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「憲法精神」も私の人生をどうにもできない

[ワーカーズ・イシュー1]改憲の名前をつけて何日か食べた(3)

キム・ハンジュ、ユン・ジヨン記者 2018.01.31 21:01

「改憲」が主流政界と言論のような「上層部の問題」だけに留まる理由はまたある。 いくら憲法を直しても、本当に私の人生を変えるのは難しいという自暴自棄の心情というか。 憲法のきわめて正しい文句は、いつも下位の法律に邪魔されて砕け散るのが常。 憲法はただ「宣言的意味」の条項だけで、本当の人々の人生を左右するのは憲法を無力化する各種の悪法だ。 下位法令が憲法を無力化する「主客転倒」の代表的な事例を集めてみた。

憲法第33条: 勤労者は勤労条件の向上のために自主的な団結権・団体交渉権および団体行動権を持つ

労働界と民衆陣営が「憲法改正」を闘争スローガンに配置した事例はない。 いつも彼らの主な闘争スローガンは「労働法改正」だった。 労働陣営としては「憲法改正」より、実際の現場で彼らの労働三権を無力化する 「労働組合および労働関係調整法(労組法)」の改正の方がはるかに至急だった。 実際に、憲法には「団結権」が、労組法には「労組設立自由の原則」が、各々明示されている。 申告手続きだけで労働組合を設立できるということだ。 だがこれは労組法施行規則で足かせをかけられる。 施行規則には設立申告書と規約の他にも労働組合の形態、 代表者の身元情報、組合員数、事業場別名称など、 数え切れない追加情報を提出することになっている。 この他にも行政官庁が要求する資料を拒否すれば、労組設立申告が返還されたりもする。 事実上、行政官庁が労組設立に「許可」を出している形だ。 最近では特殊雇用労働者の代理運転手が労組設立申告証を全国単位に変更する組織変更申告を出したが、 労働部がこれを返戻して問題になった。

憲法が明示する「団体交渉権」は、労組法29条第2項の 「交渉窓口一本化手続き」条項で無力化されるのが常だ。 この法によれば、複数労組事業場で使用者と交渉をするためには、 交渉代表労働組合を定めなければならない。 交渉代表労働組合は過半数労組、つまり多数労組になる。 これは結局、少数労組の交渉権と団体行動権を制約する結果を生む。 その上、これは使用者側の「労組破壊シナリオ」に頻繁に活用される。 職場閉鎖後に御用労組を作り、多数労組を先行獲得した後、 民主労組から交渉権と団体行動権を剥奪する手順だ。

団体行動権、つまりスト権は、はるか昔に剥製になった文句に転落した。 「不法ストライキ」というレッテルを貼り、天文学的な損賠仮差押えを請求するのが 政府と事業主の「慣習法」になったからだ。 労組法には「正当な」争議行為に対する民事免責を規定しているが、 この「正当な」という要件は、現実で全く正当ではない。 争議行為の主体、目的、手続き、方法という4種類の難しい要件を充足させなければならないからだ。 特にストライキの目的は「勤労条件のため」だけに制限される。 不当解雇、賃金未払い、整理解雇、民営化、全てストライキの目的とは認められない。 不法ストライキという烙印を押されれば、その時からは巨額の損賠仮差押えがついてくる。 労働者に請求された損害賠償の累積金額は昨年上半期だけで1867億ウォン、 仮差押えは180億ウォンに達した。

憲法第17条: すべての国民は私生活の秘密と自由を侵害されない
憲法第18条: すべての国民は通信の秘密を侵害されない

すべての国民は私生活の秘密と自由、そして通信の秘密を侵害されている。 何がそんなに気になるのか、政府と公権力は頻繁に国民の通信記録を持って行く。 去る2015年12月の民衆総決起の前後。 捜査機関は1千人以上の市民の通信資料を無断に集めていった。 労働界と市民社会の人々や、一般市民をはじめ、 報道機関記者の通信記録まで広範囲にのぞき見た。

当時、進歩陣営では通信会社を相手に「通信資料提供事実閲覧申請」の問い合わせに忙しかった。 「ワーカーズ」記者の通信記録も警察庁と国家情報院などの捜査機関に提供されていた。 広範囲な通信資料の無断収集が問題になると、 警察側は「被疑者と通話をした相手が共犯かどうかを把握するため」という奇怪な解明を出した。 通信記録を無断で収集された民主労総の組合員たちは、国家を相手にした損害賠償請求訴訟をした。 だが結果は原告敗訴。 昨年12月27日、裁判所は「(通信)資料を利用して被疑者を検挙するなどの捜査資料として活用した」という警察の主張を認めた。

憲法に明示された「私生活の秘密」と「通信の秘密」を有名無実にする根拠は果てし無くある。 まず電気通信事業法第83条には捜査機関が捜査などのために通信資料提供を要請すれば、 電気通信事業者はその要請に応じることができると明示されている。 収集の範囲は名前と住所、住民登録番号、IDなど多様だ。 特に住民登録番号さえ手に入れれば、健康保険情報、所得水準、学歴、車両移動経路照会、 捜査経歴資料など、お母さんも知らないほどの個人情報をかっさらって行ける。 これだけではない。 通信秘密保護法第13条には、 捜査機関が捜査のために電気通信事業者に通信事実確認資料の閲覧や提出を要請できるという条項がある。

