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英国、第3の道はない

[ワーカーズ]ジェレミー・コービンの善戦...「少数ではなく多数のために、中道ではない左派が代案」

チョン・ウニ記者 2017.07.14 11:07

5月22日、英国総選挙を目前にしてマンチェスターの中心が火の海になった。 米国ポップ歌手の公演の直後、公演会場のすぐ外で爆弾が爆発して22人の生命が無惨に犠牲になった。 まもなくロンドン中心部の橋脚と商店街でも車両突進と凶器テロが発生し、 7人が亡くなった。 今年3番目のテロであった。

英国の総選挙選挙運動は一瞬で廃墟になった。 保守党出身のテレサ・メイ英国総理は選挙運動を一時中断すると宣言しつつ、 極端主義者に対する政策を強化するとして選挙前に起きた惨事にも自信を示した。 「政府委員会を作って極端主義者の捜索と検挙に拍車をかける。 インターネット企業は極端主義者を検挙するためにさらに協力しなければならない」。 メイは、人権の代わりに統制と武装を強化して安保を守るという右派の古い十八番をまた取り出して叫んだ。

だがジェレミー・コービン労働党代表は、この右派的な修辞を階級問題に置き換えて議論の構図を正反対に変え、右派に対し決定打を飛ばした。 コービンは数年間の保守党政府の緊縮政策により合計1万9000人の警察人員が削減された点に注目した。 特に2010年に内務長官だったメイ総理に直接的な責任を問い、これを元に戻すと約束した。

するとコービンの声を支持するメッセージが相次いだ。 警察監査だったピーター・カークハムは英国の言論「スカイニュース」でメイ総理を 「嘘つき」と追い詰めて、 対テロの重要な措置が警察の人員削減で後退したと非難した。

続いて英国の日刊インディペンデント紙は、メイ総理の政策が一般警察を準軍事化した一方、 その上に軍隊が街頭を掌握したと批判する匿名の警察関係者のインタビューを送りだした。 その上にいち早く5つの多様な保健と救助部門労組の代表者が加勢し、総理を困窮に落とした。 彼らは保守党の緊縮政策が消防、救助、保健などの分野をいかに後退させたのか、細かく証言した。 ついに海外の戦場のシリアからもメッセージが飛び込んだ。 イスラム国家(IS)と戦うクルド族民兵隊人民守備隊(YPG)に志願入隊したある英国活動家はインディペンデントに、 「ジェレミー・コービンだけがどうすればISを止められるのかを知っている。(...) テレサ・メイが総理職に長く留まるほど、シリアと英国本土での安全はさらに後退するだろう」と述べた。

[出処:レッドペパー]

労働者階級問題で善戦

この事例は、ジェレミー・コービンが右派に有利な「テロ」という問題をいかに緊縮と福祉、雇用とからめて階級的問題にしたのかをよく見せる。 当初、英国の右派と極右は経済危機と社会的反発の高まりを「ブレクジット」によって自国中心の自由主義強化、国粋主義と人種主義をあおり、突破しようとした。 実際、この2〜3年間、こうした右派的戦術は英国社会だけでなく、国際的にも重大な影響を与えた。 だがコービンはこれを階級的問題に回した。

「少数ではなく多数のために」というスローガンと共に出した総選挙の公約も、労働者階級を直接ねらう。 まずサッチャー時代に民営化された鉄道と上水道、エネルギーなどの主要基盤施設を再公営化したり公営化すると公約した。 また、労働柔軟化を強制した代表的なゼロ時間契約制を廃止する一方、 反労組的な悪法を廃棄して労働権と労組をする権利を保障するとも約束した。 国家保健サービス(NHS)と教育、福祉予算の増大や、登録金廃止のような公約も省けない。 富裕税や高所得者に対する課税引き上げなど英国の富裕層に対する改革措置も含まれた。 しかし資本と金融に対しては、企業法人税の値上げや金融取引税の対象拡大などに終わった。 コービンが労働党を左派的に牽引するとしても、政党本来の社民主義による左派的改革措置以上には進めなかった。

とにかく、こうしたコービンの公約は、英国の大衆から良い反応を得たが、 社会的弱者世代、性、人種、階級皆で多数を獲得したことが明らかになる。 保守党に傾くものと予測された英国独立党の支持者も労働党に票を集中させた。

結局、今回の総選挙で労働党は、1945年以来最大の成果を記録して30議席を増やした。 「強い」ブレクジットのために、早期の総選挙を実施したメイ政府はむしろ過半数の議席を失い、重い政治的責任を負うことになった。 また、与党が多数を占められない「少数派議会」になり、 英国の政界はまた総選挙をしなければならない状況だという展望も出されている。 コービンが善戦した現在の条件を考慮すれば、再選の時に彼が勝利するという予測も出てきている。 コービン側としても、もうひとつの総選挙を攻勢的に要求している。 コービンと近いジョン・マクドネル労働党影内務長官は14日、英国労総(TUC)の7月1日デモを支持し、 メイ政府を打倒して新しい総選挙を実施するように要求しようと提案した。

こうしたコービンの選挙運動に、英国左派の著述家リチャード・セイモアは「マンスリーレビュー」の最近号に 「コービンは(当初ブレアが使った)新労働党のスローガン『少数ではなく多数』を情熱的に採択し、 これよりはるかに急進的な抑揚を付与した。(...) 労働党は恥ずかしくない階級中心のキャンペーンを進めた」と評した。

