い服を着てデモ行進している。[出処:DemocracyNow!]

「娘は学校に週4日しか行けないのに、私は週5日教えます。 娘が登校する日には午前5時半に起きます。 娘を両親の家に連れていくと両親が娘を学校に行かせます。 授業が終わると私はオクラホマシティの反対にある動物病院に行って応急獣医師補助の仕事を午前2時までします。 10年間、ずっとツージョブを続けています。 10年間、賃上げはありませんでした。 学校から受け取る年俸は3万3000ドルだけです。 私は教師なのに、まさに私の娘が教育予算削減のために週4日しか登校できなくなるとは、 本当に想像もできませんでした。」 -オクラホマ州高等学校教師チェルシー・ヘルンドン

「ウェストバージニア州、オクラホマ州、ケンタッキー州では教師たちがストライキをしたかもしれないが、ここアリゾナでは起きないと人々が言っていたことを覚えていますか? しかし私たちが今ここに来て、変化しています! FaceBookイベント一つ、 ツイッター一つでこの動きが触発されたと多くの人々が勘違いしましたが、 それは事実ではありません。 私たちの運動は数十年間放置されてきた、数年間なんとか生きてきた教師の人生から芽生えたのです。 学生たちの目を真っすぐに見ながら、このアリゾナ州庁舎の中にいる議員が学生たちの未来に関心さえないということを諦めてきた人生から出てきたのです。 それでわれわれはここに集まり、 われわれは強く、私たちの地域での変化を呼び起こす力をこのようにして争奪したのです!」 -アリゾナ州の小学校教師でアリゾナ教育者連帯(AZEdunited)共同創立者ノア・カーベリス

不法ストライキを敢行するほかはなかった教師たち

2017年10月、ウェストバージニア州チャールストン中学校の英語教師、ジェイ・オニールがウェストバージニア公務員連帯という秘密FaceBookグループを作った。 このグループの会員は2018年1月末で2万人で急増し、 これに力づけられた教師3万4000人が2月22日、ウェストバージニア州全域の55のカウンティで全面ストライキをした。 ストライキの途中にも低所得層の欠食学生に弁当をもれなく提供したウェストバージニア州の教師たちは、 ストライキを中断しろという全国教師労働組合(AFT)と国家教育連合(NEA)指導部の指示を握りつぶしてストライキを続け、 3月7日に賃金5%値上げの約束を州議会から受け取り、9日間のストライキを成功的に終えた。

これに力づけられて、4月2日から12日までオクラホマ州でも30年ぶりのストライキが9日間続き、 4月26日から5月3日までアリゾナの教師2万人がストライキをした。 4月27日に始まったコロラド州の教師ストライキは5月12日まで続いた。 ケンタッキー地域でも4月2日に数千人の教師が州庁舎に集結して集会を行い、 ノースカロライナ州でも5月16日から始まった教師2万人のストライキ、座り込み、デモ行進が現在進行形だ。 これに力づけられて、4月19日から23日までジョージア州のディカープカウンティでは400人の通学バス運転手が集団病暇を出してストライキに突入した。 ディカープカウンティの通学バス運転手の42%に達する人員だった。 この過程で7人の通学バス運転手が解雇され、現在復職闘争を続けている。 この教師ストライキの波を米国マスコミでは「『赤い州』の反乱(red state revolt)」と呼ぶ。 赤で代弁される共和党の菜園である南部地域を中心に出てきたという意味も含まれているが、#RedforEd (教育のための赤色のふり(受ける)着る運動)の波に数万人の教師が赤いシャツを着て米国全域で繰り広げたストライキを称する象徴的な表現でもある。 これだけではない。 米国全国規模の最大の二つの教師労働組合AFTとNEAの指導部が手をこまねいている状況で、 ウェストバージニア州支会が耐えられずに先に動き、 アリゾナ州では既存の労働組合が動かずに自主的な動きを新しく作って社会運動で拡張させ、 法的に不可能だった交渉を実現した。 冷戦期に遡る「赤色恐怖」に根幹をおく団結強制禁止法により、ストライキを不法と見なすこれらの地域で解雇と逮捕を甘受した教師全面ストライキの火が広がった。 山積していた弊害が下からの躍動的な労働組合運動とストライキで暴かれたという点で、本当の意味での社会主義を願って行動する「赤い波」が起きるのではないかという展望も存在する。 コロラド州を除き、教師ストライキが起きた「赤い週」はすべて労働権法という欺瞞的な名前を持つ事実上の団結強制禁止法(right to work law)が施行されている地域だ。 州が団結強制禁止法を施行すると、その地域では「労働組合に加入しない勤労者の自由」が州法で掲げられる。 そして特定の労働組合加入が就職の要件にならないということが法的に明示される。 したがって労働組合の立場としては、組合員の拡張にさまざまな制約ができて身動きの幅が狭まる。 これは、労働者の団体交渉権と結社の自由を侵害するだけでなく、 該当の州でストライキを不法とする法的根拠にもなる。

