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News Item 201806009
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「社長悪いです」ではなく「韓国政府悪いです」

[ワーカーズ ルポ]闘ツーバス、全国を縫う

キム・ハンジュ記者 2018.06.01 11:44

[出処:キム・ハンジュ記者]

5月11日、ソウル雇用労働庁の前。 約束した懇談会は守られなかった。 「移住労働者闘争ツアーバス(闘ツーバス)」に集まった移住労働者たちは、 雇用労働部懇談会で自分の声を伝えようとした。 懇談会が予定されていた3時。 ソウル雇用労働庁の職員が建物から出てきて集会に集まった人々に近付いてきた。 懇談会の案内だと思ったが、彼の口から懇談会を取り消すという思いがけない言葉が流れ出た。 多様な国籍の移住労働者が闘ツーバスに集まって、浮き浮きした雰囲気は一瞬にして沈んだ。 移住労組のパク・ジヌ事務局長は激昂して震える声で話した。

「世宗市の雇用労働部関係者とソウル市雇用労働庁がここにはいないといいます。 今日の日程は難しいといいます。 その間に移住労働者は死んでいきます。 昨年10人以上のネパールの移住労働者が自ら命を絶ちました。 昨年8月にケシャブ・シュレスタ氏が事業場の変更ができずに命を絶ち、 その年の11月にフィリピンの移住労働者が機械に挟まれて亡くなりました。 同じ月にタイの女性移住労働者、チュティマ氏は性暴行を受けて亡くなりました。 これはソウル市雇用労働庁と世宗市雇用労働部、韓国市民が知るべき真実です。 われわれは同じような話を10年以上、言い続けています。 政府は10年間、待てというだけです。」

「日程上難しい」という労働部の回答。 彼らにとって移住労働者はいつも後まわしだった。 こうした労働部に圧力を加えるために、去る4月29日から1か月間、闘ツーバスが全国を走り回った。 闘ツーバスは驪州の論山にある2か所の事業場と6か所の地域雇用センター、支庁を訪れた。 議政府、忠州、大田地域まで、移住労働者たちは闘ツーバスに集まった。 彼らを困らせる当事者、公務員たちがそこにいたからだ。

それでも、闘ツーバスが作った小さな変化

「われわれは金を稼ぐために韓国にくる時、試験を受けます。 試験勉強をする本にも『移住労働者と韓国人労働者は同じ法が適用される』と学びました。 ところが来てみると反対です。 使用者が賃金を払わないのに、政府は事業場の変更もしません。 移住労組と闘ツーバスで、自分の問題は解決しても、私のようにくやしい人が出ないようにしてほしい。」

闘ツーバスで会ったバングラデシュのモニ氏。 議政府のある繊維工場で働いていたモニ氏の未払い賃金は550万ウォンに達した。 使用者と1日8時間(1か月209時間)の労働に最低賃金を受け取ると契約したが守らなかった。 社長は仕事がないとし、1日に7時間働かせ、その後にはまったく出勤するなという日が頻繁になった。 2016年当時の最低賃金によれば月137万ウォンの月給を受け取らなければならなかったが、 月80〜90万ウォン受け取ることが多かった。 3か月はほとんど働けず、月30万ウォンだったこともある。 生計維持そのものが難しくなった。 モニ氏は職場を変えなければならないと考えた。

しかし雇用許可制がモニ氏を困難に陥らせた。 雇用許可制は雇用主の同意がなければ移住労働者が事業場の変更ができないように規制する。 移住労働者が「Free job change(事業場移動の自由)」のスローガンを真っ先に叫ぶ理由でもある。 モニ氏は雇用労働部議政府支庁に賃金未払いを申告し、昨年11月に未払い賃金13万7千ウォンを受け取った。 使用者の未払いが確認されれば雇用センターの職権で移住労働者の事業場を変更することができる。 しかし公務員は「未払い金額が少ないから働き続けろ』と無視した。

事実、この13万7千ウォンは未払い賃金のきわめて一部であった。 問題は「寄宿舎費用控除」にあった。 勤労契約上、使用者はモニ氏の寄宿舎を無料で提供しなければならなかった。 だが使用者は寄宿舎提供を口実として月20〜30万ウォンを賃金から任意に控除した。 「月20〜30万ウォン」の寄宿舎は、職場近くのスチロールパネルで作った臨時仮設の建物だった。 縦横が2.5m、3mしかならない小さな空間で、エアコンどころか暖房もなかった。 亜熱帯気候に慣れた彼は冬になるとふとんにくるまってばかりいた。 ここで3人が暮らし、彼は1年10ケ月を過ごした。

勤労監督官が勤労契約書さえ見ればいい問題であった。 モニ氏は勤労監督官が契約書を見もせず、社長の言葉だけ聞いたと吐露した。 移住労組と一緒に問題を提起して、4月5日にモニ氏は未払い賃金550万ウォンを返してもらった。 そして5月10日、闘ツーバスが出発してから11日後に事業場変更許可を受けた。 闘ツーバスが作った小さな変化だ。

▲バングラデシュから来た2人のモニ氏(同名異人) [出処:キム・ハンジュ記者]

