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News Item 201802006
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「傷ついた自尊心のために粘った」

[ワーカーズ不穏なインタビュー]解雇12年を粘ったKTX乗務支部パク・ミギョン副支部長

イ・ジョンホ(前民主労総未組織非正規職室長) 2018.02.06 11:04

韓国高速鉄道(KTX)は、最初のシャベルが動いてから10年目の2004年4月1日に開通した。 盧泰愚(ノ・テウ)政府はKTXの建設費用を4兆ウォンと予想して設計したが、 金泳三(キム・ヨンサム)、金大中(キム・デジュン)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権まで、 4人の大統領を経て実費は5倍の20兆ウォンに増えた。

マスコミはソウル-釜山を2時間30分で行き来する「夢の交通手段」と書き立てた。 KTXの乗務員にはジェンダーコードまで十分動員して「地上のスチュワーデス」という美辞麗句を乱発した。 4月1日の開通を控えて350人を選ぶことにしたKTX乗務員採用には、 5千人近くが押し寄せたのも、マスコミの大げさな記事のためだった。

乗務員の採用の真っ最中2004年1月17日、 朝鮮日報は10面に「高速鉄道女性乗務員募集に半数は大卒以上、修士・博士43人も」という題名の記事を載せた。 朝鮮日報はこの記事で「『地上のスチュワーデス』である高速鉄道女性乗務員350人募集に4651人が応募し、13.3対1を記録した。 応募者の中で大卒以上が半分を越えた。 修士・博士の学位者43人と外国留学経歴者も30人にのぼる。 前・現職スチュワーデス19人とセマウル号乗務員14人も受験した。 この日、書類選考を通過した800人を面接した鉄道庁弘益会は 『優秀人材がとても多く、選抜するのがむしろ大変だ』と述べた」と書いた。

毎日経済新聞も開通1週間前の2004年3月23日、 試運転中のKTXに乗って試乗期の記事を書き、 乗務員を「地上のスチュワーデス」と呼称した。

マスコミの華麗なスポットライトとは違い、 KTX乗務員は間接雇用非正規職だった。 2年働いた後、彼女らは自分の境遇に気付いて鉄道公社に直接雇用を要求してストライキを行ったが、 公社は280人の解雇で対抗した。 2006年5月、盧武鉉政権の時のことだ。

鉄道公社の直接雇用を要求したKTX乗務員は、それから12年間、解雇者の身分で粘った。 ハンストと断髪、高空籠城、占拠座り込み、三歩一拜など、しなかったことはない。 「12年」は20代半ばの華麗な青春を、四十目前の中年にした。

▲12月21日青瓦台まで五体投地行進のためにソウル駅を出発するパク・ミギョン副支部長[出処:鉄道労組]

「毎日毎日逃げたかった」

鉄道労組KTX乗務支部パク・ミギョン(37)副支部長と会った1月8日は、 本当に曖昧な日だった。 1月16日の裁判所の最後の調整裁判を1週間に控え、 残ったKTX乗務支部組合員全員が薄氷の上を歩くようなじりじりする時間だった。

12年間「希望拷問」に苦しんだパク副支部長は、簡単に口を開かなかった。 自分たちの存在理由を根から否定した2015年の大法院判決の恐ろしい記憶が残したトラウマが一番大きかったと言う。 1月8日の晩、釜山駅にある鉄道労組釜山本部長室でKTX乗務支部パク・ミギョン副支部長と向かい合って座った。

パク副支部長は「82年生まれのキム・ジヨン」より一年先に釜山で生まれ、 ずっと釜山で暮らした。 2003年12月、外国語専攻で大学卒業を控えてスポーツマーケティングの仕事をしたかったが、 鉄道庁のKTX乗務員採用公告を見て応募した。 初の職場だった。

2004年2月頃に採用されたパク副支部長は、2週間、鉄道大学で教育を受けた。 面接の時も、教育の時も、鉄道公社の幹部が出てきて行い、 講師はみんな「今は鉄道庁から公社に転換する時期なので紛らわしいが、 転換後は君たちも公社に連れていく」と言った。 採用は鉄道庁傘下の韓国鉄道流通が行ったが、 すぐに鉄道庁が鉄道公社に変われば公社所属に移すという話だった。

しかし2年後、鉄道公社は鉄道流通が担当していた乗務事業を直接雇用せず、 子会社のKTX観光レジャー(現コレイル観光開発)に再委託してしまった。 乗務員たちは2006年3月、鉄道公社の直接雇用を要求してストライキをしたが、 2か月後に子会社への転職を拒否した乗務員280人は全員整理解雇された。

