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地域選挙に登場した思想調査、「性少数者政治家」は誰?

[ワーカーズ レインボー]アイデンティティ政治の向こうの虹

ナヨン(地球地域行動ネットワーク) 2018.05.10 23:08

この数週間、個人的に印象的な場面が2つあった。 その一つは地方選挙を控えてソウル市議員比例候補競選が行われた正義党でのことだ。 比例1番候補として三人が出た。 その1人は女性、青年で正義党性少数者委員会委員長経歴を持つチョン・ヒェヨン候補だった。 あるいは韓国で初めて公開的にカミングアウトした初の女性性少数者市会議員が誕生するかも知れなかった。 しかしそれに反対した人たちがいた。 まさに正義党内の性少数者党員たちだ。 このでき事に決定的な契機になった事件は、政策討論会で行われた。 チョン・ヒェヨン候補がクォン・スジョン候補にこのように質問したのだ。

「クォン・スジョン候補に質問があります。 女性民友会の会員で民主労総の前女性委員長ですが、 先日、女性民友会と民主労総でメガリア論争が起きました。 それでソウル市の女性関連政策を推進する時、メガリアのような嫌悪主義論争が起きるかもしれないのですが、 ソウル市の女性政策を推進する時に障害になりかねないと思います。 これについてお答えください。」

チョン・ヒェヨン候補が質問した「女性民友会と民主労総」で起きたメガリア論争とは、 他でもないゲーム会社のIMCゲームズの代表が韓国女性民友会のSNSアカウントをフォローしてフェミニズム関連の内容をリツイートしたなどの理由で、 原画作家の女性職員を呼び「フェミニズム思想調査」をした事件だった。 ゲームの流通社であるネクソンでは、2016年にメガリアの後援支援金募金参加を認証するTシャツを着たという理由で、CLOSERSというゲームの声優を解約したことがある。 そして当時、チョン・ヒェヨン氏は正義党文化芸術委員会がこの事件に女性労働者の労働権侵害だと論評すると、 全国委員会が特別決議文を採択して「絶望した」と性少数者委員会から脱退した。 チョン・ヒェヨン氏は脱退の立場を明らかにする文で 「連帯を破壊して互いを引き裂く嫌悪とは断固線を引かなければなりません」と書いた。

しかし、まさに彼が線を引くべき所がどこだったのかは、CLOSERSの声優契約解止事件以後に起きたことが語っている。 その事件の後、一部のゲームユーザーは当時、該当声優を支持する立場を明らかにした人、 SNSでフェミニズム関連のアカウントをフォローした人、 あるいは関連文をリツイートしたり共感した人がいれば該当ゲームと関連業者を「メガル・ゲーム」と見なしてリストを作り、圧力を加え始めた。 そして今、ゲーム業界の労働者たちのSNS査察と思想検証は「反フェミニズム運動」の実質的な解雇脅迫の手段になった。

「フェミニズム思想検証」が行われている所は単にゲーム業界だけではない。 「メガル」はフェミニストに烙印する名前になり、 こうした一連の攻撃はアイドル歌手、放送作家など、 大衆的な圧力に影響を受けやすく相対的に契約関係で弱い位置にある女性に向けて続いている。 多くの女性が不安定な労働条件で、フェミニズムを理由として簡単に生計と生存を脅かされるという現実は、状況の深刻性を傍証する。 それでも彼は相変らず今回のIMCゲームズ事件について 「メガリアのような嫌悪主義論争」という見解から一寸も変わることなく、 逆に彼らと同じようにクォン・スジョン候補を思想調査の試験台に上げたのだ。

「権力と政治の場をひっくり返す共同の戦いが必要」

この事実が伝えられた後、 正義党仁川市党性少数者委員会と「誰でも尊重される差別ない社会を望む性少数者党員一同」は、 チョン・ヒェヨン候補のこのような動きを批判してクォン・スジョン候補支持を宣言した。 「性少数者党員一同」は次のように書いた。

「『性少数者政治家』は誰でしょうか? それが単に政治を業とする性少数者を意味するのであれば、 われわれはすでに多くの性少数者政治家を持っているかも知れません。 しかし、人生がそうであるように、人間は何か1つのアイデンティティだけでは構成されません。 こうした属性が互いに別に存在することもないとわれわれは考えます。(…) 歳を取ることがそのまま成熟を保証しないように、 性少数者アイデンティティだけで彼が性少数者人権の擁護者と見ることはできません。 その上、当事者という事実を自分の出世のための道具や、政治的な盾として手段化する不幸な日和見主義者などをわれわれは歴史を通してみてきました。 ですから私たちが願ってやまない『性少数者政治家』は、 性少数者の尊厳と人権のために心から努力する政治家をいいます。」

彼らはアイデンティティが政治の内容を作るのではないということ、 したがって政治に対する判断の基準はアイデンティティではなく、 彼がしようと思う政治の内容であるということを明確に指摘した。 『性少数者』の政治家である前に、性少数者が暮らす社会の構造と政治の場をきちんと把握して変えていく人が必要だということだ。 そしてその構造と政治の場は、当然『性少数者だけ』に作動する抑圧と差別の構造として存在するのではないという事実も。 したがって、われわれは単に各自のアイデンティティ政治の間の連帯ではなく、 その権力と政治の場をひっくり返す共同の闘いをしていくことができるということを、彼らは宣言したのだ。 私はこの場面が性少数者運動の歴史にも明確に意味ある一場面として残されなければならないと考える。 しかし、この文を書いている時に、もうひとつの印象的な、いや惨憺たる消息を聞いた。 ある学会で次のような文章の討論文が登場したという。

「現在までLGBTは自分たちの方が弱者であることを武器として、 フェミニズムに弾除けけになることを要求しながら甘えても、母性のように受け入れてきた慣例によって、 フェミニズムの中に起居しながらまるで自分たちに与えられた権利をフェミニズムに差し出せという態度ではないのか? 一緒にやろうではなく、なぜ私たちの懸案が第一だとして手放さないのか(ジェンダー感受性の欠如)と言って要求するのではないのか? 自分たちの敵に向けて撃つべき砲弾を、弱い弾除けに向けているのではないのか?」

この討論者はいったいどこで、何を見ていることであろうか。そうだ、悲しいことだ。(ワーカーズ42号)

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2018-05-19 18:05:30 / Last modified on 2018-05-19 18:05:31 Copyright: Default

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