冷戦の真っ最中だった1947年、別名「赤色恐怖」と米国型の「アカ狩り」の本格的な序幕を開いたタフト・ハートレー労使関係法の遺物であるこの団結強制禁止法は、 現在も米国の28の州で施行されている。 公務員の教師が国家や州を対象に団体交渉をすることがほとんど不可能な諸般の条件で、 この28州の米国教師の年俸が下位圏を占めているのは、あるいは自明だ。 こうした状況でその地域の教師が率先してストライキを宣言したのだ。

「ありがとうウェストバージニア」、ストライキはなぜ広がったのか

「ありがとうウェストバージニア(Thank you West Virginia)」 オクラホマ、アリゾナ、コロラド、ケンタッキー、ノースカロライナ、ジョージア州で集結した10万人の教育労働者が叫んだスローガンであった。 先に糸口を開いたウェストバージニアに感謝と連帯の意を伝えたのだ。 しかし地域別の要求事項は少しずつ違っていた。 州ごとに山積する問題には多くの差があるためだ。

まずウェストバージニアは50州のうち教師賃金が48等で最下位圏だ。 そのような渦中で2019年に賃金をやっと2%引上げ、2020年、2021年には各々1%だけ引き上げるという共和党のジム・ジャスティス州知事の屈辱的な公約に反発し、 ストライキをした末に5%の引き上げを勝ち取った。 この他にも教師たちは州の独自の健康保険安定化を要求した。 提案された賃上げだけでは健康保険料が思わしくないからだ。 オクラホマはウェストバージニアより教師賃金がさらに一級低い50州のうち49等だ。 教師は38冊の教科書を87人の学生たちが回し読みしなければならないほど非常に不足した教育資源と教師あたりの学生数がますます急増する現実、 年初の緊縮による教育費支援削減などに反対して街頭に出た。 目標は$10000の教師賃上げと$1250の教職員/契約職賃上げだった。 9日の闘争の末に$6000の教師賃上げと$1250の教職員/契約職賃上げを勝ち取り、 タバコ税で公立学校の支援金を充当することを約束させた。 アリゾナでは2008年の景気低迷以後、続く教育費削減に抵抗して2020年までに教師賃金を20%値上げすることと学生と教師の割合を23:1に縮小することを要求した。 闘争の結果、2020年までに20%教師賃上げ約束を勝ち取り、 具体的には2018-2019年の間に教師の賃金を9%値上げすることと、 2021年まで毎年5%ずつ値上げするという段階的な約束を勝ち取り、 教職員/契約職賃上げも約束された。

コロラドでは低い教師賃金、教師年金支援の不足、教育支援費削減などに反対して2週間の闘争の末に2%の教師賃上げを勝ち取った。 ケンタッキーでは共和党州知事のマシュー・ベビンが教師年金の改悪をかっぱらい通過させ、年金を削減したことで憤慨した教師たちが、 年金改悪撤回を要求してストライキを行い、これを阻止した。 ノースカロライナは50州のうち教師の賃金は44等だ。 彼らの要求は教師の賃上げと2008年の景気低迷以前への支援金復旧、 教師健康保険保障、学校施設整備を担当する行政府での設立などだ。 ノースカロライナ教師ストライキは続いている。

米国憲法には教育制度は州の管轄となっている。 したがって公立学校の維持費や支援費は平均92%が州の責任で、 契約職をはじめとする教師は州の被雇用人になる。 言い換えれば地域ごとに交渉の対象が違うのだ。 では、このように自治行政が分化したアメリカ的な特色で、多様な条件に置かれていながらも、ストライキの波が続いた要因は何だったのだろうか?

最初の要因は、団結強制禁止にある。 別名「赤い週」の共和党菜園という共通分母は、団結強制禁止法が施行される前提条件であり、 共和党員が多いこれらの地域では、教師たちの予算削減と保険、年金の民営化が、 特にトランプ政府になって加速した。 労働組合による交渉力を保障されない教師たちは、他の道を選ぶほかはなかったのだ。

二番目の要因は、むしろ逆説的に今こそ教師の交渉力が確保される時点だったことにある。 ストライキが起きた時点は、この地域の教師が生活賃金に満たない賃金で数十年間粘り、 賃金が二倍以上高い他の州ろと大挙脱出した後だった。 教師が不足して苦しむ実情で、州に対する教師たちの交渉力が上昇したのだ。 特にウェストバージニア州ではストライキが始まる頃、700の教室に担任教師をおけないほど、 州全体で教師が不足している実情だった。 耐えられなかった教師たちが立ち上がるほかはない状況だった。

すべてを抱き込んだ社会運動への拡散、展望は

今回の米国教師ストライキの波は、所属組合の有無とは無関係に、 期間制/正規職、清掃労働者、通学バス運転手が連帯して広範な社会運動を引き出した。 また無能な名ばかり労働組合を差し置いて自発的に下から集結し、 州政府を相手に勝利を勝ち取った。 これは職場内労組組合員の割合がやっと10%を上回る米国労働運動の浅薄な現実では驚くべきで、 別の見方をすれば当然のことかもしれない。

トランプのカラ元気に充ちた道具に転落した共和党と、 新自由主義的な動きを強硬に続ける民主党の間で、 労働者たちが自分たちの道を彼ら自身で切り開けるのかに関心が注まる。[ワーカーズ43号]

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2018-07-16 22:54:15 / Last modified on 2018-07-16 22:54:16 Copyright: Default

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