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非正規職

[ワーカーズ]ワーカーズ辞典

ソ・ドンジン(桂園芸術大融合芸術学科教授) 2018.01.19 11:16

今から約30年前、封印された魔法の壺から解放された資本主義搾取の幽霊。 非正規職とは正規職ではない雇用を示す言葉で、 まさにそれが何を示すのかは今も五里霧中だ。 非正規職がどんな雇用期間、勤務形態、職種、社会的保障を示すのかについて誰も正確に知らないということは、 新しい資本主義時代の公然の秘密といえる。 したがって、現象を綿密に研究して分析することにより正体を明らかにすることができると我を張るのではなく、 厳格な意味でイデオロギーと見て、それが現実をどのようにして幻想にしてしまうのかを推し量ってみた方が良いだろう。

[出処:サゲ]

韓国での非正規職の歴史的な起源はこうだ。 1997年の外国為替危機当時、外債交渉を口実として国際通貨基金が強要した構造調整政策のうち、 必須品目の労働市場柔軟化とともに、とうとう整理解雇制と派遣勤労制が合法化された。 為替相場の大変動という国家的災難を克服しなければならないという名分で、 長い間刀を磨いできた資本はこの時とばかりに2種類の政策を国家の助けを得て押し通した。 まず、整理解雇制とは株主の機嫌を取るために、いつも経営上の理由をあげていつでも解雇できるようにする悪魔的な制度を示す。 有名な専門CEOが就任すれば、経営合理化のために構造調整を実行して、 続いて嵐のように整理解雇が吹き付けてくる新自由主義資本主義の行動シナリオが国際標準になった。 一方、派遣勤労制とは企業の核心部門の雇用を除く多様な部門の労働を外注、下請、下請の下請に達する多様な企業等に委任することだ。 これは自分が直接雇用した時の負担を画期的に削減するばかりか、 労働者の抵抗を芽のうちに摘み取る画期的外科手術で、韓国では特に大きく脚光を浴びた。 独占が発達した資本主義国家ほど、こうした派遣勤労制は大きな人気を呼んだ。 韓国でも財閥企業が愛用した。 そして2000年代に入り、韓国の全雇用勤労者の半分近くが非正規職という怪談が広がった。

非正規職を特定の雇用形態と考える人は多いが、 これは労働市場が新自由主義的資本主義がまき散らした悪性のイデオロギーに深く中毒したことを示すだけだ。 非正規職とは、机の上にあるコンピュータのように、私の外にある与えられた事実ではない。 換言すれば、非正規職という「何か」を示すのではないからだ。 非正規職とは、あえて言えば正規職を雇用せず、資本が自由に必要な時、必要な時間だけに、 それも可及的安値で労働力商品を購買できるという、 資本には夢のようなことが可能になる階級闘争の効果でしかない。 問題は、労働者の力は弱まり、資本家の力はものすごく強くなったということだ。 したがって、非正規職とは資本が絶対的な力の優勢の下で、 資本と労働の間に階級的な力の関係が変わったことを示すだけだ。 そうした条件で、資本家階級は自分たちに役に立つことなら何でも厭わない。 柔軟化と構造調整という、優雅ではあるがはっきりしない名前で進められたこれまでのことは、すべてこれを示す。

21世紀に荒れ狂う資本の呪術

賃金に頼って暮らす労働者にとって、雇用は生活の中心的な舞台であり、 賃金は生活の命綱といえる。 したがって安定した長期的な雇用と、暮らすことができる、つまり社会的な再生産が可能な水準の賃金と、その他の給付は切実だ。 そしてこれを保障するために、人々は政治に参加する市民権ではなくても、適切な生活条件、つまり住居と教育、健康、休息などの権利を社会権という名で要求した。 第2次大戦が終わり、北米と西ヨーロッパ、そして進んで東ヨーロッパの国々もこのような権利を保障することを譲歩しないわけにはいかなかった。 しかし1970年代後半から本格化した資本主義の危機は結局資本家の反撃を呼び、 その結果を示す漠然とした名前が新自由主義だといえる。 市場を優先視する統治体制を示す新自由主義は、新しい資本主義的社会関係を作り出すために寄与する国家の姿でしかないという点で、 今日世界が処している姿を忠実に説明するためには限界がある。 しかし労働者の肩を持たざるをえない国家がこれ以上その役割を放棄して、 資本家階級の執行機関としての姿を赤裸々に見せたという点で、 新自由主義は高い授業料を払って学ぶ歴史的教訓となる。 とにかく非正規職は今日、疫病のように広がった特殊で例外的な現象ではないという点を銘記することが重要だろう。 資本はいつも非正規職のような形態の搾取を必然的に動員する。

一時的、期間制勤労者や時間制勤労者、派遣、用役、呼び出し(一日)、特殊雇用、家庭内勤労者などを 網羅する非正規職のリストをすべて埋めるのは、徹夜をしても難しいだろう。 またそんなことは無駄な努力でしかない。 それぞれの名前は、そうした悪質的な雇用を法律的な事実として認めさせたいと思っているに過ぎない。 一方、非正規職という名前で生きていく悲しみと苦痛を装いながら、特権を持つ「鉄鉢」正規職との格差を強調し、 両者を仲違いさせるのは、今日資本家階級が喜んで使うイデオロギー的な小細工だ。 問題は正規職の特権を打破するのではなく、資本の思い通りに雇用を左右できるような状態を示している非正規職化の可能性を阻止することだ。 それは階級的な力の関係を労働者に役に立つ方向に変えることから、 機会さえあれば失業と不安定、不完全雇用を敢行するほかはない資本主義を廃止するなり、手を入れることでなければならない。 そしてその時にのみ、21世紀に荒れ狂う呪術の一つである非正規職から抜け出せる。[ワーカーズ38号]

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2018-01-31 01:19:36 / Last modified on 2018-01-31 01:19:38 Copyright: Default

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