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「光州型雇用」をめぐる彼らの内部事情

[ワーカーズ イシュー]政府のお気に入り、「光州型雇用」が疑わしい(2)

キム・ハンジュ・ユン・ジヨン記者 2017.06.19 15:08

九龍自動車

光州市光山区にある九龍コリアの事務室を訪れた。 机は清潔で、職員も見えなかった。 九龍コリアのキム・テヒョク代表は 「職員は前日みんなソウル事務室に行った」と説明した。 ソウル事務室の位置を尋ねたが答は聞けなかった。

キム代表は事実に基づかないことが報道、流布されているとし、くやしい心境を吐露した。 資本金1億ウォンの法人を設立しただけで投資をしていないという疑惑についても釈明した。 キム代表は「現在、資金が確保されていて、資本金を数十倍に上げる作業をしている」とし 「数日内に増資を終える予定」と明らかにした。 ただし具体的な増資方式については答えなかった。

中国の九龍自動車の規模を把握するために、キム代表に正確な資本金の規模を尋ねたが 「(資本金が)とても大きい。今は忘れてしまった」とし 「九龍は昨年、ジアンテグループという大きなグループと合併した。 ジアンテグループはホテル、病院、デパート事業と数十社の納品業者を率いる会社」と強調した。

光州市とマスコミの報道によれば、九龍コリアはまさに今年から電気乗合車2000台を量産しなければならない。 だがMOU締結から1年経っても工場ができるビッグリン産団には着工もしていない。 これについてキム・テヒョク代表は 「そうした内容の事業計画は明らかにしたことがない」とし 「本来の計画は18年度に工場を着工し、20年までに終わらせることだった。 事業が遅れているのではない」と主張した。 光州型雇用については「(光州型雇用に)共感している。 現代起亜車や、韓国の自動車企業はとても高賃金で労組問題も深刻ではないか」と答えた。

中国現地の九龍社長、副社長との親密関係が厚いと言われているのとは違い、 まさに中国語ができないという疑いについても不快感を示した。 彼は「みだりに人身攻撃されるのがとても不快だ。 (中国語で)コミュニケーションは可能だ」とし 「96年から中国に通ったし、九龍社長、副社長は個人的によく知っている方々」と説明した。 だが取材陣がキム代表に関連の中国語単語を聞くと「よく知らない」とし 「英語でほとんどの業務をしているから」と答えた。

キム・テヒョク代表は九龍コリアについての巷間の誤解が解ければという期待を示しながら 「昨年、市長と議員さんの訪問団に中国の九龍に行ったが、規模があまり大きくてびっくりした。 双竜車よりも大きな規模」と強調した。

しかし当時、中国の九龍工場を訪問した共に民主党所属のチュ・ギョンニム光州市議員は 「工場の敷地はものすごく大きかったが、技術力は80年代の光州起亜車を見るようだった」と所感した。 続いて「もし来年工場を着工するのなら、少なくとも認証手続きは終わっていなければならないが、 これさえきちんとできていない」とし 「市議会では親環境自動車生産ラインの建設は決して容易ではないと判断している」と明らかにした。

ビッグリン産業団地

光州型雇用が実現される大規模産業団地だ。 現在、工事の真っ最中だ。 工程率は23%程度だ。 光州市は2021年までにここに親環境部品産業クラスターを造成する計画だ。 朴槿恵(パク・クネ)前大統領は候補時代に1兆3377億ウォンの総事業費支出を公約に掲げたが、 この4年間、事業費規模は繰り返し縮小されてきた。 昨年、政府の予備妥当性調査を通過した後、総事業費3030億ウォンの国家事業に確定した。

光州市社会統合支援センター

光州市社会統合支援センターは、光州型雇用事業のシンクタンクであり推進の主体だ。 現在、「さらに良い自治研究所」が委託運営している。 初期にはキム・サンボン教授を中心とする全南大産学協力団がセンターの運営を引き受けた。 だが彼らは昨年4月、光州市に委託協約解約を申請してセンターから離れた。 光州市社会統合推進団とはこれ以上、事業をすることができないという判断だった。

当時、センターを辞めた研究員のA氏は 「光州市は事業を推進させる意志がなかった」とし 「今でもその当時の貧弱な意志とコミュニケーション能力が改善されていないと思う。 1年半経ったが、労使関係革新の議論にどんな進展があったのかわからない」と指摘した。