これで終わりではない。 国家情報院法第3条1項には、 国家情報院が国内保安情報の収集および作成、配布ができるように規定している。 事実「国内保安情報」は対共、対政府転覆、防諜、対テロ、および国際犯罪組織に関することでなければならないが、 国家情報院は国内文化芸術家と政治家などに対する広範囲な査察行為を行ったりする。 さらにある。 去る2016年6月に施行されたテロ防止法第9条は、 国家情報院が「テロ危険人物」の入管、金融取り引き、および通信利用、個人情報、位置情報などを広範囲に収集できるようにした。 「テロ危険人物」という曖昧な概念は、 テロ予備、陰謀、宣伝、扇動が「疑われる」ような人物までも全て含んでいる。

憲法第7条: 公務員の身分と政治的中立性は法律の定めにより保障される
憲法第33条: 公務員の勤労者は法律が決める者に限り、団結権、団体交渉権および団体行動権を持つ

憲法の責任は思ったより軽い。 多くの条項は「法律の定めにより」という修飾語が付けられている。 下位法令に各種の制限措置を委任する修辞だ。 憲法の宣言的な文句は、下位法令でますます抑圧されたり無力化される。 公務員、教師の政治的自由と労働基本権が代表的な例だ。 憲法には公務員の政治的中立性の規定に「法律の定めにより」という但書条項を付けた。 では「法律の定め」とは何だろうか。

教員労組法第3条には「教員の労働組合は一切の政治活動をしてはならない」と明示する。 これはセウォル号惨事の当時、教師の時局宣言を「政治活動」と規定し、各種の懲戒解雇を発生させた根拠として活用された。 昨年8月、ソウル高等法院はセウォル号時局宣言に参加した教師を1審と同じ「有罪」と判決した。 「政治的中立性を侵害した」という理由だ。 事実上「政治的中立性」が「政治的自由」を制限する方式で活用されているのだ。

公務員の境遇も似ている。 検察は去る2010年(273人)と2011年(1、700余人)、 民主労働党に月5千ウォン〜1万ウォンの小額後援支援金を払った教師・公務員を政治資金法違反の容疑で大量起訴した。 昨年は公務員が選挙や政治関連のSNS掲示物を共有したり「いいね」を押すのも不可だという選管委の指針が出された。

憲法によれば、公務員も「法律が定める者」に限り労働三権を持てる。 だが「法律が定める者」は郵政事業本部公務員と非正規職公務員だけだ。 事実上、公務員の労働三権は源泉封鎖水準だ。 国家公務員法第66条には「公務員は労働運動やその他の公務以外の仕事のための集団行為をしてはならない」と明示されている。 このために2002年に発足した全国公務員労働組合は16年間、法外労組の地位に留まっている。 現在まで合計5回の労組設立申告を出したがすべて返還された。 労働組合活動で解雇された労働者だけで136人に達する。

教員労組法第2条には労働組合の組織対象を法律で明示した。 「解雇者」の場合、中央労働委員会の再審判定があるまで教員と見なすという内容だ。 労働組合活動を行って解雇された教師の組合員資格維持規定について、 全教組はこの法律により「労組ではない」という通知を受けた。 2013年に法外労組になった全教組は5年間、法的地位を認められずにいる。

憲法第19条: すべての国民は良心の自由を持つ
憲法第21条: すべての国民は言論・出版の自由と集会・結社の自由を持つ

長い歳月「レッドコンプレックス」に苦しんできた韓国社会において、「思想」は非常に不穏な単語だ。 それで大韓民国憲法は「思想の自由」を「良心の自由」としている。 良心の自由がまさに思想の自由まで包括するということだった。 いったい「良心の自由」とは何だろうか。 憲法裁判所によれば「良心」とは 「何かについて正しい、正しくないと判断するにあたり、 そのように行動しなければ自分の人格的存在価値が破滅するという強く真剣な心の声」だそうだ。 だが韓国社会では「行動しなければ人格的存在価値が破滅してしまうという心の声」が聞こえても、 ひとまず考え直してみなければならない。 そうしなければ「良心犯」として監獄生活を免れない。

泣く子も突然黙るという恐ろしい悪法。 憲法の上の法と言われる「国家保安法」は、何と70年間、良心と思想を支配してきた。 昔の話ではない。 2018年1月現在、監獄に収監されている良心犯25人のうち15人が国家保安法違反容疑という罪目が付けられている。 進歩政党の人々をはじめ、個人事業者、社会団体会員、インターネットの論客なども、国家保安法で実刑を受けている。 現在、国家保安法違反で収監されているC氏は 「民家協良心犯後援会」に送った手紙で 「2013年、朴槿恵(パク・クネ)政権の序盤期にインターネットサイトのダウム・アゴラに『祖国統一の正当性』を書き込み、 ソウル警察庁保安課から事務室と自宅を押収捜索されて起訴された」と明らかにした。 ソウル中央地法はC氏に懲役1年、執行猶予2年を宣告し、その後、交通事故によって執行猶予が失効して、1年間服役している。

