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誰でも「労組」という世の中は来るのか?

[ワーカーズ]労働の追憶

オ・ジノ(非正規職ない世の中作りネットワーク) 2017.09.07 15:16

8月17日、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は就任100日記者会見の質疑応答で 「労組の組織率を高めることが重要で、 政府も労組組織率を高めるために政策的な努力をする」とし 「労組の結成を妨げる使用者側のさまざまな不当労働行為は強力な意志で摘発して処罰したい」と答えた。 2年前、当時、与党の代表だった金武星(キム・ムソン)が「強硬労組のおかげでGDPが3万ドルにならなかった」という根拠のない話で労組を非難したことを思い出すと隔世の感だ。 大統領が労組の組織率を高めると宣言する世の中。 「誰でも労組ができる時代」はもうすぐやってくるのだろうか。

[出処:サゲ]

減刑のための小細工、柳時英2審裁判

大統領の発言があった一日前の8月16日、ユソン企業の柳時英(ユ・シヨン)会長などに対する控訴審宣告があった。 不当労働行為を行った企業主の厳罰に対する意志を計ることができる判決だった。 すでに1審判決で柳時英会長は懲役1年6か月と罰金200万ウォンを宣告され、法廷拘束された。 会社は1審判決が「不当判決」という壁新聞を現場に付け、労組に謝罪したり誠実な対話に臨むことは、仮釈放のため「不当な妥協」だと明らかにした。 動揺する管理者には会長が近い将来、釈放されると見られると話し、 裁判では会長は労組破壊を指示しなかったととぼけた。 最低限の反省もしない会社。 続く弾圧と経営陣の絶え間ないいじめ、彼らに警鐘を鳴らすためにも2審宣告は重要だった。

2審で裁判所は柳時英に懲役1年2か月と罰金100万ウォンを宣告した。 1審より低い刑量。 2審判決文で裁判所は創造コンサルティングが作成した戦略会議文書(労組破壊文書)の証拠価値を認め、 柳時英の共同正犯としての責任を認めた。 不法な職場閉鎖、懲戒、解雇などの不当労働行為と、会社が御用労組に介入した行為も認めた。 1審と異なる判断をした部分は、職場閉鎖期間に支払われなかった賃金に対する部分だった。 職場閉鎖は会社が労働者たちの生計を威嚇する手段だ。 特にユソン企業は職場閉鎖の期間を延ばし、ユソン支会の組織力と闘争力を弱めて、御用労組が勢力を拡張する手段として悪用した。 裁判所はこうした事実をすべて判決文に指摘したが、賃金不払いの故意性はないと判断した。 特定の目的(賃金不払い)のために犯した行為は不法だが、 その目的は故意性がないというとんでもない判決。 事実上、減刑のための小細工というほかはない。

憲法33条を無力化する労組破壊シナリオ

ユソン企業での労組破壊を可能にした信号弾は、2010年に導入された 「複数労組交渉窓口一本化」であった。 ハンナラ党と民主党がタイムオフ制と交渉窓口一本化を骨子とする労組法改正案を通過させるやいなや、 慶州のヴァレオマンドをはじめとする全国の部品メーカー労組を対象とする労組破壊シナリオが稼動した。 ヴァレオマンド(2010年2月)、亀尾KEC(2010年6月)、大邱相信ブレーキ(2010年8月)、ユソン企業(2011年5月)、マンドとSJM(2012年7月)…。 ほとんどの労組が体験したことは似ていた。 会社は外注化や団体協約を問題にして労組の争議行為を誘発する。 労組が争議行為を始めると、会社は用役チンピラを投入して職場閉鎖を断行する。 労働者たちが生計に疲れて業務復帰を宣言すれば、会社は業務復帰の対象を選別する。 この過程で、会社は会社の言うことをよく聞く人を集めて会社側労組を作る。 こうした二つの労組に対し、会社は一方的に会社側労組に恩恵を与え、民主労組組合員を差別して、弾圧する。 労組破壊シナリオが稼動したほとんどの事業場で似たようなパターンが繰り返された。

これは憲法33条(勤労者は勤労条件の向上のために自主的な団結権・団体交渉権および団体行動権を持つ)を無力化する違憲的な行為であった。 これを可能にした主な力は、政府と国家機関の協力にあった。 2011年、警察はユソン企業ストライキの対応策として 「労組指導部に対する逮捕令状の早急な発行」、 「使用者側対象、損害賠償請求誘導」、 「工場断電・断水、ガス遮断」等を提示する。 「労組」を敵とみなしたのだ。 また、労働部と検察はユソン企業の不法な職場閉鎖と不当労働行為の証拠を持っていたが、 これをきちんと調査もせず、すぐに起訴もしなかった。

「労組破壊シナリオ」が準備され、実行された過程は、韓国でいかに労組をすることが難しいかを如実に示す。 「労組」を敵として規定する企業。 企業の味方を自任する国家機関。 労組をするといううわさだけでも解雇され、ブラックリストに載せられる職場、 不当労働行為をしても企業主は処罰しない司法府、 企業の横暴は目をふさぎ、労働者の抵抗は踏みにじる公権力。 これら全てが労組する権利を遮る根深い積弊だ。

柳時英2審判決と大統領発言の間

柳時英の2審判決で裁判所が働かせた小細工と大統領の「不当労働行為厳罰」発言の間の隙間は深い。 これを埋めるためにはもっと根本的な手術が必要だ。 その手術の一つは「複数労組交渉窓口一本化」の廃棄だ。 今は交渉に対する裁量権が会社にある。 だから会社側労組が過半数以上の時は、交渉窓口を一本化して民主労組の交渉権を奪い、 過半数に満たない時は個別交渉で会社側労組に恩恵を集める。 民主労組を困らせるために悪用される交渉窓口一本化は、即刻廃棄されなければならない。

また、非正規職に関する法制度をなくさなければならない。 労働組合の扉を叩く非正規労働者を「解雇」させることは、会社の立場としてはあまりにもやさしい。 契約職の場合は契約を解約すれば良く、派遣職なら下請企業を廃業させれば良い。 労働者を簡単に使い捨てられるようにした非正規職関連の法制度は、 労組する権利を無力化させる強力な道具だ。

最後に、不当労働行為を犯した企業主に対する実質的な処罰が必要だ。 カプチル(優越的地位の乱用)が蔓延する韓国社会では、企業主は不法を恐れない。 労働者たちを困らせても、不当労働行為を行っても処罰されないからだ。 だから不当労働行為を行うことが重犯罪になるという手本が必要だ。 労組をする権利は普遍的な権利であり、 これを侵害することは深刻な犯罪になるという事例を作らなければならない。[ワーカーズ34号]

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2017-09-14 11:12:04 / Last modified on 2017-09-14 11:12:07 Copyright: Default

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