第3の道が生まれた土地での大衆的拒否

しかしこうした選挙の結果は保守党に対するコービンの善戦だけでなく、 「第3の道」で有名なトニー・ブレアの労働党右派に対する勝利だという点でもうひとつの意味を持つ。 当初、ブレアは新自由主義優勢に抵抗する代わりに自由放任主義の資本主義に投降し、 「人間の顔をした資本主義」というより軟らかい仮面を選んだ。 労働者のための政党という、労働党綱領の第4条を削除して国有化のような社会主義政策も捨てた。 こうしたブレアは1994年に労働党首に就任した後、 1997年の総選挙で大勝をおさめて18年間の保守党執権を終わらせ、 英国内だけでなく世界的な神話を鋳造していった。 1990年代の東欧の没落の中で、第3の道は反響を得てドイツのシュレーダー社民党政権、 フランスのリオネル・ジョスパン同居政府の右傾化にも一助になった。 韓国でも金大中(キム・デジュン)政権の「生産的福祉」の重要な背景になった。

ブレアはその後の総選挙でも3回連続勝利したが、英国大衆の生活条件は後退するだけだった。 進歩という名で公共領域の民営化を強制し、企業減税に積極的だった。 この過程で労働党は徐々に崩れ落ちた。 イングランドでは保守党を落とせず、労働党が強かったスコットランドはスコットランド独立党に押され始め、 既成政党に対する拒否は主に極右英国独立党が代表した。 ついに2003年には英国で史上最大の反政府デモが起きた。 結局、労働党は執権8年間で113議席を失い、ブレア執権前まで縮んだ。

労働党の政治家たちはこの20年間、衰退する支持率の中で新しいブレアを探してきた。 これまでゴードン・ブラウンやエド・ミリバンド、そしてオーウェン・スミスまで、 すべてブレア主義者のむなしさをなだめようと努力したが、 彼らはすべて中道の中で、もがくだけだった。

ついに英国会社会は2008年の世界金融危機の余波で保守党政府の緊縮政策がさらに苛酷になって貧困と不平等が深化する一方、 拡散するテロの中で既存の社会に対する嫌悪が深まっていった。 こうした状況で、2015年の労働党代表選挙に立候補した党内左派のジェレミー・コービンは、多くの人々の予想を裏切り勝利した。 また、これまで英国内外の主流言論だけでなく、党内右派のクーデターの試みまではね除けて今回の総選挙まで有意味な記録を作り、位置を固めた。 「ファイナンシャルタイムズ」までが「コービンは前例ない社会主義の復興を掘り起こした」と記録した。

結局、第3の道が始まった故郷である英国の有権者の多くは労働党左派を勝利させ、 新自由主義のもうひとつの顔であるブレア主義に背を向けた。 反面、韓国内では金大中政府と路線を共にする文在寅(ムン・ジェイン)政府が「社会投資国家」などのブレア式改革主義を露骨化させ、 故郷でさえ敬遠された社会的妥協主義をまた持ち出している。

「コービンの勝利はもうひとつの社会が可能だということを示す」

コービンが新しい政治的現象を率いているという点にも注目しなければならない。 まず、ブレア執権の後に労働党を離れた労働組合をまた結集させている。 これまで英国のほとんどの労組は労働党を組織的に支援しながらも、 1997年から2010年のブレア主義の新労働党の時に右傾化を防ぐことができず、 多くの左派的労働組合はこうした労働党に背を向けた。 残った労組は2010年に労働党内左派のエド・ミリバンドの選出を支持したが、変わったことは殆どなかった。 しかし今回の選挙では労働党と提携した14の労組だけでなく、英国鉄道交通労組(RMT)など急進左派指向の労組も組織的にコービンを支持した。

左派組織の支持率も注目すべき部分だ。 戦闘的な英国の労組運動家で社会主義者であるボブ・クロウが2010年に共同設立した左派同盟労働組合と社会主義連盟(TUSC)も5月に声明を出して 「社会主義政策を目標にするコービン主導の労働党を全的に支持する」と宣言した。 彼らは2015年にコービンが労働党代表に選出された後から保守党とブレア主義者に反対する彼の闘争を支持してきた。

コービンを支持する労働党の草の根党員の会、モメンタム(Momentum)の実践も注目される。 2015年にコービンが党代表に選出された後に生まれたこの組織は、 前回の地方選挙に続いて今回の総選挙でも、 地域とSNSなどで影響力ある政治運動を展開した。

今回の選挙でジェレミー・コービンは階級的な問題を前面に掲げて善戦し、 労働党を含む英国の政治に新しい流れを作り出した。 英国内からのみならず、米国のトランプ執権とブレクジット国民投票で頂点に達した世界的な右傾化の流れにも変曲点を残した。 しかし保守党だけでなく、当代のブレア主義者たちをはじめとし、 衰退する英国経済でもブレクジット交渉、テロなど、コービンに対する挑戦は続くだろう。 果たして彼が主導する左派勢力がいかにして労働者の階級的代案を追求していくのかが注目される点だ。[ワーカーズ32号]

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2017-07-18 13:54:46 / Last modified on 2017-07-18 13:54:48 Copyright: Default

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