良心の自由による生存権と労働権闘争も「ムショ暮らし」への近道だ。 昨年8月、ホン・マンギ前大田世宗建設機械支部事務局長は、 1日8時間労働争奪闘争を行って拘束された。 罪名は暴力行為などの処罰に関する法律による「恐喝脅迫」と「強要」。 ホン前事務局長はただ建設現場で一日8時間労働と建設機械賃貸借標準契約書作成などを要求し、 地方自治体と国民直訴の鐘に工事現場で飛散粉塵が発生すると投書をしただけだ。

ハン・サンギュン前民主労総委員長とイ・ヨンジュ前民主労総事務総長も、相変らず監獄の中にいる。 2015年の民衆総決起集会とセウォル号汎国民追慕行動などの集会とデモを主導したという理由だ。 政権が変わっても何も変わっていない。 民主労総の集会はその目的と結果はともかく、 相変らず「国家の安全保障」と「秩序維持」を害する行為と規定される。 良心により兵役を拒否する「良心的兵役拒否」も、監獄行きの急行列車だ。 共に民主党の朴範界(パク・ボムギェ)議員室によれば、 2013年から2017年8月までの最近5年間、 宗教およびその他の信念を理由として入営や銃を持つことを拒否した青年は合計2356人だ。 そのうち1693人が服役した。〈ワーカーズ39号〉

資本家が望む改憲

憲法第33条の労働三権は、労働法で制限ができる。 憲法第119条の市場の支配と経済力乱用防止、経済民主化条項は、 派遣法と期間制法などの各種の非正規悪法で無力化することができる。 不穏な思想を持った者は、国家保安法と集示法を適用して隔離すれば良い。 企業と資本にとって、今の憲法は大きな障害ではない。 だから資本は今の改憲問題が気に入らない。 つまらない基本権条項が憲法に挿入される前に、はやくこの騒ぎが静まればという気持ちだけだ。

昨年2月3日に国会で開かれた憲法改正特別委員会会議。 この席には二大労総の人物をはじめ、 ナム・ヨンウ韓国経営者総協会(韓国経済人総連)理事とイ・ギョンサン大韓商工会議所(大韓商工会議所)経済調査本部長が参考人として出席した。 この日の会議で財界の人々は、改憲に対する内心と期待を打ち明けた。 彼らの最大の期待はまさに改憲議論が「権力構造改編」の議論の中に埋没することだけ。 改憲問題がわけもなく基本権や経済民主化条項論争で火がつけば、ややこしいことになりかねないという危機感のためだ。

ナム・ヨンウ韓国経済人総連理事はこの席で 「私たち経済人総連としては、今回の改憲議論ができるだけ統治構造変更を中心として早く終わることを希望している」とし 「そうではなく、議論範囲が無理に拡大して議論の期間が長くなると、 政治・社会的対立と不確実性が持続しかねない」と繰り返し強調した。 また「基本権や経済関連条項を憲法で過度に細部的に規定すると、 急変する経済・社会状況による政策対応がむしろ難しくなり、 国政運営の障害になりうるのではないかという憂慮を持っている」とも主張した。

それでも財界のポジションが「守備」だけに留まっているわけではない。 彼らは憲法に「労働三権」と対等な「経営権」条項を導入しようと要求した。 憲法に「経営権」を明示して、労働者をはじめとする第三者の経営参加を源泉封鎖しようという意図だ。 ナム理事は「最近になって労働界では経営権の侵害によるさまざまな問題にもかかわらず、 むしろ勤労者の経営参加を拡大強化すべきだと主張している」とし 「経営権の本質的な内容が侵害される弊害を改善して、 勤労者の経営参加などの過度な要求や不必要な議論を終息させるためにも、 経営権を労働三権と同一の地位で憲法上の基本権として保障する必要がある」と強調した。

憲法に明示された国家の市場介入条項と経済民主化条項についても修正または削除を要求した。 イ・ギョンサン大韓商工会議所経済調査本部長は 「政府介入が行き過ぎて(憲法119条)1項の市場経済原則を侵害する場合、 韓国経済と企業の効率性と躍動性を下げるので、 解決法を出すことがむしろ問題を難しくする結果を誘発する」とし 「経済を民主化の対象と説明し、意志決定や企業経営の参加を活性化すると、 市場メカニズムを歪めかねない」と主張した。

また「青年雇用促進法」等、企業に義務を賦課する法案がむしろ非正規職を量産するという脅迫性の発言も続いた。 イ本部長は「青年雇用促進法が国会に発議され続けており、 これらが導入されると企業の立場としては、むしろ青年雇用がさらに難しくなる。 非正規職だけを量産して青年のきちんとした仕事を見つけるためにマイナスになるという認識を持っているが、 こうした法案が相変らず名分により、多くの国民から支持を得ているようで、 たいへん心配だ」と強調した。

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2018-02-15 08:14:03 / Last modified on 2018-02-15 08:14:06 Copyright: Default

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