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性平等は性少数者の問題か

[ワーカーズ]レインボー

ナヨン(地球地域行動ネットワーク) 2018.01.10 10:39

「子どもはどう作るんだ!」 「女も軍隊に行けばいいじゃないか!」

12月8日、ソウル市教育庁が主催する性平等教育政策討論会を修羅場にした人々が叫んだ言葉だ。 彼らは「男と女の区分をなくすのか」 「両性が平等の時は男と女なのに、性平等を話す時はなぜ女性だけを話すのか。 平等ではない」と言って「両性平等か性平等かを答えろ」と要求した。

それから1週間後の12月15日、女性家族部は第2次両性平等政策基本計画で 「両性平等」という用語を「性平等」に変えるという立場を後退させた。 「性平等は性少数者を含む平等を意味する」と言って反対してきた保守キリスト教系のヘイト集団の抗議に押されたのだ。 女性家族部は前から二つの用語を混用してきて、今後も混用するだろうから問題はないという立場を明らかにしたが、これは明白な後退だ。 何としても「性平等」はだめだと言い、改憲の議論、教育界の討論会、女性家族部まで追いかけながら反対している人たちにとっての「両性平等」とは、 まさに性役割の強化を意味するものだからだ。 しかし嘆かわしいことに女性家族部はその差を説得できず、 自らも「性平等」の概念の意味と重要性を整理できないまま 「両性か」あるいは「性少数者か」のフレームに巻き込まれてしまった。

▲12月20日、政府の両性平等基本計画発表の前に団体が性平等改憲と政策を要求する記者会見をした。[出処:地球地域行動ネットワーク]

「性平等」に反対するための「両性平等」

彼らの価値に反する変化に反対するために、これまでに馴染んだ概念とフレームを専有する方式は、 ニューライト右派とその勢力と連合する保守プロテスタント界ヘイト集団の主な戦略だ。 過去には特に保守とはっきり対立した進歩陣営の概念と用語を積極的に借用してフレームの罠を作った。 「平等」であれ「人権」、「差別」、「緑色」、「多様性」、「アイデンティティ」、「女性」などの用語それだけでは 進歩の指向を表わすことがますます難しくなる。 そしてこれはかなり効果的な反撃になる。 差別の論理を「逆差別」の議論で乱し、「堕胎罪」の廃止に反対するために「女性の健康権」を引き込むという形だ。 性平等に反対するために両性平等を打ち出す戦略も同じだ。 これは単に韓国だけではなく、すでに80年代から米国の右派が使った戦略で、 今では台湾をはじめとするアジアとアフリカの主要地域で積極的に活用されている。

「両性平等は男性と女性の平等を意味するが、 性平等は数十の性別アイデンティティと性的指向を容認する問題」だという彼らのフレームは、 「時代が変わったので男女平等は認めるとしても、 性少数者までを認めるのはちょっと厳しい」という大衆に対し、もっともらしい名分を提供してくれる。 つまり、「両性平等」を男女のもの、「性平等」を性少数者のものとして対立させることにより、 一方ではまるで男女平等さえ認めなかった過去の保守の立場よりは一歩進んだと見られて、 「性平等」への反対は合理的な理由があるからだというメッセージを伝える。 しかし前の教育庁討論会で吐き出した彼らの叫びは、彼らが要求する「両性平等」の意味が何なのかをありのままに見せている。 結局に男と女という「両性」は、神の意志によって与えられた役割と規範があり、 それに忠実な生活を送って「相互補完」が平等だという主張だ。 この「相互補完の平等」のために男女は性別による規範をよく守って異性愛の関係を結ぶべきであり、 女は出産して自分の役割を果たさなければならない。 国家はこの役割をきちんと遂行できるように必要な条件を作れば良いというのが彼らが望む「両性平等」だ。 だから逆説的にもこの平等は初めから差別に対する具体的な認識を前提にしていない。 さらにその上「女性がその役割をうまく出来るように手伝うこと」は、 現在の水準の「両性平等」の要求のフレームの中にいくらでも違和感なく入ってくるという事実、 これがまさに「両性平等」を活用する人々のフレームが持つ重要な陥穽だ。

平等のフレームを転換するために

結局「『両性』か、性少数者を含むのか」という水準で、 右派と保守プロテスタントのヘイト集団が設定したフレームから抜け出せずにいるのなら、 これは現政権と女性家族部が持つ弱点を正確に攻略しているわけだ。 さらに拡張すれば、運動の論理もまたその地点を突破できなくなっているのではないかと振り返るべき問題だ。 「性」を「両性」の枠組みに入れて、平等を単に「男性や女性に必要な条件を作ったり解決してやる問題」という水準で維持すれば、 たとえ用語が「両性平等」から「性平等」に変わったとしても、 究極的な変化は期待できないだろう。 労働政策や仕事・家庭の両立政策、低出産政策などで、こうした政策が代表的に維持されてきて、 性暴力、家庭暴力、性売買に関する政策でも土台になる前提は「両性」のフレームから大きく抜け出せなかった。 性少数者が経験する差別と暴力が結局、女性政策からかけ離れた別個の領域で扱われる問題ではないという認識を政策全般に反映させなければ、 両性平等を性平等の対立点に置くフレームから抜け出せない。

女性家族部が「両性平等政策には性少数者は含まれない」とし、 大田広域市性平等基本条例の性少数者人権保護条項を削除・改正するよう指示した2015年、 ソウルの大漢門前で開かれた女性性少数者決起大会の参加者は次のように宣言した。

「われわれは性別規範に合わせて暮らすことを強要され、 そうでなければ非難されてきた。 髪を伸ばせ、可愛く微笑しろ、女だと思って話せ、男性と結婚して子供を生め…。 われわれは多様な女性の一人であり、女性に要求される役割と女性への偏見から自由ではない。 私は(われわれが)処した現実を性差別であると話すことができ、 これを変えることが性平等に寄与するところだと確認する。

性別賃金格差、女性差別的労働環境、セクハラ、性暴力、家庭暴力は、 性少数者を避けない。 性少数者だという事実がわかればそのような差別と暴力は増幅される。 私は、(われわれは)女性と性少数者への不当な差別と暴力に正面から闘うことで 完全な私たちの人権を争奪する可能性があることを確認する。

われわれは質問する。 女性家族部が話す女性とは誰なのか? 性差別とは何なのか? 性平等とは何なのか?」[ワーカーズ38号]

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2018-01-21 00:59:09 / Last modified on 2018-01-21 00:59:11 Copyright: Default

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