あんなに好きだった韓国の『背信』

ウズベキスタンのキム・ヘンボク(マック・ティアル)氏は、5月15日に華城雇用センターへ向かう闘ツーバスに参加した。 韓国の人と文化が好きで「幸福」という韓国名も作った。 しかし韓国で働くのだけは最悪だと話す。 彼は雇用センターの職員に力いっぱい大声を張り上げるために闘ツーバスにきたと伝えた。

彼はE9ビザ(非専門就職)で2015年7月、初めて韓国にきた。 彼はビザ発給を受ける時、就職項目にサービス業種を選んだ。 「サービス」だから韓国のホテルやレストランなどで働くことを予想した。 しかし彼が行ったのは古着の圧縮・包装、プラスチック選別場、スクラップ選別場だった。 公務員はペットボトルを分類することが「サービス」だといった。 行く所ごとに我慢するのが難しく、持病も悪化した。 それで今まで4回も職場を変えた。 彼は不満を持ってサービス業から製造業に変更することを要求したが、 「雇用許可制」のおかげで、それはできないという回答しか受けられなかった。

彼はプラスチック選別場で2016年11月から2017年5月まで働いた。 社長は2017年1月から5か月間の賃金を払わなかった。 710万ウォンもの金額だった。 彼はNGO団体移住民支援センターを訪問して助けを受けた。 彼が最終滞納賃金600万ウォンを受け取るまで5か月の時間がかかった。 雇用センターの職員は、ウズベキスタン出身のキム氏にセンターに配置されたロシア通訳者に尋ねてみるといっていつも無視した。 彼が雇用センターでウズベキスタンの通訳者を見たことはない。 通訳、制度手続きなど移住民一人で解決することは決して容易ではない。 彼は仕事だけでなく、公務員から多くのストレスを受けたし、精神科にも通ったと伝えた。

今、彼は新しい仕事を探している。 3か月中に仕事場を見つけられなければビザは消滅する。 雇用を「斡旋」する所は雇用センター。 初めて韓国にきた2015年には数十か所もの「雇用リスト」をA4用紙で受け取った。 だが今は4日に1回、事業場1か所を携帯メッセージで伝えてくれる程度だ。 移住労働者を最も多く受け入れる華城、水原、安山地域の雇用センターは、 キム氏に「最近は雇用がない」、 「冷蔵、冷凍品の出し入れしかない」、 「仕事が見つからなければ家に帰れ」とだけ言った。 彼は韓国が移住労働者を苦しい仕事ばかりさせ、使い捨てにしているようだと話した。

「外国人なら搾取されてもいいのですか」

「殴らないでください。ののしらないでください。私のお金を返してください」。 闘ツーバスで移住労働者が歌った歌、「コリアンドリーム」の歌詞だ。 彼らはまた「不法住居施設賃貸業でツージョブする雇用主を処罰しろ」、 「スチロール倉庫は家でない」と書かれたプラカードを持った。 移住労働者たちは雇用許可制で事業場移動の自由を享受できないまま、 二重三重に搾取を受けていた。

雇用労働部は2017年2月に「外国人労働者宿泊情報提供および費用徴収関連業務指針」を発表した。 これによれば、雇用主は宿舎の形態と食事の提供により、 移住労働者の通常賃金から8〜20%を控除することができる。 ≪ワーカーズ≫が闘ツーバスで会った移住労働者のほとんどはビニールハウス、 コンテナ、スチロール パネルで作られた臨時住居施設に住んでいた。 指令に従えば、アパート、一戸建ての住宅などではない臨時住居施設を食事とともに提供すれば、 月々の通常賃金の13%まで賃金から控除することができる。

ユン・ジヨン弁護士など移住労働者支援弁護団は 「家賃を決める基準は家の状態、位置、周辺施設などだが、 この指針は移住労働者が受け取る賃金の額を基準にしている」とし 「指針のとおりなら、劣悪な施設でも賃金が相対的に多ければ宿泊費もさらに多く払わなければならないという結論になる。 また使用者が労働者の同意なく宿泊費を賃金から控除すると、 最低賃金は宿泊費を除いた残りの金額で判断しなければならず、 事実上すべての移住労働事業場で最低賃金法違反になる可能性が非常に高い」という法律意見書を雇用労働部側に提出した。

「地球人の停留場」が提供した資料によれば、 論山で働く女性移住労働者3人が用水路の上に建てられたビニールハウスで暮らしているが、 使用者は1人当り20万ウォンを控除し、パネルで作られた家に居住する仁川の女性労働者2人はそれぞれ30万ウォンを徴収されていた。 特に女性労働者は開閉装置のない扉、男女混宿、野外トイレなどの不便を訴えた。

彼らは雇用許可制を廃止して労働許可制を導入しろと主張している。 労働許可制は移住労働者の滞留期間を10年まで保障して、 事業場移動の自由保障を骨子にする。 5月31日、闘ツーバスの最後の日程は、雇用労働部長官との面談だ。 十数年の叫び、政府が答える番だ。[ワーカーズ43号]

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2018-07-16 11:07:15 / Last modified on 2018-07-16 11:07:17 Copyright: Default

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