この時から乗務員たちは、国家人権委員会と労働部、鉄道公社、政界を飛び回って悔しさを訴えた。 しかし社会的な解決は難しかった。 法的訴訟しか方法はなかった。 乗務員たちは鉄道公社を相手に「勤労者地位保全訴訟」を行い、 1、2審とも彼女らの実質的使用者は鉄道公社だと判決した。 そのため解雇された期間に受け取れなかった賃金も受け取った。

しかし2015年、大法院はその年の「最悪の判決」として久しく残る決定をした。 1、2審の判決を逆転し、間接雇用に正当性を与えた。 KTXに搭乗し、コレイルの指示の下で乗客と第一線で会う乗務業務が、合法請負だというとんでもない判決だった。 その判決は280人の青春の人生を否定したばかりか、 彼らの生計も奈落に落とした。 鉄道公社は大法院で敗訴した34人の乗務員たちに「不当利得金還収訴訟」をかけた。 下級審判決により支払われた賃金を返せということであった。 苛酷だった。

大法院判決の後、釜山乗務員1人が子供を残して自殺した。 同じ釜山の同僚だったパク副支部長は 「その時が最も苦しかった」と言う。 毎年3月の友人の命日が近付くたびに、気持ちをきちんと取りまとめることも難しいという。

280人が集団解雇され、あれほど多かった同僚は一人二人と離脱した。 100人にほどの釜山乗務員たちは9人が残り、そのうち釜山に5人が住んでいる。 4人は結婚などでソウルに行った。

パク副支部長は「毎日毎日逃げたかったが、労組を作る時、釜山乗務支部長を引き受けた同僚がとても親しい間なので逃げられなかった」と言う。 12年粘った力はどこから出てきたのかと尋ねた。 「家族の支持が最大の力だった」と言った。 いつも娘の意を尊重してくれた両親と弟の支持がここまで率いた。

パク副支部長は30代半ばの未婚で、両親にたよって暮らすのも難しい歳だ。 生計のために職場に通いながら、復職闘争を続けた。 しかしパク副支部長は「大法院判決が出て、職場でKTX乗務員だった事実を隠すようになりました。 罪人でもない罪人のように、胸の中に沈めました」と打ち明けた。 今通っている職場も彼女がKTX乗務員だった事実を知らない。

民主党が希望拷問を解決できるだろうか

鉄道労組の幹部を通じて1週間後の1月16日、裁判所の調整裁判の話を聞いた。 4大宗団の元老が先月「支給された賃金の5%を乗務員たちが返済して、 鉄道公社が残りの請求を放棄する」という仲裁案を出した。 1月16日、裁判所で調整が成立したが、パク副支部長と会った8日にはそれさえも不透明だった。 パク副支部長は「今度は本当に解決してほしい。希望拷問は本当につらい」と述べた。

文在寅(ムン・ジェイン)大統領が執権すると、 国会環境労働委員会の洪永杓(ホン・ヨンピョ)委員長は昨年7月、あるマスコミとのインタビューで 「KTX女性乗務員は必ず復職しなければならない」と述べた。 1、2審勝訴に続き、執権与党発の希望拷問がまた始まった。

希望拷問の経験により、パク副支部長は 「印鑑を押すまでは信じられない」と述べた。 12年の苦しい経験のために、ある同僚は「釜山駅を通るのも嫌で、 KTXに乗るのも恐ろしい」と言う。 「何よりも自尊感の喪失が一番大きい」。 「地上のスチュワーデス」と詐欺を働いた国家(鉄道公社)と言論に対する背信が強かった。

しかし復職の希望を離さずに戦う乗務員がまだ33人もいる。 パク副支部長も12年前には労働運動の「労」の字も知らなかった。 「初めて鉄道労組KTX乗務支部に加入した時、マスコミとインタビューをしながら、 記者が尋ねるとわれわれは鉄道労組であって民主労総ではないと言うほどでした」と話した。 そんなパク副支部長が12年粘った。 長い間、乗務支部と共にしてきたある労組の幹部は 「乗務員たちはここで諦めれば韓国のどこに行っても間接雇用非正規職の鎖に縛られて、一生暮らすということを本能で知っていたので粘ったのだろう」といった。 実際に2か月前には相変らず間接雇用のKTX現職乗務員たちがストライキをした。 後輩のストライキを見守ったパク副支部長は「胸が痛かった」と言った。

鉄道公社が理事会まで開き、裁判所の仲裁が受け入れられ、 支給金問題は予想通り解決された。 しかし復職、それも直接雇用までには越えるべき山はまだ多い。 鉄道公社と国土交通部、国会、青瓦台門の敷居も残っている。 386出身の呉泳食(オ・ヨンシク)民主党元議員が鉄道公社社長に内定した。 民主党政府が12年前、彼らがこんがらからせたKTX乗務員問題を自分たちで解決するのかが注目される。[ワーカーズ39号]

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2018-02-15 08:20:50 / Last modified on 2018-02-15 08:20:52 Copyright: Default

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