彼らがセンターを辞めた決定的な理由は、光州市が彼らの研究用役事業を妨害したからだ。 センターは光州型雇用と連係して、電気自動車中心の親環境自動車の生産地を構築するための研究用役をする予定だった。 A氏は「だが市は何の議論もなく一方的にこれを打ち切った。 光州市から研究用役を拒否した理由は何も聞けなかった」と明らかにした。 この事件が決別の決定的な原因になったが、実は以前から不満が積もってきた。 センターの役割問題をめぐる意見の違いのためだった。 センターは研究、教育、広報という3種類の役割を受け持っていた。 そのうち、センターは研究事業に中心を置き、推進団は広報に力を入れることを願った。 A氏は「光州型雇用は固定された実体ではなかった。 作っていく過程だったし、具体的に実行された部分もなかった」とし 「市は内容を作ろうとしないまま、広報ばかりに熱を上げた」と指摘した。 続いて彼は「4年経った現在も、光州型雇用の実体はよくわからない」と打ち明けた。

光州市社会統合推進団

「光州型雇用」推進機構の光州市社会統合推進団は、最近忙しい毎日を送っている。 文在寅(ムン・ジェイン)政府が「光州型雇用拡大」を核心事業として持ち出したためだ。 政策関係者や研究者への資料要請もどんどん多くなり、 インタビューや討論会要請の問い合わせも続いている。 社会統合推進団のチョン・ギョンジャ政策TFチーム長は 「新政府の雇用プランは光州型雇用と指向や哲学、基調が完全に一致する」とし 「文在寅大統領は大統領選挙の前から光州型雇用に関心を持ってきたし、 現在も新政府の具体的な意志が確認されているので量的・質的に上昇する分岐点だと見る」と明らかにした。

これまで光州市は、光州型雇用の推進過程が遅遅として進まなかったのも中央政府次元の支援がなかったからだと見ている。 光州型雇用モデルを拡散させるためには政府次元の特別法制定とビッグリン産団の特区指定、 投資企業への補助金、税制、インセンティブ支援、そしてインフラ構築などが先行しなければならないという説明だ。 チョン・ギョンジャ チーム長は 「企業が海外に出て行かずに国内投資を促進させる支援方案が必要だ」と強調した。

唯一、工場設立の議論がある中国の九龍自動車との投資協約の件は、相変らず曖昧だ。 チョン・チーム長は投資履行がない状況について 「『投資の約束についてMOUを締結をしたのであって、 具体的に投資を契約した段階ではない」と答えた。 しかし光州市自動車産業課は 「(計画より)投資が遅れているのは事実」とし 「現在、自動車の安全基準に関する認証を準備しており、 認証するまでは先行投資は難しい」と話した。

光州市議会

市議会では光州型雇用に対する問題提起が絶えない。 「光州型雇用が何だかまったくわからない」という愚痴から 「こんなことでは市民宣伝戦だけして終わるのではないか」という心配、 そして「九龍コリアの正体は何か」という疑惑まで、 解けない疑問があふれている。 実際に昨年3月、尹壮鉉(ユン・チャンヒョン)光州市長と九龍自動車経営陣、 キム・テヒョクPetfunオートグループ代表が完成車工場設立に関するMOUを締結した。 この場に参加したPetfunオートグループは、資本金百万ウォンの自動車販売会社だ。 キム・テヒョク代表は九龍(ジョイロン)モータスという会社も設立した。 ここも資本金が百万ウォンだ。 そしてキム代表は昨年9月に設立された九龍コリア韓国法人代表を引き受けた。

現在、九龍(ジョイロン)コリアの資本金は1億ウォン。 昨年11月、光州市議会で光州市は九龍コリアの資本金1億ウォンも、 中国本社ではなくキム・テヒョク代表が投資したものだと認めた。 キム・テヒョク代表は九龍自動車社長、副社長との長い信頼関係の下で韓国法人代表を引き受けたと言われる。 だが市議会ではキム代表は中国語ができないとし、疑わしい視線をおさめられずにいる。 チュ・ギョンニム議員は市議会で 「某大学専門教授と議論したことがあるが、九龍(ジョイロン)自動車が中国で20位以内に入らない会社だという」とし 「もし韓国から技術力だけを抜き出して実際に約束を履行しなかった時はどうするのかという憂慮の声がある」と批判した。

