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News Item 20170705
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文在寅式「社会的大妥協」は労働者の賃金を狙う

[ワーカーズ イシュー]民主労総が参加する雇用委員会、賃金カット-雇用創出のビッグディールか

キム・ハンジュ・ユン・ジヨン記者 2017.06.21 11:39

文在寅(ムン・ジェイン)政府の労働界抱き込み戦略は、それなりに成功している。 戦略が良かったというよりも状況が良かった。 政権批判勢力に押されてはいけないという社会的雰囲気が生まれ、 その中で労働組合は改革の対象になった。 同時に文在寅大統領は「公共部門の正規職化」を掲げて強力な労働改革ドライブをかけた。 労働界に対しては、対話をしようと言って手を振った。 民主労総の選択は大衆的な雰囲気から大きく抜け出さない。 19対9。 民主労総中央執行委員会は圧倒的な賛成で文在寅政府の抱き込み戦略に応じることにした。 そして民主労総は6月8日、大統領直属の雇用委員会への参加を決定した。

[出処:資料写真]

文在寅式「雇用政策」の序幕

国政支持率は80%前後。 相変らず雰囲気が良い。 政府としてはこの期間中に強力な改革を進め、可視的な成果をあげなければならない。 中でも政府が一番力を入れている議題は、大統領の1号公約。 まさに雇用創出だ。 仁川空港を訪問して「公共部門の正規職化」を約束した文在寅政府は、直ちに大統領直属の「雇用委員会」を発足させた。 長官級が委員長となる労使政委よりも地位が高い機構だ。 雇用委員会の役割は、労使民政の社会的大妥協による雇用創出だ。

6月1日には「雇用100日計画」を発表した。 就任後100日中に至急、処理する雇用政策だ。 ここには光州型雇用モデルに代表される「労使共生型雇用モデル」の拡散計画が含まれている。 これと共に、政府は公共部門成果年俸制を廃棄する代わりに職務給制度導入を検討している。 すでに韓国労働研究院に職務給制度導入の研究用役を任せた状態だ。 その間、仁川空港を始めとする公共部門の正規職化の風は民間部門に燃え移った。 仁川空港と未来創造科学部政府出資機関、韓国電力、韓国水力原子力などの公共機関をはじめ、 SKブロードバンド、ロッテグループなどが正規職化計画を発表した。 直接雇用の正規職ではなく、子会社設立による迂回的な正規職化方案だった。

メスが入れられたのは「財閥」ではなく労働者の「賃金」

朴槿恵政権による労働改悪の試みの真っ最中だった去る2015年8月。 ソウル市汝矣島の中小企業中央会では「労働市場改革、どうするべきか」特別討論会が開かれた。 この席に参加した当時の文在寅新政治民主連合代表は 「710兆ウォンもの企業社内留保金を解いて、青年雇用に投資しなければならない。 労働者だけが苦痛を分担することはできない」と声を高めた。

だがおかしなことだ。 現在、政府の雇用政策は財閥大企業を手術台に上げない。 むしろメスの切っ先は労働者の賃金だ。 政府が拡大しようとする「光州型雇用」は大企業正規職の賃金を削減し、下請労働者と分けあって雇用を創出するモデルだ。 職務給制度はひとつの職務をまとめて賃金を策定する賃金体系だ。 その職務から抜け出さない限り、永遠に同じ処遇が続くほかはなく、「永遠の差別を定着させる制度」と言われている。 子会社の正規職転換も、既存の「総額人件費」を維持して雇用安定を試みる方式だ。

去る5月29日、希望製作所のサダリ(はしご)フォーラムが主催した「新政府の公共部門雇用政策」で、 韓国労働研究院のペ・ギュシク専任研究委員は職務給制度の導入、子会社の設立による正規職化方案を提示した。 そして公共部門の正規職賃金を抑制して非正規職の処遇改善に活用しようと提案した。 ペ・ギュシク研究委員は提案発表文で 「公共部門の高賃金(たとえば7000万ウォン以上)を抑制して公共部門人の件費を統制し、 ここで節約できた賃金分で公共部門の追加雇用、非正規職の正規職化、子会社正規職化、処遇改善に必要な費用の一部を充当する必要がある」と明らかにした。

傾いた運動場に立った民主労総

政府の雇用政策は、オランダの労使政大妥協モデルをベンチマーキングしている。 正規職の賃金削減と雇用創出をバーターした社会的大妥協モデルだ。 これから民主労総をはじめとする労働界と政府、財界、市民社会が「社会的大妥協」のために議論する議題でもある。 6月13日、労働運動陣営の左派グループが主催した「文在寅政府の労働戦略、労働運動の課題」討論会で、労働者連帯のキム・ハヨン運営委員は 「オランダの労使政大妥協の結果は時間制雇用の急増と低賃金労働者の増加、そして女性貧困拡大に帰結した」と説明した。 続いて「文在寅政府の正規職譲歩論の実際の目的は、 経済不況に直面した企業の費用を減らし、競争力を強化させること」と批判した。

こうした状況なので、労働界の批判的な声はよく聞こえない。 子会社の設立による正規職転換、職務給導入などに対する民主労総の立場も明確ではない。 6・30社会的ゼネストも「非正規職事業場ストライキ」に縮小された。 現在、はっきりしているのは、民主労総が低賃金-非正規職雇用をなくし、より良い雇用を作るために雇用委員会に参加するという方針だけだ。 だがこれさえ民主労総の意志が反映されるかは未知数だ。 30人で構成される雇用委員会で民主労総の席は一議席だけだ。 政府側の人物だけで15人、政府が推薦した民間の専門家は9人に達する。 議決構造は在籍委員の過半数の出席、出席委員の過半数の賛成だ。 これほどなら明らかに傾いた運動場だ。 もちろん、民主労総は雇用委員会への参加を条件として労使懸案を議論する「労政交渉定例化」を掲げた。 だが一部では雇用労働部長官が任命されれば、労使政委の看板を変えただけの、 もうひとつの社会的対話機構が新設されるという展望も出ている。 どんな機構ができても、結局民主労総の階級代表性の解体と労働者分離戦略に帰結するのではないかという憂慮もかなり強い。

労働党のチョン・ジヌ労働委員長は 「労使政委、または労政交渉の枠組みが運営されても、 それは政務的な対話ラインを維持する必要による手順になるだろう」とし 「メインテーブルは『労政』が向き合って座る食卓ではなく、『万人』が丸く座る円卓だ。 重要なことは、政府の核心労働戦略が労働運動の階級代表性の解体を正面からねらっているということ」だと強調した。[ワーカーズ32号]

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2017-06-23 20:46:04 / Last modified on 2017-06-23 20:46:07 Copyright: Default

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