九龍自動車は2007年に設立された新生会社だ。 国内の報道機関と光州市によれば、年間15万台の生産能力と1200人の雇用規模を備えた会社だという。 だが中国九龍自動車のホームページを見ると、職員規模は800人以上、年間生産能力は5万台ほどとなっている。 総資本金は1500億程度と紹介されている。 九龍は2020年までに約2500億ウォンを投資して年間10万台規模の完成車工場を光州に設立し、6000個の雇用を創り出すという計画だ。

金属労組光州全南支部

地域労働組合は「光州型雇用」が再び広く知られるのはいぶかしいという反応だ。 突然、労使民政協議が活発になったのでもなく、 曖昧だった光州型雇用の概念が再確立されたわけでもないためだ。

昨年、光州市は光州型雇用の社会的大妥協を率いるとして「さらに良い雇用委員会」という組織を発足させた。 だがここに民主労総は参加していない。 金属労組光州全南支部のソン・サンヨン副支部長は 「光州型雇用は地域でさえ、あまり広く知られていない」とし 「現在、韓国労総と経営界、学界、光州市などが委員会に参加しているが、 強力な執行もなく、政策的議論が活発でもない」と説明した。

民主労総光州地域本部と金属労組光州全南支部は相変らず委員会参加を考慮していない。 光州型雇用の概念が曖昧で、事業推進の可能性も低いと見ているためだ。 ソン・サンヨン副支部長は 「適正賃金という概念自体がとても抽象的だが、 これを具体化したり同意を勝ち取る過程が見えない」とし 「光州型雇用モデルは変わり続けてきた。 いったい今の時点での光州型雇用が何か、むしろ訊ねたい。 何一つ明確なこともなく、社会的大妥協をしようというのは流れる雲をつかむような話」と指摘した。 現在、進行している親環境自動車部品クラスター造成事業に関しても 「電気自動車、あるいは部品メーカーを生産する小規模工場は誘致されるだろうが、 地域に新しい産業を誘致すること程度で光州型雇用だと言うのは適切ではない」と明らかにした。

韓国労働研究院

研究者は、新政府の発足で光州型雇用事業にも速度がつくものと期待している。 2015年に光州型雇用関連の用役研究を担当した韓国労働研究院のパク・ミョンジュン研究委員は 「文在寅政府が8月中に光州型雇用に関する可視的な方案を出すと聞いた」とし 「社会的な雰囲気が生まれて中央政府が動けば、これからの2か月間、水面下の議論が躍動的に進められる」と説明した。

こうした雰囲気なら企業も政府政策に歩調を合わせるのではないかという期待もある。 パク・ミョンジュン研究委員は 「究極的な光州型雇用に行くには国内企業をターゲットにしなければならないと思う」とし 「労働市場ビッグ3の中央政府、大企業、大企業労組のうち、中央政府が動き始めた。 今月末に地域社会の社会協約締結で凝集力を拡大し、 産業団地の造成を進める雰囲気も作れば国内の資本も一定動くと思う」と明らかにした。

研究者らは文在寅政府が地域特性産業を地域戦略産業にする社会統合的インフラを構築するものと展望しており、 パク研究委員は「光州型雇用を普通名詞で表現すれば『社会統合的地域雇用戦略』」だとし、 「これまでの団体交渉の方式を越えて、包括的な利害当事者が雇用秩序を再構成するために、 地域での社会的対話を活性化させようということ」と説明した。

高麗大労働問題研究所のパク・テジュ教授は今後、光州型雇用モデルを作る過程も重要だと見た。 彼は「団体交渉権とスト権を制限する根拠はどこにもない。 結局、労働者の権利と労使関係の安全性が懸案として台頭するだろう」とし 「代案的に提示されるのは米国のように賃金決定公式を導入することと、 団体行動に入った時、現行法に保障された私的調整制度を活用して市民社会の介入で紛争を調停すること」だと説明した。

青瓦台

大統領直属雇用委員会は去る6月1日、「雇用100日計画」を発表した。 文在寅大統領の大統領選挙前公約に基づいて就任後100日間、優先的に進める雇用政策だ。 計画によれば、政府は8月までに労使共生型雇用モデル(光州型モデル)の拡散方案を作る計画だ。 また地域の労使民政協議会等により、社会的な共感の形成を推進する方針だ。[ワーカーズ32号]

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2017-06-23 20:22:08 / Last modified on 2017-06-23 20:22:09 Copyright: Default

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